ドラマ『恋つづ』を支持した女性ティーン層への4つのアプローチ方法~Screens × ビデオリサーチ × マイナビ 共同調査・研究レポート【後編】
編集部 2021/4/28 08:00
巷では“若年層のテレビ離れ”が叫ばれて久しいが、今やテレビコンテンツの視聴スタイルは「テレビ受像機で放送を視聴する」だけにとどまらず、多種多様になっている。Screens編集部では、その実態を把握するため、株式会社ビデオリサーチの「ひと研究所」、株式会社マイナビが運営するティーン層を対象にしたメディア「マイナビティーンズ」と共同で「ティーン層 × テレビコンテンツ エンゲージメントを高めるためのポイントを探る」をテーマに調査を実施した。それぞれが持つアセットを活かした分析結果を、前・中・後編に分けてお届けする。
レポート前編は、全体概要と共に、今回の調査でまとめた「ティーンのテレビ視聴動向」を中心にレポート。中編では、TBSの連続ドラマ『恋はつづくよどこまでも』(以下、『恋つづ』)をフックに、女性ティーン層におけるテレビ視聴の実像に焦点を当てた。そして、この後編では、『恋つづ』の視聴傾向を参照しながら、女性ティーン層に対するテレビコンテンツのアプローチ方法のヒントを考えていく。
【関連リンク】“若年層のテレビ離れ”その実態を探る~Screens × ビデオリサーチ × マイナビ 共同調査・研究レポート【前編】
【関連リンク】TVerアワードW受賞のドラマ『恋つづ』と女性ティーン層の視聴実態の関連性~Screens × ビデオリサーチ × マイナビ 共同調査・研究レポート【中編】
■女性ティーン層へのアプローチで重視したい「4つのポイント」
3社共同によるインターネット調査の結果について、ビデオリサーチ・ひと研究所 渡辺庸人氏は、まず「ティーン層がテレビ視聴に至ったきっかけ」に着目した。
下図は、『恋つづ』視聴のきっかけについて、テレビ視聴形態別に複数回答(いくつでも選択可)で質問した調査の結果をまとめたもの。全体では『恋つづ』視聴のきっかけとして、「ドラマの宣伝を見て」という回答が最も多くなっているが、ここには、様々なシチュエーションが包含されている。特筆すべきは、「好きな出演者がいる」、「好きな出演者の公式SNSを見て」という回答。まずは、好きな出演者がいるということ、さらに、出演者からのSNS発信も重要であると言えそうだ。
そして、『恋つづ』を含めたドラマコンテンツの視聴で目立っていたのが、気に入ったエピソードやシーンを繰り返し視聴したという回答。録画視聴でも可能だが、ネット配信での視聴における行動であることが容易にイメージできる。また、テレビを「家族と一緒に見ている」といった回答も多かったが、これに関しては、ネットでの動画視聴が多いか少ないかで異なる特徴が出ており、「一緒に見る」もあれば、自分の好きな場所(自室以外に、家族と一緒にいる場所も含まれる)で「別に見る」といった回答も。つまり、家族と同じ空間にいながら、スマホで好きなコンテツを視聴する層が一定以上いるということになる。さらに「SNSあるいは友人からおすすめ」がテレビ視聴のきっかけになったという回答も多かった、これらを「4つのポイント」としてまとめた、ひと研究所・渡辺氏による分析の詳細は、下記リンクよりご覧いただきたい。
●ポイント1 「『推し』の出演」が視聴を左右する
●ポイント2 エピソード・シーン単位の「繰り返し視聴」というニーズ
●ポイント3 家族との共視聴:「一緒に見る」「別に見る」は両立する
●ポイント4 テレビをあまり見ない人に有効な「おすすめ」
【ビデオリサーチ・ひと研究所 渡辺庸人氏による解説記事】女性ティーン層のテレビ視聴の実態とアプローチのヒント〜Screens×ビデオリサーチ×マイナビ共同調査より
■TVerにおけるティーン層の『恋つづ』視聴動向
上記ポイント2について、TVerにおける『恋つづ』の視聴データも合わせてご覧いただきたい。視聴者構成割合(パネル構成と比較)を見ると、F層が72.4%と女性に多く視聴されたコンテンツであることがわかる。また、ティーン(MF15−19)層は、全体の5.4%と比較すると、6.5%と大きくなっている。
続けて、推計再生数(再生ボタンが押された回数 ※途中で再生を止めてしまった場合なども含むため、あくまで推計)を見てみると、視聴者構成割合と比例したカタチになっており、F層の再生回数が高く、ティーン(MF15−19)層は114万となった。
しかし、平均再生分数(初回から最終話までの総視聴分数を視聴数で割り、一人あたりの平均を出したもの)を見てみると、ティーン(MF15−19)層は、189.28分という高い数値を示した。1人あたりのエンゲージメントの高さを証明することになり、ティーン層は同じ話やシーンを繰り返し視聴しているような傾向が、ここからも見てとれる。F50−64層は、さらに高い242.52分だが、こちらの分析はまた別の機会としたい。
■ティーンが求める3つの要素「推し」×「SNS」×「きゅん」の影響力
マイナビティーンズは「推し(熱烈なファン対象)」の重要性を指摘。調査結果では、テレビ番組についてネットやSNSで検索する際の動機について「推しの人物・キャラクターなどが出ているから」という声が最多。さらにティーン層の約86%が「何かしらの推しがいる」と回答しており、多くの若者にとって、コンテンツを選ぶ際の重要な動機となると言える。そして、SNSにおけるドラマ関連情報の拡がり方、TikTok上での「恋つづ」の使われ方からも「推し」の重要性が見えてくると分析した。
また、マイナビティーンズの考察として、「きゅん要素」(=ときめき要素)の重要性が挙げられた。『恋つづ』と2020年に話題をさらった韓国ドラマには、共通点として「10分に1回のきゅん(きゅんの多発)」があり、これも、今の女性ティーン層を引きつけるための欠かせない要素だとしている。テレビの視聴スタイルの変化や個々の楽しみ方などを分析することで、ティーン層がテレビコンテンツに触れたくなるためのポイントが見えてくる。マイナビティーンズによる分析の詳細は、下記リンクよりご覧いただきたい。
【マイナビティーンズよる解説記事】『10代女子がテレビコンテンツを見る上で必要な要素は「推し」と「きゅん」 ~人気ドラマをもとにポイントを解析~』
●ポイント1 推しが出演している
●ポイント2 TikTokをはじめとしたSNSで話題となる
●ポイント3 1話の中に「きゅん要素」がたくさんある
●ポイント4 SNSでリアルタイム配信や見逃し配信、エッセンスがまとまったショート動画が見られる
■ティーン層とのエンゲージメントを成立させるためのキーワード
前・中・後編にわたってお伝えした調査結果、分析を踏まえて考察すると、次のような仮説が成り立つ。
ティーン層は、「テレビ画面」および「テレビ放送」から距離が遠くなっている傾向はあるものの、「テレビ番組」からは完全に離れているわけではない。レガシーメディアの「テレビ」発信だからと言ってティーン層に受け入れられないということでは当然なく、『恋つづ』のように、話題の中心に躍り出る可能性は十分にある。女性ティーン層を対象に行った調査でも、テレビ(地上波放送)高頻度視聴者ほど、見逃し配信を視聴しているという結果になっているが、テレビ低頻度視聴者も、映像視聴に没頭したいという理由で見逃し配信を有効活用している可能性が高い。
また、各種データや今回の調査結果を前提として「ティーン層 × テレビコンテンツ エンゲージメントを高めるためのポイント」を考えたとき、キーワードとなるのは「推し」「繰り返し視聴」「家族との共視聴(あるいはその回避)」「おすすめ・リコメンド」である、という結論に至った。
この仮説・考察にリアルな声を掛け合わせるべく、現役女子高校生を対象にしたインタビューも実施。後日、お伝えする予定だ。
“若年層のテレビ離れ”その実態を探る~Screens × ビデオリサーチ × マイナビ 共同調査・研究レポート【前編】
TVerアワードW受賞のドラマ『恋つづ』と女性ティーン層の視聴実態の関連性~Screens × ビデオリサーチ × マイナビ 共同調査・研究レポート【中編】