OTTアプリのダウンロードを30日で2倍に!〜 ブライトコーブ社ミニウェビナー『事例から紐解く、OTTサービスのグロースハック』開催レポート
編集部
アメリカではOTTサービスが乱立しており、最大手サービスのRokuなど、ひとつのサービス内に1,000を超えるチャンネル(OTTサービス)を擁するOTTプラットフォームも存在する。
そのため、OTTサービスにおける競争の軸は、提供サービスそのものよりも「いかに自社のOTTサービスにたどり着いてもらうか」という点に移ってきており、WEBでいうところのSEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)のように、自社のコンテンツを検索上位に表示させるための熾烈な競争がなされているのだという。
こうした背景を踏まえ、ブライトコーブ株式会社は、ミニウェビナー『事例から紐解くOTTサービスのグロースハック』を7月21日に開催。アメリカで6月に開催されたカンファレンス『OTT.X Online 2021』の日本語翻訳付き配信として、OTT(Over The Top:ネット動画配信)アプリのダウンロード数を30日で2倍に増やした、アメリカRevry社の事例が紹介された。本稿では、この模様をレポートする。
■OTT事業者間を横断してコンテンツを検索する「ユニバーサルサーチ」
まず、オープニングセッションとして、ブライトコーブ株式会社 マーケティングマネージャー 大野耕平氏と、株式会社エイガ・ドット・コム 代表取締役社長 駒井尚文氏が挨拶。大野氏からは、今回のテーマの骨子となる、「ユニバーサルサーチ(サービス横断型検索)」のサービスについて説明が行われた。
ユニバーサルサーチとは、OTTプラットフォーム内におけるコンテンツ検索。Rokuをはじめ、AppleTVやAmazon プライム・ビデオといったすべてのOTTサービス に搭載されているが、その仕様はサービス間によって異なる。
今回登場するRevry社は、LGBTやクリエイターにスポットをあてたOTTサービス「revry.tv」を運営。展開エリアは世界130カ国以上に及び、2億5千万人以上の利用者数を抱える。
同社のコンテンツは「Amazon Fire」や「Roku」「TiVo」といった、外部の複数OTTサービスを横断して配信。SEO的なリーチ最適化の手段として、Universal Search & Discovery 社(以下、USAND社)が提供する、ユニバーサルサーチへのOTTアプリ最適化支援サービスを活用しているという。
USAND社では、各コンテンツ事業者から統一フォーマットにて配信されたメタデータを、1か所に集約。さらに検索性を向上させるため、映画やテレビの番組・出演者情報データベース「IMDb(Internet Movie Databases)」のデータを統合し、OTTプラットフォーム内における検索結果を最適化させている。
■Roku社のユニバーサルサーチの網羅性を強化する、USAND社のサービス
ウェビナー後半では、『OTT.X Online 2021』でのセッションの模様を日本語字幕付きで紹介。OTT X Executive Vice President Eric Hanson 氏司会のもと、ブライトコーブ社 Lexie Knauer氏、USAND社のSteve Harnsberger氏、Revry社のLa Shawn Mc Ghee氏が登壇。サービスとしての「ユニバーサルサーチ」の概要と、その活用で起こったOTTサービスの成長(グロース)について述べた。
まず、広く用いられている「ユニバーサルサーチ」という呼称について、「厳密にはこれは誤りである」とHanrsberger氏。「これはいわゆるGoogle検索のようなものであり、コンテンツの販売や周知を目的とした重要な機能である」としつつも、「クローズドなエコシステム(特定のサービス間のみを結ぶもの)なので、『OTTサーチ』と呼びたい」と語る。
「RokuやApple、あるいはAmazonやGoogleにはデータサイロ(個々のサービスに依存した、非正規化データ)が存在する。ある特定のコンテンツが見たい人がいたとするが、それがどのサービスで見られるのかはわからない。その場合、タイトルや俳優、監督名などで検索し、どのサービスで見られるのかを探す。つまり(Rokuの)ユニバーサルサーチでは、(iOSの)App Store(のようなもの)に接続する」(Harnsberger氏)
「全体的に(Rokuの)ユニバーサルサーチは素晴らしいが、データが閉鎖的なので、市場は情報を得ることが出来ない」とHarnsberger氏。「アプリを(Rokuの)ユニバーサルサーチに最適化しようとしても、Rokuでもっとも検索されている用語を知ろうとしても、それは公表されておらず、Appleも明らかにしていない」と語り、統一されたメタデータ規格による横断検索の必要性を語る。
「各プラットフォームには独自のオンボーディング(有効化)プロセスがある。独自のアプリやデータ仕様があり、(Rokuのユニバーサルサーチには)Roku独自のディープリンク仕様もある」(Harnsberger氏)
「(Rokuの)ユニバーサルサーチでは現在数百のアプリを網羅しているが、(公開されている)数千のアプリに対して9割以上がオンボーディングされておらず、(本来の意味で)ユニバーサルとは言えない」と、Harnsberger氏。
こうした現状を踏まえ、「どのアプリにも、AVOD(Advertising Video On Demand:広告型無料動画サービス)、TVOD(Transactional Video On Demand:都度課金型有料動画サービス)、SVOD(Subscription Video On Demand:定額制有料動画サービス)、あるいはそのハイブリッド型で視聴者を増やすチャンスがある」と語った。
■複数プラットフォームのメタデータを統一化し、APIで提供
続いて、ユニバーサルサーチによる恩恵を受けている側の声として、Mc Ghee氏が語る。
「コンテンツ自体を魅力的なものにすることも大事だが、それをサポートする(検索・レコメンドの)アルゴリズムや、その他の(コンテンツ流入につながる)方法が必要だ」(Mc Ghee氏)
これを受け、Revry社が使用しているユニバーサルサーチサービス、USAND社のKnauer氏。自社のサービスでは「(加盟するプラットフォームの)コンテンツライブラリーのすべてのメタデータにアクセスできる」という。
「API(Application Programming Interface:プログラム同士の連携インターフェース)を公開してすべてのメタデータを取り込み、独自の仕様で各プラットフォームに送る」という。(加盟するプラットフォームのデータ仕様は)すべて異なっているので、それぞれを(統一のフォーマットに)インデックス化する」(Knauer氏)
■Rokuとの連携で「ユーザー数を楽に増やせる」
続いてKnauer氏は、USAND社のユニバーサルサーチサービスを通じた、プラットフォーム各社におけるグロース(成長)の成果をプレゼン。同社のユニバーサルサービスを通じ、各プラットフォームのユニークユーザーは4ヶ月で145%増加し、ストリーミング数は75%増加。視聴者数は倍以上に増加し、視聴時間も50%増加したという。
「もっとも重要なのが、(プラットフォーム各社の)アプリのインストールが510%増加したこと。(自社のユニバーサルサーチサービスを通じて、プラットフォーム各社が)Rokuと連携したことで、30日間で視聴者がほぼ倍になった」(Knauer氏)
「重要なポイントは、Rokuの検索機能に最適化することで、アプリのインストール数や視聴者数を楽に増やせること」と、Knauer氏。自社の提供するサービスは「オープンプラットフォームなので、誰でもコンテンツをインデックス(登録)できる」という。
「SEOやSEM(Search Engine Marketing:検索エンジンマーケティング)によってユビキタス(普遍化し、検索候補に上がりやすい)状態なので、SNSやディープリンク(アプリ内の特定コンテンツへの直接リンク)、ウェブやアプリ内の戦略を連携できる」(Knauer氏)
これらの仕組みを使い、同社のサービスを利用するRevry社は、「ディープリンクやキャンペーンを通じたアトリビューション(間接効果)に注力し、大成功している」とKnauer氏。「Roku検索のオンボーディング(有効化)は、立ち上げまで30日」であり、「短期間で簡単にインパクトを与えられる」と語った。
「Rokuと連携すれば、アプリのメタデータを強化できる」とKnauer氏。対応サービスはRokuのほかにGoogleやFire TV、Appleといったプラットフォームのほか、GracenoteやTiVo、IMDbなどのメタデータ提供サービスもカバーしているとし、多くの経路から自社サービスへの流入経路を作る重要性を語り、セッションを締めくくった。