COOが語るTVerの現在地と課題 〜TVerウェビナー「放送局のための配信ビジネス最前線」レポート(1)
編集部 2025/1/22 08:00
株式会社TVerのオウンドメディアScreens主催のウェビナー「放送局のための配信ビジネス最前線」が、2024年12月6日にオンライン開催。今回は民放連加盟社およびその関係会社を対象とし、放送業界内部で直面する課題や成長戦略について、外部視点からの分析やパネルディスカッションを通じて議論を深めた。
Screensではにわたり、このウェビナーの模様をレポート。第1回の今回は、株式会社TVer 常務取締役COO蜷川新治郎氏による基調講演「TVerの現在地とこれから」をお送りする。
■右肩上がりの成長を続けるTVer、利用促進のため潜在層へのアプローチを強化
TVerはサービス開始から10年を迎え、アプリダウンロード数が8000万を突破。月間再生数は4.9億回、ユニークブラウザ数は4100万を記録している。「最新の調査で認知率が73.3%に達した」と蜷川氏は述べ、「YouTubeに次ぐ水準」と報告する。
「TVerの利用者層は20代・30代の若年層が中心となっており、放送では捉えきれない層への浸透が進んでいる。利用時間帯は『インターネットのゴールデンタイム』にあたる夜間・深夜帯に集中。利用デバイスはスマートフォンを中心としつつ、Amazon Fire TV、Google TVなどのテレビデバイスが増加しており、その利用比率は36%に達している」(蜷川氏)
その一方で蜷川氏は「認知率に対し、実際の利用促進がまだ十分ではない」とコメント。潜在ユーザー層へのアプローチ強化が課題だと語る。
■「リアルタイム視聴のみ」のユーザー層も登場 コンテンツ接触向上に期待
続いて蜷川氏は、開始から2年を迎えたリアルタイム配信について紹介。現在は在京キー局のGP帯番組を中心に展開している。
「現在、利用者の19.1%がリアルタイム視聴を経験し、そのうち5.4%はリアルタイムのみを視聴している」と蜷川氏。全体における視聴時間の割合では8%程度としながらも「VODの補完としての役割は成長中」とした。
「リアルタイム配信はアプリを開くきっかけとなり、コンテンツ接触頻度を高める効果がある。今後はライブ配信の強化やユーザーの需要に応じた多様な取り組みを放送局と連携して進めたい」(蜷川氏)
■「TVer ID」「TVerリンク」で放送と配信の視聴データ統合 立体的な広告分析が可能に
データ活用の面については、「TVer ID」の導入により、デバイス間で視聴履歴やお気に入りの共有が可能に。あわせて「広告配信の精度向上が実現できる」と蜷川氏は語り、これらを用いた新たな広告戦略に意欲を見せる。
「在京5局の視聴データをまとめて取得できる『TVerリンク』の導入によって放送と配信の視聴データが統合され、立体的な広告分析が可能になった。テレビで接触したユーザーにスマホで再度広告を届けるなど、広告主への価値提供を進化させていく」(蜷川氏)
■コンテンツ施策ではローカル局との関係を強化 スポーツ配信もユーザー増に貢献
続いて蜷川氏は、TVerが2024年に取り組んでいるコンテンツ強化策について説明。「『VIVANT』『水曜日のダウンタウン』『アメトーーク!』など、『日本で最も見られているコンテンツ』を週単位で配信している」と語る。
その上で蜷川氏はローカル局コンテンツの強化についても言及した。現在、全国80局以上のローカル局が番組を配信。このうちレギュラー配信は163番組に拡大した述べ、「企画力の高いローカル番組を全国に届ける機会を増やしていきたい」と力を込めた。
また今年はTVer初の試みとして、パリ五輪の競技同時配信を実施。再生数は1.1億回を記録。「深夜の競技はライブ配信、日中はハイライト視聴が定着した」と蜷川氏は語る。
「スポーツ配信は新たなユーザー層の獲得とTVerの認知向上に大きく寄与している」と蜷川氏。今後も重点領域として取り組んでいく」(蜷川氏)
■今後はライブ配信やショート動画などを強化「日常的にアプリを立ち上げるサービスに」
「TVerは従来の見逃し配信から、リアルタイムやショートコンテンツ、ニュース配信を充実させ、ユーザーが日常的にアプリを立ち上げるサービスに進化させる」と蜷川氏。
ライブ配信やショート動画を強化させるほか、各局のニュース専門チャンネル配信を軸とする「ニュース」タブによって「24時間フィード」を設け、災害や有事の際の情報源としての社会インフラ化を担うと語る。
「これと並行し、無料サービスであることの認知や、テレビデバイスでの視聴可能性を訴求し、ユーザーへの理解を深める」(蜷川氏)
さらに蜷川氏はコネクテッドTVについて、「利用が増加傾向にあり、視聴完了率は64%以上と非常に高い水準」と語り、「広告スキップがないため、広告主への訴求力も高い」と強調。「リビングルームでの大画面視聴は今後も成長が見込まれる」とし、コネクテッドTV環境への対応を一層強化する方針を示した。
■「放送業界全体で連携し、未来に向けて新たなテレビ体験を創り上げたい」
「TVerのミッションは、テレビコンテンツを場所、デバイス、時間を問わず視聴できる環境を提供すること」と蜷川氏。テレビ局と協力し、信頼性、健全性を保ちながら新たな広告価値を創出し、ユーザーにとってより良いサービスを追求していくとした。
最後に蜷川氏は「放送業界全体で連携し、未来に向けて新たなテレビ体験を創り上げたい」とコメント。「TVerは今後も放送業界の強みを最大限に活かしながら、配信ビジネスの新たな未来を切り拓くプラットフォームとして進化を続けていく方針です」と呼びかけた。
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