TVerが描くテレビの開放と未来 〜Advertising Week Asia 2024キーノートレポート
編集部
左から)株式会社TVer 常務取締役COO 蜷川新治郎氏、株式会社電通デジタル 執行役員 池田純一氏
今年で9回目を迎える広告・マーケティング業界向けカンファレンス「Advertising Week Asia」が2024年9月17〜20日、東京アメリカンクラブで開催。今後のライブ体験、ヒューマンインタラクションを主軸にさまざまなセッションが行われた。
本記事では、9月19日開催のキーノート「TVerが描くテレビの開放と未来」をレポート。株式会社電通デジタル 執行役員 池田純一氏と株式会社TVer 常務取締役COO 蜷川新治郎氏が登壇し、TVerに関する最新トピックスと未来を語った。
「Advertising Week Asia 2024」>https://asia2024advertisingweek.com/
■名実ともに「テレビ媒体」として扱われ出したCTV 認知効果は「スマホ以上」
まず蜷川氏が、TVerの現状について紹介。2024年8月時点でMUB(月間ユニークブラウザ数)は4,100万に達し、月間再生数も4.9億回を突破。アプリの累計ダウンロード数も7,800万を超えるなど、右肩上がりの成長が続いている。
2023、2024年度はテレビデバイスへのインストール拡大やリモコンへの専用ボタン搭載など、コネクテッドTVへの対応を強化。サービス全体におけるコネクテッドTV経由での視聴割合は33.4%と拡大した。(※8月の時点で36%)
平均視聴人数は1.7人となり、共視聴の傾向がより鮮明に。今夏のパリ2024オリンピックをはじめとするスポーツコンテンツについて、TVerのコネクテッドTV向けアプリでもリアルタイム視聴に対応するなど、提供される視聴体験は、リビングルームデバイスとしての一テレビに近いものとなった。
「TVerはユーザー構成が特定の階層やエリアに偏らず、まんべんなく網羅されている」と池田氏。「わたしたちの立場として、ブランドセーフティーの面から見ても有力な動画配信プラットフォーマーの1つであることは揺るぎない」と述べ、広告媒体としてのコネクテッドTV環境にフォーカスした分析レポートを紹介する。
「ながら見になりがちな地上波に対して、コネクテッドTVは『特定の番組を見たい』という視聴者の目的意識が強く、見たいコンテンツを自ら選ぶことで専念視聴比率がとても高い。視聴専念度で見ると、コネクテッドTVは地上波の約1.8倍のスコアを示すケースが見られた」(池田氏)
「共視聴の傾向も強く、企業側が伝えたいメッセージを盛り込めば、それが画面の前にいる“家族ごと”となりやすい」と池田氏。「ブランドによっては高いコミュニケーション効果が期待できる良質な環境だ」と語る。
続いて池田氏は、大きく2つに整理したコネクテッドTVの効果について解説。コネクテッドTV環境では、ブランドを記憶、認知し続ける「ストック効果」と、メッセージに触発され、検索や購買などの行動を起こす「フロー効果」を持ち合わせているとした。
「大型画面であるテレビデバイスから受ける動画広告のインパクトは大きい。特に名前の覚えやすさにおいては、小型画面のスマートデバイスと比較して4〜5倍ほどの差があるというデータも出ている」と池田氏。
「テレビデバイスにおいては広告出稿後、ブランドに対しての検索数がスパイクするような事例が見られるが、コネクテッドTVも同様にその効果が期待できる」という。
「これまでは広告予算が『地上波テレビ』と『デジタル配信』、さらにデジタル配信でも『コネクテッドTV』と『スマートデバイス』というように枝分かれして配分されていたが、最近はデバイス単位ではなく『テレビ面』という大枠でくくり、そこからコネクテッドTVへと配分するプランニングが増えてきている」(池田氏)
広告主サイドからは名実ともに「テレビ媒体」として出したコネクテッドTV。蜷川氏は「みなさんに同じものを見ていただく性質のコンテンツ」としてスポーツコンテンツの充実に力を入れていると語る。
これまでの『gorin.jp』に代わりTVer単独配信となったパリオリンピックでは、民放地上波同時配信や、地上波では中継されない競技の配信を実施。TVerのコネクテッドTV向けアプリでも一部競技のライブ配信に踏み切った。
「パリオリンピック期間中、関連配信の総再生数は1億1000万再生を突破した」と蜷川氏。「日本シリーズや高校サッカーなどのスポーツコンテンツも配信させていただけるので、より多くの方にTVerを観ていただき、マーケティングの機会として活用いただきやすくなった」と強調した。
■メディアとしてのTVer、進化の鍵は「ブランドリフト価値の可視化」
後半は2つのテーマに分けて、池田氏と蜷川氏がディスカッションした。
1つ目のテーマは、「TVerの広告メディアとしての可能性」。
池田氏はTVerの取り組みについて、「ユーザーが求めているものに抗うことなく適応し、進化を続けた結果、今の状態がある」と高く評価したうえで、「ユーザーの変化に応じて広告主様がどういうことをメディアとして求めるか、耳を傾けたうえで対応することが肝要」と提言する。
「今年8月時点で4,000万MUBを突破した話がありましたが、こうした足場をきちんと固め、着実に伸ばしていくことに大きな伸びしろを感じる。効果に対しての説明責任をきちんと果たせるようになると、さらに可能性が大きく広がるのではないか」(池田氏)
「TVerはデジタルサービスである以上、データをきちんと確保し、効果をきちんと明示できるよう進歩していかなければならないと考えている」と蜷川氏。
「TVerの強みである『広告媒体としての健全性』は現状、なかなか数字で表しづらい部分」としつつ、「ブランド毀損リスクの低さをはじめ、CVRやCTR、リーチ計測など、これまでテレビでは測定できないとされてきた効果を明示化できるようにし、メディアとしての価値をきちんと示せるよう進化していきたい」
これを受けて池田氏は「リーチ計測に留まらず、様々な効果がTVerでは徐々に見える化してきている」とコメント。蜷川氏の口からも具体的な展望が挙がった。
「TVerの大きな魅力は、コンテンツ好きの方たちがとても楽しんでいるプラットフォームであるということ。普通の広告に比べてTVerでのコンテンツ連動広告はこれぐらいのブランドリフト効果がある、ということが可視化されていくと、取り組みやすくなっていくのではないか 」(池田氏)
「テレビは媒体として、コンテンツとメディアサービスの両方を長年担ってきたが、今後はここから一段階進化し、広告主様のメッセージに寄り添ったコンテンツ開発を志向する形で制作部門との連携を進めても良いのではないかと考えている。広告クリエイティブ開発に特化した部門を作ってもよいと思う」(蜷川氏)
■未来への近道は「既存のコンテンツに磨きをかけ、生活者の求める視聴体験を作ること」
2つ目のテーマ「TVerは社会インフラになれるか」では、TVerのリアルタイム配信における新たなニーズを発端に、豊富なテレビコンテンツを活かした新たな広告の形が語られた。
「やはりメディアとしては、楽しい側面がないと身近な存在になりにくい。ドラマやバラエティ、スポーツなどのコンテンツが増えていくと、生活者の求めるメディアにより近づいていくし、新しい体験の場として事業会社も使っていきたいと思える多様なクリエイティブを模索できる気がする」(池田氏)
「災害や重大事件における報道特番の同時配信など、リアルタイム配信の持つ役割も変わってきた。これまではキャッチアップの要素が主にクローズアップされてきたが、今後はFAST(リニア編成型配信)的な情報インフラとしての側面もアピールしていきたい」(蜷川氏)
「例えば、野球中継で選手がホームランを打った際、直後のCMにリアルタイムな試合展開を盛り込めたら面白い。元々コンテンツ好きの人たちが集まるメディアなので、シームレスなコミュニケーションのタイミングが実現できると面白そう」(池田氏)
「これからAIなどが発達すれば、試合展開を解析して、ホームランを打った瞬間にスペシャルな広告を自動挿入する展開もできるかもしれない。安心安全をキープしつつ、広告の出し分けができるインターネットならではの技術を使って実験していけたら」(蜷川氏)
ここまでのディスカッションを振り返り、池田氏は「4,000万MUBを達成したTVerだが、まだまだこれからの伸びしろのほうが大きいと思う」とコメント。蜷川氏も「テレビコンテンツはどこでも見られるからこそ意味がある、TVerはその一番大きな窓口としてありたい」と思いを述べた。
「わたしたちの尽力はもちろんとして、新しい取り組みに挑戦していくためには事業会社様のご協力があってこそ」と池田氏。「この新しい取り組みに賛同していただける事業会社様は、ぜひお声がけをいただければ」と呼びかけ、キーノートを締めくくった。
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