05 DEC

「ガチャピン」IPから「ショートドラマ」参入まで、共創するフジテレビのグローバル戦略【TIFFCOMイベントレポート/フジテレビ】

編集部 2024/12/5 08:00

フジテレビがグローバル戦略を加速させている。海外プレイヤーとの関係性を強化し、共創によるグローバルIPの開発とマルチユースを目指すという。国内唯一の国際ビジネス・コンテンツマーケット「TIFFCOM」(2024年10月30日(水)~11月1日(金)/東京都立産業貿易センター浜松町館)において昨年に続き、今年もフジテレビがグローバル事業戦略発表会を開催した。同社ビジネス推進局長の石井浩二氏をはじめ、韓国、タイ、ベトナムの海外パートナーが登壇し、説明した内容をレポートする。

■昨年発表の北米、中国、韓国プロジェクト進行中

「フジテレビグローバル事業戦略発表会2024」と題し、フジテレビがTIFFCOMの会場で10月31日に主催したセミナーイベントの冒頭、同社ビジネス推進局長の石井浩二氏が今後のグローバル戦略は「世界に向けたIPの共創とマルチユース」がテーマになることを説明した。

「海外のスタジオやプラットフォームと一緒になって新しいIPを作り、そのIPをウェブトゥーンからアニメ化や実写ドラマ化といったマルチユース展開を行っていきたい。単なるIPの相互リメイクにとどまらず、共創によるグローバルIPの開発・マルチユースを目指します」。

発表会はビジネス推進局IPプロデュース部の秋元優里氏の司会で進められ、その具体的な内容について石井氏がさらに説明していった。

強化する海外パートナーシップ発表は昨年のTIFFCOMから続くものになり、進行中のプロジェクトの状況から報告された。1つは『ウォーキング・デッド』を代表作に持つ北米のスカイバウンドエンターテインメントとの漫画原作『ハートアタック』のドラマ化共同制作である。撮影を終え、現在はポスプロ作業中、来年春に配信を予定しているという。会場限定で映像の一部が公開され、その内容は世界水準の映像クオリティの高さが伺えるものだった。石井氏は「日本人の脚本と演出、役者で撮影地は国内。日本の良さを表しながら、世界にも通用するテーマの作品になる」と話す。

中国最大手プラットフォームの1つ、bilibiliとはフジテレビの地上波放送枠「B8ステーション」でアニメ『百妖譜 第2期』を放送中だ。フジテレビ原作『世にも奇妙な物語』のアニメ化をbilibiliが制作することも決定し、連携を強化している。また韓国とはカカオエンターテインメントのウェブトゥーン原作『アクアマン』をフジテレビがドラマ実写化することでプロジェクトが進行している。カカオとは新たなウェブトゥーン原作の共同開発も進め、「エデンプロジェクト」(仮)と名付けられている。

■タイ「転校生ナノ」日本版リメイク共同制作

石井氏は「グローバルパートナーズシップのもと進めているなか、国境を越えて世界に通用するコンテンツを作ることに力を入れている。クロスカルチャーなエンターテインメント革命を起こすような新たなプロジェクトが多数ある」と力強く述べ、報告を続けた。

新プロジェクトの1つ目は中国リンモンピクチャーズ原作ドラマ『30女の思うこと〜上海女子物語〜』の日本版リメイク『TOKYO middle 30』の共同制作だ。「30代前後の女性の物語を描く。東京を舞台にしても訴えかけることができるテーマだと思います。話し合いを進めながら、脚本を開発しているところ」と石井氏が説明した。

2番目に発表されたプロジェクトとして、かねてより進めてきたドイツZDFスタジオとの共同制作ドラマ『THE WINDOW』については展開先の環境が整い、グローバル戦略の一環として放送・配信していくという。

3つ目は国際コンテンツ市場において注目度が高まっているタイとのプロジェクトである。GMMスタジオ原作ドラマ『転校生ナノ』日本版リメイクの共同制作を進めている。来日したGMMスタジオ・インターナショナルのチーフ・コンテンツ・オフィサー兼マネージング・ディレクターのエカチャイ・ウエクロンタム氏も登壇し、日本版リメイクについて「ナノというキャラクター性はタイに限らず、色々な国で存在できるものだと思う。日本のクリエイターの視点でストーリーテリングを開発して欲しい」と期待を込めて語っていた。

またウエクロンタム氏はGMMスタジオのコンテンツ制作方針は「新しいコンテンツを作り、新しいIPを作る。1つのドラマがアニメやゲームなど多くのウィンドウに広がることが目標」であることを語った。これは、コンテンツビジネストレンドを掴んだ海外パートナーとの連携によってフジテレビのグローバル戦略が進められていることが示されていた。

タイとの連携はONE31社とも進めていることを明らかにした。石井氏は「現在、ONE31制作のタイドラマをFODが5本ほど調達し、配信する方向で進めています。タイのドラマのクオリティは非常に高く、復讐ものやタイのトップ女優バイフーンの作品も含まれます」と説明した。

■強力パートナー韓国と「ショートドラマ」参入

4つ目は今回の目玉の1つであるグローバル向けショートドラマの制作について発表された。石井氏は「ショートドラマはZ世代の視聴者層を掴む意味でも重要なコンテンツ。地上波をご覧になっていない新規視聴者層の獲得にもなり、未来あるコンテンツ領域における新たなブルーオーシャン戦略だと考えています」とショートドラマ参入への意図を語る。

このショートドラマ制作において、フジテレビはショートドラマ業界をリードする韓国のカカオエンターテインメントとPLAYLISTと組み、カカオエンターテインメントのウェブトゥーンIP「男装秘書」を活用した韓国版ショートドラマの共同制作と、カカオエンターテインメントのウェブトゥーンIPを活用した日本版ショートドラマの共同制作を計画する。

カカオエンターテインメントIP事業部部長ファン・ゼホン氏とPLAYLIST 代表取締役パク・テウォン氏の2人をゲストに迎え、カカオエンターテインメントのゼホン氏はショートドラマ業界の現状を語った。「ウェブトゥーンは安定したビジネスモデルが構築されていますが、ショートドラマは道半ば。我々は中国のような量産型の低コストの作品ではなく、高いクオリティのショートドラマを目指したい。それには初期投資が必要ですが、進めていきたい」と話す。

またPLAYLISTテウォン氏はフジテレビとの共同制作について「中国で量産されている多くはロマンスもの。これとは差別化したものを考えたい。リアリティのあるロマンスものやファンタジー要素を盛り込んでいくことに勝ち目があると思っています。フジテレビから新しい企画についてアイデアももらい、互いに意見を交わしながら新しいプロジェクトに挑戦しています」と語っていた。

■東南アジアで「ガチャピン・ムック」IP展開

最後の5つ目はフジテレビIPのグローバル展開の第一歩となる「ガチャピン・ムック」の東南アジア進出を掲げた。具体的にはアジア市場で影響力を持つベトナムのPOPS Worldwide社とタッグを組み、「ガチャピン・ムック」を子供向けショート音楽コンテンツとして共同制作および世界配信する計画が進められている。

石井氏は「フジテレビは他局と比べて子ども番組に強みがある。国内だけでなく、海外にも広げていこうと、POPS社と一緒に50周年を迎えた『ガチャピン・ムック』をまずは音楽に乗せて展開していきます」と想いを込めて説明した。

POPS Worldwide 創業者兼CEOエスター・ウィン氏も登壇し、「日本には非常に強いIPがあります。日本の文化やソフトパワーに世界に広げていく役割を担い、日本のキャラクター愛を持ってビジネスの拡大を目指します」などと話し、今後の展開に期待できるトークセッションが繰り広げられた。

最後に石井氏は「共創」がカギになるグローバル戦略の狙いを改めて説明した。「これまでは海外を意識し過ぎたのかなと思っています。今では国内出張のように韓国に足を運んでいます。グローバル戦略を進める上で、まずは会いに行き、来てもらって、会話を重ねることを大事にしています。そして、グローバルパートナーと信頼関係を築き、お互いに興味のあることをまずは始めてみる。諦めずに二の矢、三の矢を放っていきたいです」。

継続中から新規までフジテレビのグローバル事業発プロジェクトが一気に増えた印象だ。TIFFCOMやMIPCOMなど見本市を活用しながら、日頃の活動に落とし込み、マーケットニーズを熟知する強力なグローバルパートナーを味方につけながら、IPマルチユースの“共創”戦略を自信を持って進めている。

フジテレビ、「Fuji Television Global Vision 2024~フジテレビグローバル事業戦略発表会~」イベントレポート

TBSテレビ龍宝社長が描く、北米・韓国拠点の新グローバル戦略【TIFFCOMイベントレポート/TBSテレビ】