テレビ×イベント×人の横断が生む“感情” 〜『行方不明展』ホラー作家・梨氏&テレ東・大森時生氏インタビュー
編集部
左から)テレビ東京・大森時生氏とホラー作家の梨氏 ※この展示はフィクションです
MBSグループの株式会社闇と株式会社テレビ東京、株式会社ローソンエンタテインメントの3社によるイベント『行方不明展』が、2024年7月19日から9月1日まで、東京・日本橋の福島ビルにて開催。インターネットを中心に活動する作家の梨氏、『イシナガキクエを探しています』などの番組を手掛けるテレビ東京の大森時生氏をプロデューサーに迎え、「行方不明」にまつわる展示を行う。
※この展示はフィクションです
■4分類した“痕跡”から「行方不明」の背景を考察する展示、テレビ東京で連動番組も
『行方不明展』では、人探しの張り紙や遺留品、都市伝説など、行方不明にまつわるさまざまな物品や情報を「身元不明」「所在不明」「出所不明」「真偽不明」の4つに分類。添えられた解説文は抽象的な内容となっており、その解釈は参加者側に大きく委ねられている。
展示はフィクションであり、実在する人物や事件とは無関係だが、いずれも現場から発掘されたように見える巧妙な“汚し”処理が施されており、リアルさを感じるものばかり。制作陣には『フェイクドキュメンタリー「Q」』の寺内康太郎監督、第2回日本ホラー映画大賞受賞者の近藤亮太監督、アートディレクターの大島依提亜氏らも参加し、その質感に奥行きを与えている。
7月19日深夜には、テレビ東京にて「行方不明展」と連動した特別番組が放送。本展示でプロデューサーを務める梨氏が展示物の背景について取材を行うという設定のモキュメンタリー形式で制作され、SNSを中心に話題を集めた。現在、この番組はTVer、テレビ東京公式YouTubeチャンネルにて視聴可能だ。
TVerで『TXQ FICTIONイシナガキクエを探しています(1)』を見る
■「ホラーにもなればファンタジーにもなる」梨氏・大森氏が語る『行方不明展』の魅力
テレビ局が展開するリアルイベントとして注目される『行方不明展』。ここにはどのようなメッセージ、狙いが込められているのか。今回、Screensでは会期に先立って行われた体験会に参加し、梨氏と大森氏の2人にお話を伺った。
梨氏プロフィール
作家。2021年に自身のnoteで発表した怪談『瘤談』が話題となり、2022年に漫画『コワい話は≠くだけで。』の原作を担当。同時期に初著『かわいそ笑』を刊行。日常に潜む怪異や民間伝承をベースに、実在のSNSアカウントなど、現実世界とリンクさせたストーリー展開を得意とする。
大森時生氏プロフィール
1995年生まれ。2019年テレビ東京入社。『Aマッソのがんばれ奥様ッソ!』『Raiken Nippon Hair』『このテープもってないですか?』『SIX HACK』『祓除』『イシナガキクエを探しています(TXQ FICTION)』を担当。Aマッソライブ『滑稽』でも企画・演出を務めた。2023年「世界を変える30歳未満 Forbes JAPAN 30 UNDER 30」に選出。
──今回の『行方不明展』には、どのような思いや狙いが込められていますか?
大森氏:現代社会で人々がいろいろなものを背負いすぎている中、誰もが心の中に持っているであろう「どこか違う場所へ行きたい」という気持ちを呼び起こす展示にしたいという狙いを込めています。実際、体験会にお越しいただいたみなさんからも、感想として同じような言葉をいただきました。
梨氏:今回はSF的なアプローチといいますか、ガチガチのJホラーかと思ったら違うところからパンチが飛んでくるような、そんな感じを意識しています。大森さんをはじめ、今回ご一緒させていただいたさまざまなクリエイターの方々が持つ世界観を狭めずに提示できる形を模索した結果、今回は明確な主人公や起承転結をあえて設けず、世界観を大まかに共有するタイプのストーリーテリングとなりました。
──受け手の解釈で大きく見え方が変わりそうですね。
梨氏:どう思われるかは来場される方にすべて委ねられています。ホラーだと感じる方もいれば、魅力的なファンタジーだと感じる方もいることでしょう。
■リアルイベントの醍醐味は「その場所でしか得られない感情」
──連動番組は、展示内容に対してどのような位置付けとなっているのでしょうか?
大森氏:連動番組では、今回の展示物がどのように集められているか、それぞれどのような背景を宿しているかを説明する、という立て付けの内容になっています。ネタバレ的な要素はありませんので、番組を先にご覧になってから展示へお越しいただいても、展示のあとで番組をご覧になっても、どちらでも楽しんでいただけるかと思います。
──テレビ局発のリアルイベントについて、大森さんはどのような意義を感じられますか?
大森氏:テレビもYouTubeもイベントも、それぞれ違う特色を持った「1メディア」という認識です。それと同時に、メディアや場を横断しながら、見るものが多角的に広がっていくことへの面白さがあると思っていて。中でも、展示物を目のあたりにして思わず「おっ」と声を漏らすような「その場所でしか得られない感情」は、リアルイベントだからこその醍醐味だと思います。
──最後に読者の方へ、メッセージをお願いいたします。
梨氏:あらゆるメディアや場を駆使した今回の『行方不明展』は、自分にとって集大成的な、非常に思い入れのあるイベントです。ハードルも高くなく、いろんな方々に楽しんでいただけると確信を持っていますので、ホラーが苦手だという方も、ぜひ足を運んでいただけたらと思います。
大森氏:映像にしても、本にしても、「目の前で見て、感じる体験」というものは、なかなかないのではないかと思います。梨さんの作る世界観や「行方不明」という概念を“その場所で感じる”面白さが『行方不明展』には絶対あるので、ぜひお越しいただければと思います。
『行方不明展』
2024年7月19日(金)〜9月1日(日)
三越前 福島ビル(東京都中央区日本橋室町1-5-3)にて開催
開催時間:11時〜20時(最終入場は閉館30分前)
入場料:税込2,200円
主催:株式会社闇、株式会社テレビ東京、株式会社ローソンエンタテインメント
https://yukuefumei.com/