テレビ朝日×エムニ、生成AIを活用した新たな安全対策のPoCを実施!
編集部
エムニはテレビ朝日と共同で、放送現場での技術トラブルを未然に防ぐことを目的に生成AIを活用したヒヤリハット事例の抽出とチェックシートの自動作成に関するPoCを実施した。
1. 概要
京都大学発兼、松尾研発スタートアップ株式会社エムニ(以下「エムニ」)は、株式会社テレビ朝日(以下「テレビ朝日」)と共同で、生成AI技術を活用したヒヤリハット事例の抽出およびチェックシート自動作成に関する実証実験(PoC)を実施した。本プロジェクトは、放送現場におけるトラブル要因を未然に防ぐことを最終的な目標としている。
2. 背景
テレビ番組制作の技術スタッフは、トラブル防止のため、オペレーションで発生した不具合や注意点を日々情報共有して事故防止に努めている。ミス・トラブルを防ぐため、各番組や職種ごとのチェックシート作成、機材トラブルやオペレーションミスの共有、定期的なトレーニング等の対策は実施してきたが、今回AIを活用することで、過去に蓄積されたデータを十分に分析し、より効果的な対策を講じることを検討する。
現場技術スタッフから報告されるメールや過去のトラブル報告書を基に、生成AIを活用してヒヤリハット事例を抽出し、チェックシートを自動作成する実証実験を行った。
■本プロジェクトの目標
1.最重要事項のチェックシートをAIが自動生成
番組技術スタッフがオペレーションに入る前に、当日確認すべき最重要事項を、膨大な過去事例や報告メールから生成AIが自動でリストアップすることで、番組制作における作業の確実性の向上に取り組みました。
2.隠れたトラブル要因の発見
放送業界特有の専門用語、放送機材の状況など、複数のデータを生成AIで解析し事故要因を検知します。潜在的なリスク要素を特定し、放送事故の未然防止に取り組みました。
3.包括的なデータ管理システムの構築
番組中のミスやトラブル対応を集約し、予防対策に活用できるデータベースの構築を進め、分析精度の向上に取り組みました。
3. PoCの制作物
今回開発したアプリケーションのインターフェースは以下の通り。番組・職種・日付・天候を選択すると、チェックリストの一覧が出力される。
ただし、以下はダミーデータに対するサンプルである。

■技術的なポイント
本プロジェクトでは大きく分けて、ドキュメントの構造化とそのデータを如何にして活用するかに注力した。
前者においては社内のドキュメントやメールの情報をLLMが扱うことのできるように整形した。最終的なプロンプトとしては、番組名・トラブルの事象・原因・現場での対応など複数の項目を入力したが、それらの情報を人手もしくは自然言語処理の技術を用いた自動的な手法によりメールから抽出している。今回人手で対応したものに関しても、フォーマット化による自動抽出とその利活用が可能だ。
また、情報を抽出する際には明確なトラブル以外にも重要な情報を担当者に確認しながらデータに加えた他、これまで明文化されていなかった暗黙知に関しても新たにドキュメント化して追加している。
4. 終わりに
本取り組みを踏まえ、当社は今後、メール本文からの情報抽出の精度向上に向け、特に番組名の略称や専門用語への対応を強化するとともに、事例集やメールの情報を活用したチェックリスト出力モデルの開発に取り組み、番組制作現場のミス防止に貢献していく。