750社出展見込む、アジアを代表するエンターテインメント見本市の開催迫る ~「香港フィルマート2024」事前レポート~
ジャーナリスト 長谷川朋子
アジアを代表するエンターテインメント・コンテンツ見本市「香港フィルマート2024」の開催が来週に迫る。香港貿易発展局が主催し、3月11日(月)から14日(木)までの期間、香港コンベンション&エキシビションセンターで行われる。日本をはじめ、香港、中国本土、海外から約750社が出展を予定し、30以上の国や地域のパビリオン出展を特徴とする。またマーケットトレンドの共同制作や生成AIコンテンツなどに焦点を当てたマーケティングセッションも多数企画され、アジア発エンターテインメント業界の最新動向が提供される。今年の香港フィルマートの注目ポイントを紹介する。
■日本から40社以上の出展見込む
2024年のアジア発エンターテインメント・コンテンツ見本市のスタートを切る「香港フィルマート2024」は今年で28回目の開催を数える。香港島北部の灣仔地区にある香港コンベンション&エキシビションセンターのホール1を会場にアジア最大級の映画とテレビのトレードショーとして行われる。今年のイベント内容が主催する香港貿易発展局から発表されたところだ。
「香港フィルマート」は、香港の芸術と文化の祭典「エンターテインメント・エキスポ香港」(期間:2月24日から4月14日)の主要イベントの一つにあり、「香港国際映画祭」と「香港電影金像奨」と並ぶ香港エンターテインメント業界3大イベントとして扱われている。アジアクリエイティブ産業のビジネスハブの構築を目的とする「香港フィルマート」には毎年、日本をはじめ地元の香港、中国本土、海外から参加者を集め、4年ぶりにリアル開催が復活した昨年も活況を呈した。
今年は3月1日時点で約750社が出展予定であることが発表され、昨年の出展社数700社を既に上回る。恒例となる中国本土から出展される地域パビリオンも予定され、北京、重慶、広東、杭州、湖北、湖南、江蘇、寧波、山東、陝西、四川、浙江省など各省、直轄市ごとのブースが並ぶなか、商談が行われる。
日本からの出展は、ユニジャパンおよび国際ドラマフェスティバル(民放連)がとりまとめた大型パビリオンに加えて、各地域フィルムコミッション団体が集まったブース、そして民放キー局や東宝、東映、KADOKAWA、日本経済新聞社などによる単独ブースで構成され、例年通りの規模で40社以上の出展が見込まれる。
■バーチャル・プロダクション・スタジオを新設
会場入り口正面は今年も地元香港のメディア各社のブースで彩られるだろう。エンペラー・モーション・ピクチャーズや、テレビ局のTVB、アジア拠点の配信プラットフォーム展開で勢力を伸ばす通信系のPCCWなど香港を代表するメディア企業が並ぶ予定だ。また今回、最新AIを紹介するバプティスト大学や、バーチャル・プロダクション・スタジオの開設を発表する香港デザイン学院など香港教育機関の出展も売りにする。
さらに香港拠点のクリエイティブ・テック企業Votion Studiosによる最新の制作技術とリアルタイム・コンテンツ生成の実演を行うバーチャル・プロダクション・スタジオが会場内に新設され、「香港フィルマート」公式スタジオとして展開されるという。映像技術の話題も取り入れる新たな試みとなる。
30以上の数を見込む海外からのナショナルパビリオンでは、インドネシアとマカオが初出展を予定する。常連のインド、韓国、台湾、EU、米国などからも出展もある。またエンターテインメント業界において台頭が目立つタイをフォーカスした「タイ・デー」が初日に企画されることが決まった。
昨年の参加者数は約7300人を数え、今年の登録者数状況の詳細は発表されてはいないが、コンテンツ制作、配給、共同制作、投資のビジネスチャンスを促進する場として盛況が見込まれる。またオンラインプラットフォームの活用を継続し、ビジネスマッチングサービスの提供や、出展社のコンテンツ紹介、プロモーションなどが実施される。
■「生成AI」と「欧州とアジアの共同制作」を目玉に
会場内で同時進行される「エンターテインメント・パルス」と称された会議シリーズも期間中、連日にわたり展開される。アジア間で今語るべきトレンドトピックを中心に取り上げ、業界のキーマンたちが登壇するこの会議シリーズの今回の目玉は、ヨーロッパとアジアの共同制作の関するトピックと、生成AIデジタル・エンターテインメントの2つが挙げられる。
初日の3月11日の1本目から生成AIを活用したエンターテインメント・コンテンツの話題を取り上げ、「Dialogue with Pioneers :Prospects of AI Generative in Entertainment Industry」(パイオニアとの会話:エンターテインメント業界における生成AIの展望)をタイトルに、中国大手メディアグループのHuaceのプレジデントBinxing Fu氏などが登壇する。
そして、2日目の3月12日の1本目にヨーロッパとアジアの共同制作の最新事情を語るセッションが組まれる。パート1は、「Moving East: Perspectives of Co-Production Between Europe and Asia」(トレンドはアジアに:欧州とアジアの共同制作の展望)を題して、イタリア、フランス、オーストリア、ドイツ、香港の映画系業界団体による助成制度現状について、パート2は「How to do a Euro-Asia Co-Production: Diffculties, Lessons learned and/or Promising Experiences」(欧州とアジアの共同制作ノウハウ)と題して、中国やシンガポール、欧州の民間プレイヤーが登壇し、共同制作の具体例が語られる。
会議シリーズでは、配信ビジネスや香港映画監督の話題を取り上げたセッションも予定する。日本の事例を取り上げた今年のセッションは、開催3日目の3月13日に「The Realm of Animation: The Global Perspective and Advantages of Cross-Border Collaborations」(アニメーションの領域: グローバルな視点と国境を越えたコラボレーションのメリット)と題し、東映アニメーションの清水慎治氏がサウジアラビアとの共同制作について語る企画が決定している。
今年も「香港フィルマート」からアジアのエンターテインメント業界ビジネスの注目すべき動向が見えてくるだろう。現地の模様は開催後、報告する。