メ~テレがAbemaTVと初の同時配信を実施した理由
編集部
名古屋テレビ(以下、メ~テレ)とAbemaTVが連携し、2月23日にメ~テレ制作番組「関根勤とみうらじゅん」で地上波での放送とインターネットテレビ局AbemaTVとの同時配信を実施。放送と配信が相乗効果を生み、地上波放送、配信ともに予想以上の視聴を記録した。そこで、今回の取り組みから“得たもの”は何か? メ~テレ編成局 総合編成部長の濱千代治彦氏に話を伺った。
(濱千代治彦氏プロフィール)
名古屋テレビ放送 編成局 総合編成部長。2014年7月からデータ放送や動画配信等に携わり、さまざまな技術を利用したメディア施策を行う。2016年7月から総合編成部長。
■新機軸のコンテンツ配信に挑み続けるメ~テレ
メ~テレは近年、さまざまな形でインターネット配信やソーシャルメディア連携を進めている。その発端となったのは2016年3月に行ったLINE LIVE。メ~テレ音楽番組の「BOMBER-E」における「チームしゃちほこ LIVE」を、LINE LIVEで配信した。
このLIVE配信にあたった濱千代氏は、「今でこそルーティンの形で配信ができますが、当時は音楽LIVE配信に精通をしているスタッフも多くない中での試みで、かなりの負荷がかかり大変でした」と振り返る。
このチームしゃちほこ出演による「BOMBE-E」のLINE LIVEは、視聴者数80万人越えの視聴者数を獲得。配信直後からの視聴の伸びも圧倒的で、秒単位で数百、数千と増えていったという。その後メ~テレは、AVOD動画配信、TVerでの自社制作人気ドラマ配信、ハイブリッドキャスト技術を用いた4K映像の配信実験や放送展開など、積極的にコンテンツ配信や新技術の導入を続けている。
■AbemaTVとの同時配信はどのようにして実現されたのか
この一連の流れを引き継ぎ、メ~テレは今年2月23日深夜、AbemaTVと同局制作番組の初の同時配信を行った。ローカル局としては、初めてのことだという。この取り組みのきっかけについて、濱千代氏は、
「かねてよりAbemaTVさんとは、何か企画をやりたいという話をしていました。そこで深夜帯ですが『関根勤とみうらじゅん』を単発で制作することになり、AbemaTVさんのターゲットに合うのではないかと考え、いい連携ができないかと模索していました」
同番組は、日本の表のカルチャーを支える人々に対し、裏のカルチャー、UNDERな世界を支える人たちを、番組に名を冠した両氏が紹介するものだ。
「そしてその頃、AbemaTVさんがテレビ朝日さんの番組で同時配信を初めて実施したという話を聞き、メ~テレならば『関根勤とみうらじゅん』が適しているのではないかと改めて相談をしました。」

この番組はVTRを交えた60分のスタジオ収録もの。AbemaTVとの同時配信が進む中で「せっかくの同時配信だから、ライブでの展開が何かできないか」という提案が出たという。そして、番組の同時配信をする前にメ~テレのスタジオでバラエティ企画を制作し、そのLIVE映像はAbemaTVのみで放送し、同時配信が終了した後に再び、LIVE映像をAbemaTVで配信するという形になった。
■綿密な放送準備で視聴率は予想以上に
ただ地上波とインターネットテレビで同じ番組を送り出すだけではなく、LIVE映像を前後に流すということで、技術的に困難な部分はなかったのだろうか? 濱千代氏は、放送準備段階での取り組みを次のように語る。
「地上波での放送とAbemaTVでの配信部分を、できる限り同時にさせたいと考えました。動画配信でのエンコードなどの遅延と地上波の遅延をどのように合わせるのか。『関根勤とみうらじゅん』自体はVTR番組ですから、テレビ局のマスターから放送を出します。それとインターネット配信をどうやって合わせるのかという点が一番大きかったですね」

何度もテストを繰り返し、結果的にはメ~テレから放送するものとAbemaTVに送り出すものを20秒前にずらすことで同時配信が可能となった。事前に丹念な検証を繰り返したことで、実際の放送時には大きな問題は起こらなかったという。
「地上波の視聴率は3.9%、占拠率が24.4%と、同時間で1位という結果になりました。単発の番組で1位になることはなかなかないので、予想以上の数字ということが言えます」
■コンテンツ配信の新たな挑戦は続く
インターネット配信が地上波に与える影響を、「食い合いになる可能性も絶対に否定はできないと考えています」と濱千代氏は語る一方で、「コンテンツの視聴方法の多様化や変化を止められない」という認識も持ち合わせている。
「テレビから動画につながっていくもの、動画からテレビにつながってくるもの、この二つをうまく仕掛けを作り、番組を送り出す、あるいは配信をするということを考えざるを得ない時代になっています」
地方局の体力やリソースではなかなか難しい面もあると言いながら、「今後もさまざまな挑戦を続ける」意気込む濱千代氏。メ~テレの次の施策が楽しみである。