SNSでの番組反響投稿を24時間体制で監視! CCI&BTP共同新事業インタビュー
編集部
BTP田代直樹氏・倉持 良氏、CCI 平野千恵子氏・小林未奈氏・國分寿隆氏
株式会社サイバー・コミュニケーションズ(CCI)と株式会社ビズテーラー・パートナーズ(BTP)は放送局を対象とした新たなコンサルティングサービスを2020年7月30日に開始した。このサービスではソーシャルメディア(以下、SNS)での視聴者の反響やその影響度を分析・評価し、課題解決のための戦略立案や実行支援を提供する。
今回は、この新サービスの概要、立ち上げの経緯について、株式会社サイバー・コミュニケーションズ ブロードキャスティング・ディビジョン 放送局グループ・グループマネージャーの國分寿隆氏、同ディビジョン・平野千恵子氏、小林未奈氏、株式会社ビズテーラー・パートナーズ 代表取締役社長の倉持 良氏、同社・田代直樹氏に話を聞いた。
■ビジネスルールのグローバル化
──CCIとBTPのタッグはどのような経緯から生まれたのでしょうか。
倉持氏:まず、BTPの設立背景からお話しできればと思います。
昨今、グローバルプラットフォーマーを中心に絶え間なく新しいデジタルサービスが登場することで、より高度なマーケティング施策が可能になる一方、これまでの日本古来のビジネスルールがグローバルルールへと置き換わることも多くなっているかと思います。その変化に対応しながら、クライアントに求められる品質を維持するという、新たなビジネスタスクが生まれています。
しかし、これらのビジネスタスクは各企業にとって「必要に迫られて、それぞれ行わざるを得ない」ようなものであり、いかに効率化をするかが喫緊の課題となっていたかと思います。BTPは、このようなデジタル業界を中心とした課題解決にむけて、CCIと様々なBPO業務支援で実績のあるイー・ガーディアン株式会社との合弁によって、2020年4月に設立しました。設立以来、広告やマーケティングに特化したBPO(Business Process Outsourcing)サービスを提供しています。
上述のような課題は、デジタル化が進む放送業界においても同様に生じていると考えています。CCIはデジタル広告を黎明期から扱ってきたため、こうしたビジネスタスクに対する豊富な知見を持っています。ただ、より質の高いサービスを提供するためには、CCIとBTPがタッグを組み、両社の強みを掛け合わせることがベストであると考えました。
今回のCCIとBTPのサービスを通じて、放送業界内で共通して利用いただけるビジネス機能をご提供し、本来の競争領域により集中していただける環境づくりをサポートさせていただきたいと考えております。
──CCIとBTP、それぞれの役割分担はどのようになっていますか。
平野氏:コンテンツ反響データの収集と解析はBTPが担当します。CCIは収集・可視化されたコンテンツに対してマーケティング的な観点から分析を行い、見えた課題に対して最適な“次の一手”の実行支援を行います。
■ユーザーから発信される「評価コンテンツ」を施策改善に活かす
──SNS上での評判分析に着目した背景は?
小林氏:ユーザーのコンテンツの視聴体験が多様化されている今、SNS上で発信されるユーザーの声がコンテンツ制作者側に直接影響を与えだしています。特にテレビ視聴においてはSNSにおける発信度合いと視聴率とのあいだに相関性が見られたりと、注目されている部分もございます。このように、いまやSNSはコンテンツと視聴者との有機的なつながりを生み出す場になっているのではないかと考え、SNS上での評判分析という領域に着目しました。
──いまや、生活者の情報への向き合い方は受信と発信がセットとなっていますね。
小林氏:ユーザー一人ひとりが自らコンテンツを生みだし発信可能となった作れるプラットフォームが台頭してきたことで、コンテンツの受け入られ方が変わってきています。これまでコンテンツ供給者は、できあがったコンテンツを届け、その評価を視聴者に委ねるというモデルが続いてきました。しかしいまは誰しもが平等にコンテンツへの考えをSNSを中心としたインターネット上で不特定多数に発信できるようになり、視聴者が「良い」もしくは「良くない」と感じたものが、多方面かつ加速度的に広がるようになったのです。
──たしかに、SNSをきっかけにコンテンツが爆発的な支持を得るケースを多く見かけます。
小林氏:ユーザー間のポジティブな投稿がネットニュースになり、さらなる注目を集めるという好循環を目にすることもが多くなりました。これらの流れをうまく把握してコンテンツへ還元したりPRにつなげたりすることができれば、より多くの方を巻き込んで番組のファンを増やすことができるのではないかと思います。
■主要SNSやレビューサイトも網羅。専任スタッフが24時間体制で監視
──これから提供するサービスの具体的な内容について教えて下さい。
倉持氏:中心となるのが、番組に対するSNS上での視聴者の反響の収集・分析です。BTPでは放送局様からいただいたご希望を受け、特定の番組をベースに投稿の監視を行います。専任のスタッフが24時間体制で定点観測し、番組に対する評判がどう変わってきたかを見ることで、放送局におけるレピュテーション・マネジメントをサポートします。その後、どのように番組を改善するかというコンサルティングやプロモーション面のサポートをCCIよりご提供します。
──人力ベースでの投稿監視を採用した理由は?
倉持氏:投稿に貼り付けられた(キャプチャ)画像などテキストのみでは内容を読み取りづらい部分の情報もあわせて収集するため、あくまでこの部分は目視による対応を基本としています。
──現在さまざまなSNSが存在しますが、このサービスではどれくらいの範囲まで、またどのような手法で情報を収集しているのでしょうか。
平野氏:TwitterをメインにFacebook、Instagramなど、主要なSNSは網羅しています。
田代氏:ブログや掲示板、ニュースサイト、レビューサイトの内容もチェックしています。ネット上で発信されているテキスト情報であれば、概ね網羅しております。
──直接番組名を挙げずに遠回しに言及する、いわゆる「エアリプ」のようなものにはどのように対応しますか?
倉持氏:あれもこれも、とデータを収集してしまうとノイズが出てくるため、本来いち早く把握するべきものに対象を絞り込んで調査します。番組名が書き込まれているものに絞りこむなど、極力シンプルな設定で情報を拾い上げます。
──地上波以外に、SVOD(定額課金制動画)やキャッチアップ(見逃し配信)に対する反響もキャッチすることは可能ですか?
平野氏:キャッチすることは可能です。Amazon PrimeビデオやHulu、Netflixなど、それぞれのサービスごとに反響の出方にディレイがあるケースもあるので、そうしたニーズにも対応できるようにしています。
──地上波でオンエアされたあとにキャッチアップでコンテンツを視聴したり、地上波と連携して配信限定の特別コンテンツに誘導するというケースも増えてきました。こうした“コンテンツ連携もの”に対する反響のキャッチも可能ですか?
平野氏:はい、こうした波及の流れにも対応していきたいと思います。リアルタイムで視聴していなかった視聴者の方にも(キャッチアップへの誘導などで)コンテンツへのアクセス機会を作り出す、という面でSNSによる反響投稿の果たす役割はとても大きいと思います。
■放送局の要望にあわせ「カスタム型のレポート」を提供
──収集した情報のレポートはどのように確認できますか。
平野氏:放送局の要望に応じて当サービスが作成、納品したカスタムレポートを通じて確認いただけます。
──オンエア直後の反響など、速報的なレポートを得ることは可能ですか。
平野氏:「オンエア2〜3時間後の動向」のようにある程度のリアルタイム性が求められる場合は、即時性の高いツールなどを用いてまず速報値を報告し、その後確認したいポイントに絞ったレポートを別途まとめ、納品いたします。
──フォーマットが固定されたアプリケーション的なものではなく、放送局側の要望にあわせたカスタム型のレポートが基本ということですね。
平野氏:リアルタイム性が求められるケースもあれば、長時間ワイド番組などのようにスパンの長いレポートが必要なケースもあるかと思います。このあたりは放送局様のご要望にあわせ、柔軟に対応していきたいと思います。
■「確実に面白い瞬間」からコンテンツに入れる流れを作る
──このサービスによって、放送ビジネスにどんな新しい展開が期待できますか?
倉持氏:SNS上で番組への反響が拡散し、さらにそれがキュレーションメディアで記事化されて、さらにSNSで拡散していくという循環が期待できそうです。話題化しやすい、ループに乗りやすいコンテキストのイメージがしやすくなり、それを見たうえで次の施策を考えやすくなるのではないかと思います。
平野氏:radikoやTVerが再生時点を指定して(シーン)シェアできるように、話題になっている特定の箇所を指定し、コンテンツとともに配信することでさらなる視聴機会を増やすことが可能ではないかと考えています。
──SNS上でも「このシーンがよかった」というような書き込みをよく見かけます。
平野氏:盛り上がったきっかけのシーンがわかれば、今後のコンテンツ作りにも具体的に活かせますし、シーン単位でのシェアは、ライトにコンテンツと接点をもつ機会を増やしていけるのかもしれません。
──最後に、このサービスにかける思いを聞かせてください。
國分氏:かねてより、放送局のみなさまから「SNSと放送の両方に知見を持ったコンサルティング」を希望される声をいただいていました。放送ビジネスにおけるデジタルトランスフォーメーションは私たちの使命と考えておりますので、ぜひこのサービスを通じてお役に立てればと思います。