サムスンとLGの2社が「透明テレビ」をアピール!「CES2024」で見た“次世代テレビ”まとめ
IT・家電ジャーナリスト 安蔵靖志
2024年1月9日から12日にかけて、米ネバダ州ラスベガスで世界最大級のエレクトロニクス関連見本市「CES 2023」が開催された。デジタル機器や家電だけでなく、自動車メーカーがEV(電気自動車)などを出展し始めたことから2018年から「Consumer Electronics Show」の略ではなく「CES」が正式名称になった。とはいえ、やはり大型テレビは今でもCESの“華”であり続けているようだ。
<参考>巻き取り式や8K!CES2019で見た“次世代テレビ”のまとめ
ここ数年におけるテレビの進化の方向性は、従来の「大画面化」「高精細化」「高画質化」にとどまらない。この3つの方向性は当然とどまることはないのだが、街中のさまざまな場所に大画面のデジタルサイネージが埋め込まれるようになったのと同様に、テレビが家の壁の一部のようになったり、家具のように溶け込むようなデザインの流れが生まれてきた。一方でLGエレクトロニクスがCES 2019で発表した巻き取りテレビ「LG SIGNATURE OLED TV R」のように“大画面を隠す”方向性も出ている。CES 2024で韓国の大手メーカー、サムスン電子とLGエレクトロニクスが新たにアピールしたのが「透明テレビ」という方向性だ。
■サムスンとLGの2社が「透明テレビ」をアピール
サムスン電子はCESに先がけて1月7日(現地時間)に開催した「Samsung First Look 2024」で透明LEDディスプレイ「Transparent MICRO LED」を披露した。約6年間の研究開発を組み合わせた超小型マイクロLEDチップをガラス上に敷き詰めたものだ。
一方のLGエレクトロニクスは世界初の77インチ ワイヤレス透明有機ELテレビ「LG SIGNATURE OLED T」を発表した。透明な4K有機ELディスプレイとワイヤレスによる映像・音声転送技術を組み合わせたもの。サムスン電子が“透明のみ”なのに対し、LG SIGNATURE OLED Tは背後に搭載する黒いスクリーンを上下に動かすことで透明な画面と通常のテレビに近い画面を選べるのがユニークだ。LG SIGNATURE OLED TV Rが巻き取り型スクリーンをテレビ台に収納するスタイルだったが、コンセプトはこれに少し似ている。
従来のテレビは壁際に寄せるのが基本的な設置スタイルだったが、この透明テレビは部屋の真ん中に配置して間仕切りのように使える。外の景色を遮らないため、眺めのいい部屋の窓際に設置するといった使い方も可能だ。
透明ディスプレイ自体は数年前からデジタルサイネージ用途として登場しており、特別目新しいものではない。しかしLGエレクトロニクスはサムスン電子と違ってテレビ製品としての完成度を高めており、近日中の市場投入が期待される。とはいえ、LG SIGNATURE OLED TV Rが10万ドルで発売されたように、ごく一部の富裕層向け製品という位置付けになるだろう。
■C SEEDは“トランスフォーム”する折りたたみ式137インチテレビを展示
オーストリアのディスプレイメーカーであるC SEEDは、折りたたみ式テレビ「N1 TV」を出展した。シリーズとしては165、137、103インチをラインアップしており、CES 2024会場では137インチモデルを展示していた。
収納時はまるで金属でできた彫刻のような見た目だが、リモコンのボタンを押すと約1分で約2.4mの高さまで上昇し、その後約25秒かけて折りたたまれていたマイクロLED搭載4Kディスプレイが開く仕組みになっている。マイクロLEDはピクセル一つひとつを3原色のLEDで表現するため、かなり高コストになる。CNETによると、137インチモデルの価格は20万ドルと報道されており、こちらもかなりの富裕層向けだ。
■圧倒的な高輝度を誇る液晶テレビがハイセンスとTCLから登場
薄型テレビは液晶と有機ELの2種類に大別されており、有機ELは自発光デバイスのため暗部の映像表現に優れているものの、輝度を高めにくい特徴がある。一方の液晶はバックライトを明るくすることで輝度を高められるという特徴がある。どちらも年々ピーク輝度を向上させており、一般的な製品で1000~2000nit(ニット=明るさの単位)まで上がってきているのだが、それを大幅に凌駕するテレビをCES 2024で披露したのがハイセンスとTCLだ。
ハイセンスが展示した110インチ液晶テレビ「110UX」は、110インチの画面に4万を超えるミニLEDバックライトを備えることで最大10000nitという驚異的なピーク輝度を実現したMini LEDテレビだ。液晶パネルのすき間からバックライトがにじみ出すのを抑えることでコントラストを大幅に向上しているとのことだ。色再現性を向上する量子ドット技術も備えている。
TCLは115インチの量子ドット技術搭載ミニLED液晶テレビ「QM891G」を披露した。こちらは2万以上のミニLEDバックライトを備えており、ピーク輝度は5000nitを実現している。
薄型テレビは年々進歩を遂げているが、コントラストや階調感、暗部の表現力などに比べて「明るさ」が視聴者に与える印象は圧倒的だ。太陽光のまばゆい光とビルのすき間のような、光と影の強烈なコントラストをより正確に表現できるようになることで、さらに映像の臨場感が増していくことが期待できる。
【2023】メタバース関連展示もさらに加速!「CES2023」で見た“次世代テレビ”まとめ
【2022】「メタバース」製品も登場「CES2022」で見た“次世代テレビ”まとめ