“若年層のテレビ離れ”その実態を探る~Screens × ビデオリサーチ × マイナビ 共同調査・研究レポート【前編】
編集部
巷では“若年層のテレビ離れ”が叫ばれて久しいが、今やテレビコンテンツの視聴スタイルは「テレビ受像機で放送を視聴する」だけにとどまらず、多種多様になっている。Screens編集部では、その実態を把握するため、株式会社ビデオリサーチの「ひと研究所」、株式会社マイナビが運営するティーン層を対象にしたメディア「マイナビティーンズ」と共同で調査を実施。すると、ティーン層の視聴データからは、リアルタイムでの視聴が微減しているが、テレビコンテンツとの接点はむしろ増えているのではないか、という実態が見えてきた。そこで今回は「ティーン層 × テレビコンテンツ エンゲージメントを高めるためのポイント」をテーマに考察。前・中・後編に分けてお届けする。
レポート前編は、全体概要と共に、今回の調査でまとめた「ティーン層のテレビ視聴動向」を中心にお伝えする。
■若年層にターゲットを絞った分析・調査・考察を実施
まずは、“テレビ”の定義について、今や多層的であることを認識しなければならない。当然のことながら、テレビコンテンツは「受像機で地上波放送を視聴する」というスタイルにとどまらず、インターネットでの同時配信、見逃し配信があり、サブスクリプションサービスも活況。配信における視聴デバイスは、スマートフォンはもちろんのこと、インターネットに接続されているテレビ(いわゆるコネクテッドTV)もかなり需要があるようだ。また、動画共有サイトやSNSでは、違法アップロードされたコンテンツが拡散・消費されているが、いわゆる「公式」が自ら参画するケースも増えてきている。
このような、テレビコンテンツへのタッチポイントが多様化している現状を踏まえつつ、正確な実態の把握と新たな視座の獲得を目指し、若年層にターゲットを絞った分析・調査・考察を実施した。
●ビデオリサーチのデータとマイナビティーンズのアンケート調査をもとに、ティーン層の視聴動向を分析する。
●ティーン層とテレビコンテンツとの間にエンゲージメントが成立するための具体的なシチュエーション、ケースについて仮説を立てる。
●女子高校生を対象としたグループインタビューを実施。調査と分析の結果、エンゲージメントに関する仮説について、リアルな声と掛け合わせて考察する。
また、トピックスとして、民放公式テレビポータル「TVer」再生回数において、2020年の最高値を記録したTBSの連続ドラマ『恋はつづくよどこまでも』(以下、『恋つづ』)を題材とし、女性ティーン層の視聴実態について深掘り。その上で、ティーン層の中で「テレビコンテンツの話題化」「視聴時間の増加」「視聴の習慣化」が拡大していくために必要な要素を見極めていきたい。
■テレビ離れを「画面」「放送」「番組」の3つに整理
ビデオリサーチ・ひと研究所は、ティーン層のテレビ視聴動向を客観的に把握するため、
①あらためて「ティーン層のテレビ離れ」を考える
②ティーン層はテレビ〈コンテンツ〉から本当に離れているのか?
③共同調査から見える女性ティーン層のテレビ視聴の実像とアプローチのヒント
という3つの視点から分析を実施した。
①あらためて「ティーン層のテレビ離れ」を考える
ビデオリサーチの「生活行動」に関する調査(MCR/ex=全国7地区、合計1万人を対象に、生活行動・メディア接触を1週間の日記形式で記述する方式)の「週平均時間」に関するデータを引用。テレビ視聴(RT=リアルタイム視聴、TS=タイムシフト<録画>視聴)に関しては、2014年〜2019年の変化でみると、10代が横ばいか若干の減少、ネット利用は男性で増加、という傾向が見て取れる。
一方、スマホを中心に自宅内動画視聴の増加は続き、コロナ渦でその傾向は一気に加速していることがわかった(ただし、2020年はテレビ視聴も増加に転じている)。
こうした実態を踏まえて、「テレビ離れ」という言葉の定義を改めて考えた結果、下記の3つに整理される。
Ⓐ「デバイスの話におけるテレビ『画面』離れ」
Ⓑ「伝送路・視聴タイミングの話におけるテレビ『放送』離れ」
Ⓒ「コンテンツの話におけるテレビ『番組』離れ」
なかでも、ⒶとⒷの要素は、各種データでも強調されやすい。しかし、Ⓒについては、若年層が本当に「テレビ番組を見ること」から離れているのか、検証する必要がある。
②ティーン層はテレビ〈コンテンツ〉から本当に離れているのか?
マイナビティーンズのデータ「ティーンが選ぶトレンドランキング」では、テレビ由来、あるいはテレビで頻繁に取り上げられたコンテンツが上位を占める、という結果になった。下記で一部を紹介する。
2019年上・下半期 ティーンが選ぶトレンドランキング(流行ったコト編より)
※2019年の上半期に流行した「モノ・ヒト・コト・コトバ」の4ジャンルについて、13〜19歳の女性517名のアンケート回答を集計
→ https://www.mynavi.jp/news/2020/11/post_29116.html
2020年上・下半期 ティーンが選ぶトレンドランキング(流行ったコト編より)
※2020年に流行した「ヒト・コト・モノ・コトバ」の4ジャンルについて、13〜19歳の女性503名のアンケート回答を集計
→ https://www.mynavi.jp/news/2020/11/post_29116.html
「ティーンのトレンドとテレビ視聴実態の関係性」の詳報については、下記リンクよりマイナビティーンによる解説記事をご覧いただきたい。
【マイナビティーンズよる解説記事】『10代女子がテレビコンテンツを見る上で必要な要素は「推し」と「きゅん」 ~人気ドラマをもとにポイントを解析~』
また、ビデオリサーチ・ひと研究所の調査データによると、ティーン層の動画プラットフォーム利用率について、テレビのリアルタイム視聴が最も多く、次いでYouTubeとなっている。そのYouTubeで視聴されているのは、「音楽、アーティスト」「タレント」「アニメ」「ドラマ、バラエティ」といったジャンル。ひと研究所は「テレビ由来の動画、放送局や制作会社が作成したものを含む、いわゆるプロコンテンツである可能性が高い」という見解を示した。
■ティーン層は、その他の世代よりもTVerの認知率が高い
テレビ由来のコンテンツといえば、民放公式テレビポータル「TVer」の動向にも注目したい。アプリダウンロード数は3602万(2021年3月時点)、TVer単体のMAUは1622万(2021年3月時点・ビデオリサーチ調べ)、再生数は1億8305回(同)、認知率(15~69歳/男女)は61.3%(2020年12月時点、マクロミル調べ)に上る。
2015年10月サービス開始以来、再生数、UB数ともに右肩上がりで成長し、週間動画再生数は4000万回以上、週間ユニークブラウザ数は800万を超える。
ティーン層の利用はどうか。少し過去のデータとなるが、例えば、2020年9月のTVer利用者の構成比推移をみると、視聴者層は人口比率に比べてF1・F2層が非常に多く、合計で37.6%。20歳以上の男女比は43対57で女性の方が多い。ティーン層(MF15~19層)は5.6%だった。
続いて、2020年11月の構成比推移では、視聴者層は人口比率に比べてF1・F2層が引き続き多く、合計で38.6%。また、10月からティーン層をターゲットにテレビコンテンツの価値を再認識してもらうCMを展開しており、その効果もあってかティーン層(MF15~19層)は7.1%に増加した。
一方で、特にティーン層(女性)のTVer認知率は、2020年9月時点のデータでは74.5%となっており、全体よりも高い数字となっている。
各社のデータ、調査結果を振り返り、ひと研究所は「ティーン層が、仮に“テレビではなくYouTubeの動画を見る”としても、素人・一般人による投稿動画ばかりを見ているわけではない」と推測。YouTube以外のプラットフォーム利用状況、TVer認知率などを見ると、テレビ由来コンテンツへのニーズも読み取れることから、ティーン層の実態として「テレビ番組(コンテンツ)からは離れていないのではないか」と総括した。レポート中編、後編では『恋つづ』にまつわるデータや調査結果を踏まえて、女性ティーン層へのアプローチ方法について考察していく。