視聴率にまつわる、まことしやかなウワサについて
ビデオリサーチ マーケティング事業推進局 テレビ・メディア分析部 部長 石松 俊之
毎日、当たり前のように見て、使っている視聴率。この数値に疑問を抱く人も多いなか、実際にテレビの現場で働く人間であっても、具体的な中身をあらためて問われると「?」となることもあるようだ。
そして、このような指摘も多く見られる。
「家庭内の複数のテレビは調査していない」
「昼間、家にいる世帯にしか調査(を依頼)してない」
「政府は調査世帯を把握して、視聴率を操作している」
しかし、これらはすべて「間違い」である。
■世帯視聴率とは?

1世帯で調査対象となるテレビ台数は最大8台(機械式個人視聴率調査地区の場合、同世帯調査地区は3台)までが測定対象となり、リビングだけでなく、個室や客間にあるテレビも調査の対象になっている。そして、世帯毎の視聴状況を取りまとめたものが「世帯視聴率」だ。
例えば5世帯中、2世帯でテレビを視ていれば「テレビを視ていた割合(俗にHUT)」は40%。その2世帯で、aさんのお宅では2つの異なるテレビで同じ(1)チャンネルを、bさんのお宅では(1)チャンネルと(3)チャンネルを視ていたとすると、
(1)2世帯÷5世帯=40%…世帯単位なので3台÷5世帯という計算にはならない
(3)1世帯÷5世帯=20%
となるのが、世帯視聴率の仕組みだ。
■簡単ではない視聴測定
ひとくちにテレビ視聴を測定すると言っても、簡単ではないはずだ。家庭のテレビを思い出してみてほしい。テレビにはレコーダーやゲーム機、ケーブルテレビのSTBなど、いろんな周辺機器がつながっているのではないだろうか?
ひとつひとつの機器における稼働ログは、もしかしたら誰かが集めているかもしれないが、その組み合わせまで把握するのは簡単ではない。調査のためにテレビの視聴環境や手順を大きく変えることなく、仮に外部入力でレコーダーのチューナーを使ってリアルタイムの放送を視たとしても、視聴状態・選局を判定する、これがビデオリサーチの行っている視聴率調査の特長と言える。
■ホントかウソか!? 視聴率操作の「陰謀論」

ビデオリサーチが視聴率調査をお願いする世帯は、統計理論にのっとって無作為に選ばれている。選ばれた世帯に調査協力してもらうため、土日、夜間などにもお願いや測定器の設置などで調査にご協力いただく世帯を訪問しており、決して「頼めそうな人/世帯」にお願いしているのではない。視聴率の操作については「陰謀論」を唱える向きと遭遇することもたまにあるが、もし放送局や広告会社が操作しているのであれば、そもそも昨今話題になっているような「視聴率低下」という現象は起きないだろう。
さらには政府の介入まで疑う話しを目にしたこともあるが、政府が都合のいい番組の視聴率を高くして人気番組であるように操作しても、実際に視ている人がその量に届かないとすれば現実の世論は動かないので操作の意味がない……、落ち着いて考えればご理解いただけるのではないだろうか(ちなみに、視聴率調査対象世帯は、社外はもちろん、ビデオリサーチの社員でも限られた部署の人間しか知ることはできない)。
視聴率の公平性・中立性を保つためには膨大な手間暇がかけられている。偏った調査では、その偏りに起因する局間の損得が生じる問題もさることながら、絶大なリーチ力を持ったテレビメディアを適切に、効果的にマーケティング活動に使うには「世の中の縮図の再現性」が重要だからだ。