左から 優秀賞:奈良さわさん 大賞:戸成なつさん 優秀賞:田中徳恵さん

23 OCT

第24回「テレビ朝日新人シナリオ大賞」が発表!応募総数957通の中から戸成なつさんの『推さないでくれませんか?』が大賞を受賞

編集部 2024/10/23 08:00

第24回「テレビ朝日新人シナリオ大賞」(主催・テレビ朝日、後援・朝日新聞社、BS朝日、東映、幻冬舎)の受賞者が決定し、10月22日(火)、東京・港区六本木のテレビ朝日本社内で授賞式ならびに受賞発表会見が行なわれ、戸成なつ(となり・なつ)さんの『推さないでくれませんか?』が、大賞に輝いた。

フレッシュで有能な脚本家の発掘と育成、および制作現場の活性化と魅力的なコンテンツの展開を目指して2000年7月に創設された「テレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞」は、第16回より「テレビ朝日新人シナリオ大賞」としてさらなる進化をとげ、今年3月1日に第24回の募集を締め切り、最終選考会が行われた。

今回も昨年に続き、「ラブストーリー」というテーマを設けてテレビドラマ脚本を募集。締め切りまでに計957篇の応募があり、第1次選考は日本脚本家連盟に所属する脚本家の方々によって行われ、176篇が通過。第2次、第3次選考は、テレビ朝日のプロデューサー、ディレクターなどで構成された“社内選考委員会”によって審査が行なわれ、第3次選考で9篇に絞り込まれた。そして、2024年10月1日(火)、選考委員のの井上由美子、岡田惠和、両沢和幸の3氏による最終選考会が行われ、3篇の受賞作品が決定し、大賞の発表が行われた。

大賞は、戸成なつ(となり・なつ)さんの『推さないでくれませんか?』。この他、優秀賞には田中徳恵(たなか・のりえ)さんの『令和にお見合いしてみたら』、奈良さわ(なら・さわ)さんの『レンタルくず』が選ばれた。大賞には賞金500万円、優秀賞には100万円が贈られ、授賞式では受賞者の3人にテレビ朝日代表取締役会長・早河洋より賞状が贈呈された。

受賞の言葉および受賞者のプロフィール

■大賞

戸成なつ(となり・なつ)/『推さないでくれませんか?』

■作者プロフィール ヨガインストラクター/神奈川県在住

この賞には何度も応募しました。何回も落ちました。だから、まだ受賞した実感がありません。今回『ラブストーリー』というテーマだったんですが、その中に「夢を追う」というテーマを自分で考えて入れさせてもらいました。今までは、家でここで受賞する方のコメントを何回も見ていたんです。今、私がこうしてコメントしているのを誰かが見てくれているのかと思うと、胸がいっぱいになります。諦めずにずっと書き続けてきてよかったです。ずっと書き続けてきてよかった、一生書き続けたいと思います。

――書き上げる上で大変だったこと

お笑いのお話だったんですけど、ネタをシナリオの中に書く、書かない問題で迷いました。基本的にお笑いが好きなんですけど、お笑いの方への冒涜になるのではと、ひよって、ネタの部分を外しました。

――今回の賞金の使い道は?

賞金は、昨日タイムリーに差し歯が取れてしまって、今日のために歯医者を何件も回ったんです。賞金でいい歯を入れたいと思います。

■優秀賞

田中徳恵 (たなか・のりえ)/『令和にお見合いしてみたら 』

■作者プロフィール ライター/東京都在住

この度はこのような賞に私の応募作を選んでくださり、ありがとうございます。脚本は作り、映像化されて初めて完成するもの。この応募作を読んで撮りたいと思ってくれる監督はいるのかな、時間を割いてみてくれる視聴者がどれくらいいるのかなと思いながら応募作を読み直してみたところ、直したいところがたくさん見つかってしまって……。昨日よりも今日はもっと面白いものを書こうって強く思いました。

――書き上げる上で大変だったこと

大変というか後悔しているところは、やっぱり先生方にご指摘されたような部分です。結婚したかった相手のことが典型的な感じになっていたりとか、相手の男性の見せ場が少し少ないというところとか。

――今回の賞金の使い道は?

演技をもっとみたいなと思っていて、今年4本みたんですけど、チケット代が結構高く、観に行けないこともあったので、もっと頻繁に演劇を観に行けるようになりたいなと思いました。

■優秀賞

奈良さわ(なら・さわ)/『レンタルくず』

■作者プロフィール ライター/千葉県在住

私は生粋のテレビっ子。テレビが好きで、ドラマが好きで、音楽が好きで、バンドが好きで。そのたくさんの好きが詰まったこの作品が賞に選ばれてとても嬉しいです。諦め悪く長々と書き続けてきてよかったです。まだまだ諦め悪く書き続けたいと思います。

――書き上げる上で大変だったこと

私はいつも書き出すのが遅くて、締め切り間際にお尻に火がついてわっと書くんです。その時間との戦いと、日々の戦いというか、今回はノッて書けたので、こんなに走れるもんだと思いながら書き続けていました。

――今回の賞金の使い道は?

12年もののノートパソコンを未だに使っているので、ちゃんと薄いパソコンを買いたいです。

選考員の声

<井上由美子>(※欠席のため、司会者が代読)

大賞の『推さないでくれませんか?』はここ数年ドラマで取り上げられる機会が増え、応募作に取り上げられることが多い推し活をテーマとした作品でした。読み始めた時はまた推し活かと思いましたが、推される側の心情を丁寧に描くことで、新しい切り口を獲得し、他の推し活ドラマとは一線を画していました。死んでしまいそうだった主人公が推しを応援して元気を取り戻す一方、応援された芸人が推されたことで堕落する様子がリアルで面白いと思いました。残念だったことはお笑いのネタがシナリオの中で具体的に書かれていなかったことです。どこかワンシーンでもオチまで書かれているネタがあり、そこに二人の関係が投影されていれば説得力が出たと思います。

『レンタルくず」は素晴らしい彼氏でなく、くずをレンタルすることで、過去に縛られていた主人公が現実の恋を知るというストーリーでした。読んで、とても新鮮で面白かったです。主人公がクズに振り回される姿が面白く、現れた元カレの方が実はくずだったという展開も楽しかったです。『令和にお見合いしていたら』はタイパを重視するヒロインがお見合いで結婚相手を見つけようと奮闘する物語です。こう書くとありがちな設定に聞こえますが主人公の描写に迷いがなく、ナチュラル感があって良かったです。導線もスムーズで無駄な描写を省略する思い切りの良さも感じました。でも、タイパという概念が、今だけでなく、半年後も視聴者に刺さるかはわかりません。その時に話題になっている時事ネタを扱う難しさを感じました。

3本とも映像がすぐできるシナリオであり、3人は即戦力になる可能性を持った方だと思いました。最終選考に残った他の作品も、技術的なレベルが高かったです。一方で、コンクールならではのチャレンジングな作品も読んでみたかったという願いも抱きました。受賞者の方、コンクールは入ったらゴールではなく、そこが入口です。今日1日は思いっきり喜んで、ご家族や友人と笑いあってください。そして明日はスタートラインに立つ緊張を一人で噛み締めてください。おそらく目の前にあるのはまだ何もない荒野です。どっちに向かって歩き出せばいいのかは誰も教えてくれません。シナリオは一人で書く仕事。セオリーがなく不安も迷いも出てくると思います。でもだからこそ面白い。勇気を持って書き続けてください。

<岡田惠和>

今回「ラブストーリー」がテーマ。応募されたものを読んで、今はきっかけがないと恋愛も始まらないんだなって、勉強になりました。恋愛のプライオリティがわかって面白かったです。最終選考の作品も、楽しく読めた作品が選考に残ってよかったです。『推さないでくれませんか?』は、ストーリーは駆け抜けた感があって、強引なハッピーエンドも良いなと思いました。ちょっと泣きました。総合力の高い作品だったと思います。

『令話にお見合いしてみたら』も面白く読めました。読後感もよく、とても書ける人だと思いました。『レンタルくず』ですが、くずにどんどん引き込まれていく、引っ張り込まれていく感じが面白かったです。昔の恋愛のパートは少しだけ上手く消化できていない感じがありました。そこがちょっと惜しいなと思いました。でも最後のシーンはとても良かったです。歌で感動するというシーンもこの作品はうまく書いていました。頑張ったなと思いました。3人とも即戦力のような存在。そんなに差や違いがあるわけでもない。大賞を取れなかったからといって、落ち込まず書き続けてほしい。ドラマは数が増えているので頑張りましょう。

<両沢和幸>

ラブストーリーという題材は男と女の二人の話。『推さないでくれませんか?』は恋愛を二人に絞って書いているのがすごくいいと思いました。あの手この手、いろんな人を出してくる作品が意外と多いんです。二人の心情に絞って、心象の変化を書くのは難しいんですが、基本的にはラブストーリーの王道のような作品だなと思いました。ただ、お笑い芸人の話というのは今までも何回かあった。この手の作品で問題なのは芸をするシーンをどう描くか。すごくウケたとか大爆笑とか書いてあっても、実際その芸が面白いかどうかは別。そこをお客さんを笑わせるように書くのは腕がいるんです。そこを本当に面白く書いて欲しかったというのが、最終選考の時に出た話です。しかし、楽しく読ませてもらいましたし、面白い作品。ドラマ化すると、すごくコミカルな楽しいラブストーリーになると思います。

『令話にお見合いしてみたら』はタイパをする人を描いた作品。設定が今風であるし、面白く展開をしているんですが、苦言を呈すると、タイパを重視する女の人がちょっと嫌な女の人に見える時がある。最後まで見ると好感を持てるようなっているけど、テレビドラマって、最初の数分でチャンネルを変える人もいる。そういう人もいると考慮して書くべきだと思いました。『レンタルくず』は書き慣れていて、面白い作品でした。でも『レンタル彼氏』とか『レンタル彼女』とか『レンタル◯◯』は割合よく書かれているテーマでもあるんです。この作品ではバンドマンがくずな男の代表になっている。彼がオリジナルの曲を書くところがあるんですが、あっと驚く詞や歌詞が出てくるともっとよかったかなと思いました。

今回3名とも女性。最後に残った人は女性が多かった。「ラブストーリー」がテーマだからかもしれません。「ラブストーリー」という横文字のせいで淡いラブストーリーが多い印象でした。でも実際の恋愛はドロドロして、切なかったり激しかったりするはず。最終選考の作品は意外とそういうものはないなという感想でした。テレビドラマはお客さんが何を見たいかを考えて書くんです。時にはハッとするような展開も見たかったなと思いました。

そしてみなさん、受賞はゴールではありません。これから脚本家生活が始まる。仕事となるとオーダーされたものを書く。大変なこともあると思いますが、そこに適応して素晴らしい脚本家になってほしいです。

第24回『テレビ朝日新人シナリオ大賞』大賞受賞作

■タイトル『推さないでくれませんか?』
作者名:戸成なつ(となり・なつ)
<内容>
極限社畜の海老原みち(33)は、今にも死んでしまいそうな精神状態だった。そんなみちの前に、“推し”という神が現れる……。

みちが勤める人材派遣会社に、みちの推し、お笑い芸人の星野優也(36)がやって来た。星野は物ぐさな性格のせいで先輩芸人から家を追い出され、半ばホームレス状態で仕事を探していた。みちは星野にもう一度お笑いでひと花咲かせてほしいと仕事探しを止めさせ、みちの家で養うと提案する。ここに“推したい女”と“逃げ出せない男”が生まれたのだった。

死にそうだったみちは、星野の世話(推し活)によって元気を取り戻していった。だが、星野は三食付き、ゲーム、ネットし放題の生活に堕落してネタが書けない。「こんなんじゃダメだ」と、星野はせめてアルバイトをして家にお金を入れようとするが、求人誌もデリバリー用のリュックも捨てられてしまう。みちは星野にお笑い芸人でいてもらわないと推し活ができない、推し活をしないと精神を保っていられないと、星野を縛っていた……。そしてついに、みちは星野の代わりにネタを考えるまでに。すると、そのネタがお笑いライブで大喝采。テレビ番組に誘われるようになった。

 それがきっかけで星野はお笑いで自立してしまう。お笑いでの自立に、何も言えないみち。そのとき、推し活ではなく、星野自身に依存していたことに気づく。

しかし、案の定、他人が考えたネタでの活躍は長くは続かず、星野はすぐに挫折。ついに芸人引退を決意する。みちはここぞとばかり、星野にまた家に来てほしいと提案するが、「僕はあなたの娯楽じゃない」と拒否される。そのとき、みちは星野の“辞める勇気”を感じた。実は、みちは中卒で学歴詐称して入社したため、怖くて会社を辞められなかったのだ。しかし、星野の姿を見て、自分もやっと辞める勇気を持つことができた。

そして、やっと無職になった女と夢を諦めた男は新たに出会い直し、一方的な推し活ではなくお互いを支えあう存在へと進みたいと願うのであった。

優秀賞受賞作

■タイトル『令和にお見合いしてみたら』
作者名:田中徳恵(たなか・のりえ)
<内容>
タイパ重視の栗原まどか(26)は、20代のうちにキャリアを身につけ、結婚し出産する計画を立て、最もタイパのいい婚活として見合い結婚を選択する。婚活アプリと違い、見合い相手も保証され、親の審査も通過した男性ばかり。まどかさえ気に入れば即、結婚が決まる……はずだった。

最初の見合い相手の星川健太郎(29)を気に入ったまどかだが、健太郎に断られてしまう。納得いかないまどかだが、気を取り直して次の見合い相手、椎名(27)と会う。条件は満たしている椎名だが、まどかはどこか気乗りしない。つい健太郎に会いに行ってしまったまどかは自分の何がいけなかったのかを尋ねる。健太郎はまどかに非はなく、まどかを幸せにする自信がないだけだという。まどかは、幸せにしてもらうつもりはない、ただ私の幸せを邪魔しない相手と結婚したいのだと健太郎を叱咤する。

 椎名との結婚を進めることにしたまどか。両家の顔合わせや、式場予約など結婚に向かって一気に話が進み始める。仕事が忙しいまどかの代わりに、両親が張り切っていた。祖父に結婚の報告に行ったまどかは、祖母が見合い結婚した亡き祖父の話を聞きながら、なぜか健太郎のことを思い出してしまう。

プライダルエステに行った帰りに、偶然、健太郎に会ったまどかは、結婚が決まったと伝える。話が弾んだあと、まどかは健太郎から思いがけないことを打ち明けられる。

そんな中、まどかは取引先の本部長に、現場レベルで何度も検討を重ねた企画書を覆されて抗議する。しかし、本部長の話を聞いたまどかは、健太郎に自分の想いをぶつけにいくことに……。条件がそろっていようが、周囲が期待しようが、まどかが結婚したいのは椎名ではなく健太郎だと気がついたのだ。まどかは椎名との結婚を断り、健太郎と結婚することにする。もちろんタイパ重視で……。

優秀賞受賞作

■タイトル『レンタルくず』
作者名:奈良さわ(なら・さわ)
<内容>
鏡日菜子は元カレ・西島瞬のことが忘れられず、つい男を西島と比べてしまう癖がある。また、西島と交際していたときに味わった女たちからの嫉妬と嫌悪の視線への優越感が忘れられずにいた。親友の定岡美月はそんな日菜子に“レンタルくず”を勧め、クズと付き合うことでいかに普通の恋愛が尊いかを知るべきだと論す。

日菜子がお試しでレンタルくずに申し込むと、バンドマンのユウキが即座に派遣される。自由気ままなユウキに振り回され、レンタルは一日だけでいいと思う日菜子。だが、ユウキがライブで「日菜子のために歌った」と発言したことでファンらの嫉妬の視線を浴び、昔の感覚がよみがえる。気分が高揚した日菜子はユウキのレンタル延長を決める。クズなユウキに手を焼くが、ふとしたときにキュンとさせるユウキを憎めない。美月はそれを「クズの手口だ」と注意するが、日菜子はクズの魅力にハマッていく。

そんなとき、突如西島が現れ、日菜子は運命を感じてしまう。西島に「公私共にパートナーになってほしい」と言われ有頂天。ユウキの顔がちらつくも、やはり自分には西島が最適だと確信する。ところが急遽、金を貸してほしいと西島に頼まれ、現金を渡しに向かうと、ユウキが現れ阻止。美月も西島の裏の顔を暴露する。そして、ユウキをバカにした西島の態度に怒り心頭となった日菜子は、思わず西島を殴ってしまう。爽快な気持ちで帰路につくと突然、アラーム音が鳴り、ユウキのレンタル終了が告げられる。延長を申し出るも、ユウキはその日以来、姿を消してしまう。実は、ユウキ自身も楽曲制作のためにプロデューサー・小坂真治にレンタルくずをやらされていたのだった。ユウキは日菜子を傷つけたことから、小坂の元を離れる。