メ~テレ、AbemaTVと初の同時配信で「得たもの」と「見えてきた課題」
編集部
名古屋テレビ(以下、メ~テレ)とAbemaTVが、2月23日にメ~テレ制作番組「関根勤とみうらじゅん」を地上波放送とインターネットテレビ局AbemaTVでの同時配信を実施。前編「メ~テレがAbemaTVと初の同時配信を実施した理由」では、メ~テレ総合編成部長・濱千代治彦氏に番組制作の経緯や背景について伺ったが、後編では視聴率分析の結果を交えて今後の展望を探る。
(濱千代治彦氏プロフィール)
名古屋テレビ放送 編成局 総合編成部長。2014年7月からデータ放送や配信に携わり、さまざまなメディアや技術を利用した番組配信を行う。2016年7月から総合編成部長。
■ローカル局としては初!AbemaTVでインターネット同時配信
今回、AbemaTVと同時配信された番組は、メ~テレ制作の「関根勤とみうらじゅん」。日本の表のカルチャーを支える人々に対し、裏のカルチャー、UNDERな世界を支える人たちを、番組に名を冠した両氏が紹介するものだ。
地上波ではこの番組はVTRを交えた60分のスタジオ収録もの。このVTR番組を同時に配信するとともに、番組の前後にメ~テレスタジオで制作するバラエティ企画のLIVE映像をAbemaTVのみで配信するという形となった。
地上波とインターネット配信部分を同時とするという、技術的な問題も、度重なるテストを重ねて克服し、放送は問題なく終了した。

■視聴率は予想以上! 視聴者層には思わぬ結果も
濱千代氏は、今回の同時配信の反響について次のように語る。
「視聴率は想定よりも良かったので、企画としては成功したと考えています。またAbemaTVさんがテレビ視聴の補完になるのか、競合になるのか、という点を確かめたかったという狙いもあり、これからさらに分析をしていく必要もあると感じています」
同番組の地上波における世帯視聴率は3.9%で同時間1位。また占拠率は24.4%と、高い結果を残している。濱千代氏は、単発番組の編成としては予想以上の数字だということを示した。
視聴をしているターゲットとしても、いわゆるChild、Teen、M2、M3、F1、F2で、同時間帯で最も高く、M1、F3の層の視聴も多かった。この結果は予想以上で、濱千代氏は以下のように分析する。
「番組自体がラブドールと60歳代のアイドルという変わったネタを扱っていたもので、普通ならばM層が見るような編成でした。しかし結果を見てみると、F1、F2が1位という数字になり、これは予測以上です。数多くの若年層に見ていただけた番組になったという印象です」
■AbemaTVでも多くの視聴者数を記録
一方、AbemaTVの配信結果を見ると、総視聴数が10万を越える結果で、深夜帯の放送にも関わらず多くのビューを獲得できた。

また視聴者属性においては、34歳以下の若年層が全体の50%を超え、主に25~34歳の男性ユーザーの視聴が多かったと言う。
この点について濱千代氏は、「地上波とは全然違う結果が出ました。視聴者層という点では異なる若年層のリーチができ、視聴の広がりがあったのではないかと考えています」と、同時放送の意義を語る。
またAbemaTVで同番組を見た視聴圏は、東京が21.26%でトップ、次いで大阪が15.39%、神奈川が9.80%となり、地元の愛知は7.93%で4位だった。ローカル局の番組を大都市圏に広める連動ができた格好だ。同時配信によりメ~テレの放送エリアである愛知・岐阜・三重だけでない、全国の数多くの視聴者に訴求できたといえる。

■双方にプラスになる? 食い合いになる? 模索は続く
地上波、それもローカル局とインターネット局の同時配信という試みは、視聴という面では一定の成果が得られたが、テレビ局の編成としての見方はどうなのだろうか?
「テレビの編成からすると、インターネット配信が必ずしも視聴率にプラスになるのかどうかは分からない、という疑問はありました。AbemaTVさんを始め、他の配信会社もテレビの受信機で直接見るということも進んでいくでしょうし、食い合いになる可能性は否定できません」
「しかし、視聴傾向としては、こういう形で番組が見られていくという流れを止めるのは難しいと考えています。テレビから動画配信につながるもの、またその逆も、うまく仕掛けを作って配信を行うことを考えざるを得ない時代だと感じています」
濱千代氏は、今後はセールスの連携も視野に入れていく時代だとし、地上波とインターネット配信の会社が協業することで学び合うことの大切さにも言及した。
地上波とインターネット配信は、時代の変化に適応しながら新しいコンテンツ配信の形を探し続けていく。今後もその動向に注目したい。