基調講演~CTV上での放送コンテンツの存在感とは~(前編)【Inter BEE 2024レポート】
編集部 2024/12/27 10:30
一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が主催するイベント「Inter BEE 2024」が、2024年11月13〜15日に開催。今年も、幕張メッセとオンラインのハイブリッド形式で行われた。本記事では、11月14日に開催された「INTER BEE FORUM 基調講演」の中の「IPTVforum規格:知っておきたい!放送を取り巻くCTVの最新技術動向」の模様を<前編・後編>にわけて紹介する。
講演では、IPTVフォーラム技術委員会で副主査を務める株式会社フジテレビジョンの伊藤正史氏の司会進行のもと、パネリストとして総務省 情報流通行政局 情報通信作品振興課 専門職の岩井義和氏、一般財団法人マルチメディア振興センター 調査研究部 研究主幹の飯塚留美氏、NHK放送技術研究所 ネットサービス基盤研究部 部長の松村欣司氏、株式会社IPG COOの木戸直喜氏が登壇し、CTVの台頭によりテレビ型デバイスが激変する中、放送業界が今後も発展していくためにCTVとどのように向き合うべきかが議論された。
講演はCTVのホーム画面の話から、テレビ機能が多くのアプリの中の1つになり「CTV上での放送コンテンツの存在感の低下」 という点が気になるという話題からスタート。まずは総務省の岩井氏より、CTVの普及に伴って生まれた課題が語られた。
■行政×CTV
CTV利用者の利用傾向が配信コンテンツの視聴にシフトしており、ユーザーの興味に沿ったコンテンツのみが配信されることで、「自分の見たいものだけを視聴する」という状況になってきていると説明がなされた。これまで放送が持っていた、教育・報道・娯楽番組などをバランス良く編成・提供することで、社会通念を醸成するといった役割が、テレビ受信機の中で急速に低下しているのではないかという意見がでた。
■海外動向×CTV
続いて、マルチメディア振興センターの飯塚氏からは、海外の動向の紹介ということで、主に欧州の放送制度や動向についての話があった。欧州のHbbTVによる放送と配信の連携技術や、プロミネンス制度(放送コンテンツの目立たせ方)について解説された。
特にイギリスでは、放送と配信を組み合わせたハイブリット規格であるHbbTVが2021年に必須規格になったこと、地上波アンテナがなくても地上波のテレビ番組をインターネット回線で視聴できるようになったこと、地上波の視聴環境を再現したアプリ開発がされたことなどについても語られた。
■技術標準・研究開発×CTV
NHK放送技術研究所の松村氏からは、放送コンテンツへのアクセス性を高めるといった観点での取り組みの紹介として、放送と他サービスの連携による新たなタッチポイントの創出に注力されているといった話が。
放送から配信コンテンツへの遷移だけでなく、SNSや電子書籍、カーナビなどの他サービスとの連携によって、ユーザーの回遊行動の中に放送コンテンツを取り入れることを検討しているといった話はとても興味深かった。
■ビジネス視点×CTV
そして、IPGの木戸氏からは「放送コンテンツや放送局の配信コンテンツへの気づきをどのようにすれば高められるのか、実際のビジネス面でどのようなサービスが提供されているか」といった観点について語られた。
まずは、IPGのOTTリンク連携サービスについて紹介された。
OTTリンクは番組表から配信中のコンテンツに直接つながることができる機能で、見たい番組の放送が終了した後も、番組表上から手軽に視聴可能な配信サービスのコンテンツに直接アクセスすることができる。
2017年10月からWebブラウザ版のGガイドで、TVerの見逃し配信をOTTリンク連携し、2021年6月からは関東・関西のエリアのみ先行で、テレビ版のGガイドでOTTリンクを開始した。そして、2022年9月からは全国のテレビ番組表上での展開を行い、現在はキー局系列のOTT事業者とのリンクも強化していることが紹介された。
IPG、テレビ番組表『Gガイド』から各配信サービスへダイレクトにアクセス出来るOTTリンク機能を全国化
パナソニックのテレビの電子番組表「Gガイド」から TVer、TELASA、Huluに続き、新たにFODの視聴が可能に
そして、視聴者がコンテンツを求める際は単に未来の番組だけではなく、過去の作品や見逃し配信も視野に入るようになっており、番組コンテンツのライフタイムバリューが大きく変化してきているといった考えを述べた。
日々コンテンツ自体は増えつつあり、情報もコンテンツ自体も散在しているため、探せば探すほど、視聴意欲は低下してしまう可能性について言及し、IPGの介入によってその部分を解消していければ、放送と配信を回遊する視聴者の行動を促進できるのではないかと提言した。
また、ローカル局様のコンテンツへの出会いという観点からは、直近の取り組みであるLocipo、LCB(ローカルコンテンツバンク)とのデータ連携について紹介した。
モバイルアプリ、ブラウザ版「Gガイド」から「Locipo」配信コンテンツに直接アクセス
こちらの連携はWebブラウザ版のGガイドで行われ、ローカル局のコンテンツデータをIPGが整理し、親番組のSI情報(放送コンテンツ情報)と紐付けて管理、それをTVerなどのOTTリンクと同様の方法で連携表示している。
今後はどれだけ誘導効果があるかを検証していきつつ、またグリッド型の番組表だけでなく、別の動線の検討も行う予定であることも語られた。
さらに、IPGでは放送局向けに自局HP内にある番組表を自動生成させるサービス「番組表キット」を提供しており、その中でも導入局ごとの指定のコンテンツリンクを表示させる施策展開を進めており、自社サイトでもOTTリンクを展開でき、視聴者とのタッチポイントの拡大ができるのではないかと締めくくった。
放送局向け番組表自動生成・連携サービス 「番組表キット」に新機能
最後は総務省の岩井氏から、CTVにおける放送コンテンツの存在感向上に向けた行政の取り組みが語られた。来年3月までに、プロミネンス制度などの諸外国のコンテンツ流通や制度についての机上調査と、受信機上でのデモ構築の実機調査の2つを進めているといった話がなされた。
特に、実機調査の中で語られた、各アプリケーションの責任分界を保ちながら、コンテンツを横断的に一覧できるような仮想プラットフォームの構築を検討している話や、その中でも、地域的な特性を考慮し、ユーザーの地域に応じて、その地域の番組を見つけやすいUI上の工夫を実施するといった話が語られ、行政においても放送コンテンツへのアクセス性についての検討が進められているとのこと。
後編では、「リニア配信と放送」についてのディスカッション様子を紹介する。
基調講演~リニア配信と放送~(後編)【Inter BEE 2024レポート】
株式会社IPG
年間約4億以上の公式番組情報のメタデータ運用を行うデータベースカンパニー。テレビ、ラジオ、VODなどの視聴コンテンツのメタデータを収集し、整備・運用することで、電子番組表「Gガイド」の運営をはじめ、番組公式情報提供サービスやソリューションサービスなど各種事業を展開しています。
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