MIPCOM2023 会場の様子

08 OCT

ABEMA、吉本興業も参戦する世界最大級TVマーケット 【MIPCOMカンヌ2024事前レポート】

編集部 2024/10/8 08:00

今年で40周年を迎える世界最大級のTVコンテンツ国際取引マーケット「MIPCOMカンヌ」(主催:RX)の開催日が迫る。テレビ業界の最先端トレンドが集結する場に、例年通り100か国以上から1万1000人の参加が見込まれる。国を挙げてコンテンツの海外輸出を促進するスペインが今回、主賓国を務めることが決まり、非英語コンテンツの流通のさらなる底上げに期待が高まる。海外へ売り込む日本のドラマやバラエティ、アニメ番組のプロモーション企画も多数行われる予定だ。

■キッズ特化「IPガーデン」セッションも充実

フランス・カンヌ市現地で開催される「MIPCOMカンヌ2024」は恒例のプレイベントから始まる。MIPCOM直前の週末にあたる10月18日(金)からJWマリオットを会場にキッズ専門マーケット「MIP JUNIOR」が企画され、20日(日)までの3日間、キッズコンテンツの世界向けプロモーションやスクリーニング、ネットワークの場が提供される。

キッズ向けコンテンツビジネスに特化したセッションも売りにある。今年のキーノートはアメリカを代表する玩具メーカー、マテル社のチーフ・フランチャイズ・オフィサーのJosh Silverman氏と、「レディバグ」シリーズのミラキュラス社現CEOで、Netflix のキッズコンテンツ部門を創設した実績を持つAndy Yeatman氏の登壇が予定される。

マルチプラットフォームを駆使したファンダム形成がキッズコンテンツ成功の鍵となるなか、「IPガーデン」と題したセッションカテゴリーも注目したい。YouTubeを活用したブランディング戦略や共同製作事例が語られる。

週明けから始まる「MIPCOMカンヌ2024」の前夜、10月20日(日)には『シャーロック・ホームズ』のジョン・ワトソンを主人公にした米CBS制作の医療ドラマシリーズ『Watson』のワールドプレミア上映が企画される。成功キャラクターIP「ワトソン」の新展開として興味を引く。主演のモリス・チェストナットが来場し、CBSスタジオ所属のショーランナーCraig Sweeny氏とパラマウント・グローバル・コンテンツ・ディストリビューション部門プレジデントのLisa Kramer氏と共にトークセッションも行われる。

■政府プロジェクト推進するスペインが主賓国に

本編となる「MIPCOMカンヌ2024」は10月21日(月)から24日(木)までの4日間にわたり開催される。10月1日現在、320社以上の出展が見込まれ、参加者数は100か国から1万1000人、内バイヤーは3500人が参加する予定だ。

過去に日本も務めたことのあるMIPCOM主賓国は今年、スペインがその役割を担う。スペイン貿易投資庁(ICEX)主導の「Audiovisual from Spain」プロモーションとして展開され、その背景にはスペイン政府が掲げる「ヨーロッパの映像産業ハブ国スペイン」プロジェクトの推進がある。2025年までに計16億ユーロ(約2570億円)を映像業界に投入し、スペインコンテンツ生産量30%増を目指す計画の中で行われる。

初日のキーノートは、ソニー・ピクチャーズ・エンターテインメント会長兼CEOのTony Vinciquerra氏(来年1月2日付で退任を発表、2025年12月末まで非業務執行の会長として継続)をはじめ、ワーナー・ブラザース・テレビジョン・グループ会長兼CEOのChanning Dungey氏、イギリス最大の制作会社All3メディアCEOのJane Turton氏など業界のリーダーが続々と登壇。また業界ご意見番として著名なメディアカルトグラファーEvan Shapiro氏の講演も注目だ。

米大統領選挙の11月投票日を前にタイムリーな話題も用意される。ドナルド・トランプ前米大統領が脚光を浴びるきっかけとなったリアリティー番組『アプレンティス』の裏側に迫った「Apprentice in Wonderland(不思議の国のアプレンティス)」の著者で、米バラエティ編集長ラミン・セトゥーデ氏の講演が23日(水)に予定されている。

業界トレンドセッションとして「AI」や「グローバルFAST&AVOD」「コネクテッドTV」をテーマにしたサミット企画からMIP人気プログラム「Fresh TV」などリサーチ会社による分析発表まで揃う。

■日本発ドラマからバラエティ、アニメまで

8回目の開催となる業界唯一の賞「ダイバーシティTVアワード」の授賞式もMIPCOMカンヌにおける注目のプログラムの1つにある。今年は29カ国から応募があり、ノミネートされた11カ国の中には、マレーシアからの初ノミネートも含まれる。障がい表現部門ではNHKドラマ『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』がファイナリストに選ばれ、日本からは唯一のノミネートを今年も果たしている。

日本がフォーカスされる場は多数ある。国際ドラマフェスティバル in TOKYO 実行委員会が主催する恒例の「MIPCOM BUYERS’AWARD for Japanese Dram」受賞式が21日(月)朝8時から会場の「ホテルマジェスティック」で開催。民放連会長 遠藤龍之介氏(フジテレビ副会長)の挨拶が予定される。

ノミネートされた9作品【『舟を編む』(NHK)、『最高の教師』(日本テレビ)、『Destiny』(テレビ朝日)、『不適切にもほどがある!』(TBSテレビ)、『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』(テレビ東京)、『海のはじまり』(フジテレビ)、『たとえあなたを忘れても』(朝日放送テレビ)、『アンメット』(カンテレ)、『ブラックファミリア』(読売テレビ)】からグランプリおよび奨励賞が当日発表される。

「MIPCOM BUYERS’AWARD for Japanese Dram」受賞式

日本のバラエティ番組フォーマットのプロモーションイベント「TREASURE BOX JAPAN」(トレジャー・ボックス・ジャパン)は一般社団法人放送コンテンツ海外展開促進機構(BEAJ)主催、総務省の後援で開催される。21日(月)16時からMIPCOM会場内「Hi5 Studio」で日本テレビ、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビ、読売テレビ、朝日放送テレビ、カンテレ、NEPの全9社が新作の番組フォーマットを発表する機会を得る。

「TREASURE BOX JAPAN」

今回初の試みとして「Hi5 Studio」ルーム前が日本企業とのネットワーキングの場として開放されることも決まった。JETROと国際ドラマフェスティバル in TOKYO 実行委員会の共催により21日(月)限定で企画される。

日本発単独セッションも充実する。テレビ朝日のアニメ『おぼっちゃまくん』インドプロジェクト完成披露会や「グローバルFAST&AVOD」キックオフ特別講演としてABEMAによるプレゼンテーション、東映アニメーションらが登壇するアニメビジネスセッションが予定されている。

さらに、目玉のキーノート「Master Mind Keynote」として、Amazon MGMスタジオのインターナショナル・オリジナル責任者ジェームズ・ファレル氏と吉本興業ホールディングス社長の岡本昭彦氏が登壇するセッションが21日(月)10時20分からグランド・オーディトリアムで予定する。

主催するRXフランスの日本・中東・東南アジア担当Pascale Lallemand氏は「日本のコンテンツは国際流通する可能性が広がっている。世界中から参加する3500人のバイヤーと繋がる機会にもなり、日本にとっては欧米をはじめ世界の潮流を把握する場になる」と話す。

RXフランスのPascale Lallemand氏

コンテンツ取引からネットワーキングまで、新たな鉱脈を探ろうと今年のMIPCOMカンヌも盛り上がりを見せそうだ。現地の模様は後日、レポートする。

【MIPCOMカンヌ2023速報レポート】来場数3年連続増加の世界最大級TVコンテンツマーケット、「国際コープロ」「配信ビジネス」活況期

【MIPCOMカンヌ2023プレ特集①】業界トレンドにある今年のMIP注目シリーズ「FAST」とは何か

【MIPCOMカンヌ2023プレ特集②】日本の注目ドラマ、バラエティをカンヌで今年もプロモーション