中国放送、全国初の双方向機能搭載『RCCラジオ公式アプリ』を開発した理由〜担当者インタビュー
編集部
「RCCラジオをもっと楽しんでもらいたい」そうした思いから株式会社中国放送(RCC)が企画・開発した公式スマートフォンアプリ「RCCラジオ公式アプリ」が10月よりリリースを開始した。本アプリには、番組のおもしろかった瞬間がアプリにPUSH通知される、全国初の機能「キキミミ」が搭載されている。そこで、本アプリの企画立ち上げから運営まで、一貫して取りまとめる同社ラジオ局 編成業務部専任部次長 兼 企画室企画部の中岡秀晃氏に、開発経緯や放送局が本サービスに取り組む意味や目的などについて伺った。

■よりラジオを楽しむ「RCCラジオ公式アプリ」

スマホ全盛の今、Radikoの登場によって、ラジオ受信機がなくても、電波が届きにくいエリアでも、聞き逃した番組すらも、手軽に高音質で聞ける時代へと突入した。中岡氏は、「そんな進化するラジオに放送局がどう取り組み、アプローチすればユーザーとの接触を増やせるのか。Radikoではなく、RCCラジオとしてのアプローチでラジオを楽しんでもらいたかった」とRCCラジオ公式アプリの開発経緯を語る。
同社が開発した本アプリでは、聴く、書く、見るといった3つの機能が搭載されており、中でもスマートフォンのPUSH通知から番組の面白かった場面が直ちに聞ける通称”キキミミ”は、全国初の機能となっている。「あまりPUSH通知が多すぎてもユーザーのストレスになりかねないので、通勤通学の時間帯など、ユーザーがスマホを手にする時間を意識して通知しています」。
他にも、気象情報、番組への投稿、番組関連のブログや最新の情報といったものを発信するサービスが本アプリには搭載されている。当初、リリースは夏季に予定されていた。しかし、西日本豪雨による甚大な被害が相次いだことで、10月に延期されたのだった。「最初は気象情報の提供しか考えていませんでした。けれど、西日本豪雨災害が起こり、警報・土砂災害警戒情報をPUSH通知でお知らせした方が良いと感じ、急遽、機能を追加した次第です」と、リリースが延期されたからこそ生まれたアイデアだったと中岡氏は話す。
ラジオの持つコミュニティの強さや、その距離感の心地よさはSNSに近しく、投稿機能に関しては、いかに簡単に好きな番組へメッセージを届けるかを意識した。また、ラジオ番組を記事化したブログや最新の話題を発信する機能については、スマートフォンからの情報を身近に感じる若者との接点を増やす目的と、聴くラジオから目でも楽しめるラジオを意識して制作された。

中岡氏は、テレビ番組のカメラマンや編集、インターネット関連の部署ではサイトの立ち上げやアプリ制作を行ったキャリアを持つ。そんな中岡氏だからこそ、本アプリの制作においても、技術面はじめ、柔軟なアイデアで時代に合ったサービスが導入できたのだろう。「放送局で局のアプリを制作することはあっても、ラジオ単独のアプリは全国でも数少ない取組みです」とコメントした。
■日常のプラットフォーム的なアプリに
RCCラジオでは、現在、自社制作番組が50%強、いずれも生放送率が高いのが特徴だ。リリースから1か月経過した現在、本アプリのダウンロード数は4000件弱。ローカル局発信のアプリとしては、まずまずの出だしだと言う。「現状、マネタイズは考えていないが、放送局がサービスを展開する以上は、1日1回は利用する日常のプラットフォーム的なアプリになりたいです」と、本アプリへの思いが語られた。また、放送局として、インターネットや他メディアに歩み寄ることについては、「今で言うとTwitterやInstagramといった旬のサービスをうまく活用していきたい」とし、実際に同社ではLINEのボイスメッセージを利用した、番組へのメッセージ送信といった取組みも行われている。

中岡氏は、「局はコンテンツを作るクリエイティブ集団であり、届けるツールを取捨選択して生活者に届ける使命がある。あくまでもコンテンツフォルダーとして、WEBサービス ガジェットなど、を活用した新たな取組みにはどんどんチャレンジしたいです」と今後の展望を口にした。
ラジオイズムを継承しながらも新たな取組みやサービスを積極的に取り入れる同社の今後の動向や展開を引き続き注目していきたい。