一般社団法人 日本民間放送連盟(民放連) 研究所 研究統括の木村幹夫氏
認知に強いテレビCM、動画広告との「相乗効果」は? テレビカンファレンス2024レポート(前編)
編集部 2024/12/23 06:00
2024年11月7日、東京国際フォーラムにて、日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビの民放キー局5社による「テレビカンファレンス2024」が開催された。
今年で2回目となる同カンファレンスのテーマは「もっと伝えたい、テレビのこと~ビジネスを加速させるテレビマーケティング最前線~」。テレビCM、動画広告から、IP、イベント、テクノロジーなど、テレビ局が取り組む様々なソリューションが紹介された。
スペシャルステージ、サイドステージに分かれて行われたセッションのうち、本記事では前・中・後編にわたってサイドステージの模様をレポート。(スペシャルステージのレポートも後日アップする)
前編にあたる今回は、一般社団法人 日本民間放送連盟(民放連) 研究所 研究統括の木村幹夫氏による「テレビの広告効果に関する研究 〜ファネル効率分析と広告メディアとしての位置付けを中心に〜」の模様をお届けする。
■テレビCMの認知効果は動画広告の1.8倍、食品・日用品で顕著な購買促進効果
今回の発表は、民放連が2019年から行ってきた「テレビの広告効果に関する研究」の第3回調査の結果が中心。今回は食品、トイレタリー、自動車、医薬品、不動産など7つの商品を対象に、テレビCMとYouTubeやSNSを含む動画広告を組み合わせたキャンペーンの効果を検証した。
今回の調査では、大規模パネルを利用して、全国の15歳から69歳までの約4万2000人について、広告接触から購買行動までを調査。木村氏は「テレビ広告は認知効率と購買意思決定への影響で非常に優れた結果を示した」とし、テレビCMと動画広告両方の広告に接触した場合の相乗効果や、それぞれの果たす役割について、具体的なデータを交えながら解説した。
調査結果によると、テレビCM接触者のCM認知率の平均は18.2%となり、動画広告(10.4%)の約1.8倍の水準に。「テレビCMはその広範なリーチと高い認知効率が最大の特徴であり、動画広告よりも広告認知効率が優れている」と木村氏は述べ、「特に食品や日用品では、店頭で商品を手に取る購買行動を促進する効果も顕著である」とコメントした。
リーチ力とターゲットの特性の面からテレビCMと動画広告を比較したデータでは、全国規模で広範なリーチを持つテレビCMは7商品の平均で67%(全国で約5500万人相当)と、大きなリーチを獲得。動画広告の平均リーチは23%(約1900万人相当)となった。
「動画広告のリーチ力はテレビCMの3分の1程度」と木村氏は述べつつ、「若年層を始めとする特定のターゲットに対しては高いリーチがある」とその効果を説明。「テレビ広告が幅広い層にリーチできる一方、動画広告はターゲットを絞った情報提供に強みがある」と、それぞれの“役割”について言及した。
■テレビCMと動画広告それぞれの「強み」を活かす 重複接触で認知効率が大幅に向上
続いて木村氏は、テレビCMと動画広告を両方を組み合わせた場合の相乗効果について説明。調査によると、両媒体に重複して接触した層のCM認知効率は34%と、テレビCM単独の2倍弱、動画広告単体の3.3倍に及び、購買行動につながるパネルの効率も明確に向上したという。
「テレビCMは認知、興味喚起、購買意思決定への寄与が高く、動画広告は検索、比較、話題提供など、情報収集プロセスにおいて強みを発揮した」(木村氏)
また、今回調査対象になった7商品のデータからは、テレビCMと動画広告、それぞれが持つ「カテゴリーごとの『購買促進の強み』」が明らかになったという。
木村氏は「今回の調査について言えば、食品や医薬品においてはテレビCMが認知効率、購買行動の促進で大きな効果を上げた」とする一方、「自動車やトイレタリーにおいては動画広告の役割が相対的に高い傾向が見られた」と述べた。
■「接触・行動データの完全統合が今後の課題」
今回の調査において、テレビCMに関するデータはビデオリサーチのPM(ピープルメーター:世帯視聴率・個人視聴率調査)に基づいた「全国テレビCMデータ」、動画広告に関するデータはニールセンの「DAR(Digital Ad Rating:デジタル広告視聴率)」が用いられた。
木村氏は今回の調査について「広告への接触はログデータに基づくが、認知以降については、別のパネルに対するアンケートベースになっている」とことわりを入れたうえで、「接触データと行動データの完全統合が今後の課題」とコメント。「プライバシー、個人情報保護の問題をクリアしつつ、統合された情報が扱えるシングルソースデータを活用できれば、さらに精度の高い分析が可能になるだろう」と、今後に向けた展望を述べた。