博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 所長の田代奈美氏
コネクテッド時代のメディア行動「平要快熱」 〜メディア環境研究所プレミアムフォーラム (前編)
編集部 2024/11/6 08:00
2024年8月27日、大手町三井ホールにて、博報堂DYディアパートナーズ メディア環境研究所プレミアムフォーラム「コネクテッド時代のメディア選択『平要快熱』」が開催。希望するコンテンツを最適なデバイス、プラットフォームで自由に見聞きできるようになった現在の生活者のメディア行動を、「平要快熱」4つの選択軸で解き明かした。
本記事では、フォーラム前半に行われた「メディア定点2024」調査報告の模様をレポート。生活者のメディア接触やイメージの変遷について、同研究所 所長の田代奈美氏が解説した。
■メディア総接触時間は微減も「依然高止まり」
2024年の調査における生活者のメディア総接触時間は432.7分。昨年の443.5分からわずかに減少したものの、「依然としてコロナ禍からの高止まりが続いている」と田代氏は言う。
テレビと携帯/スマホの接触時間の差は、昨年の16.2分から39.2分と拡大。メディア総接触時間の構成比は、携帯/スマホが37.4%、パソコンとタブレット端末を加えたデジタルメディアのシェアは初めて6割を超えた。
性年代別に見たメディア総接触時間では20代男性がもっとも長く、530分強。10代・20代の男女、30代女性における携帯/スマホ接触時間がそれぞれ200分を超えるなか、テレビの接触時間は60代女性がもっとも長く、200分を超えた。
性年代別のメディア総接触時間の構成比では、デジタルメディアのシェアが10代・20代で高く、男性が8割超え、女性が7割超えと、若年層の大半がデジタル中心のメディア生活を送っている実態が明らかとなった。
■テレビの“インターネット化”が一層進む
配信サービスの利用は各サービスともに右肩上がりに推移。特にTVerは昨年から今年にかけて成長がさらに加速し、5割を超えた。
「『テレビを見る』ということの捉え方が変化してきているとともに、『テレビのインターネット化』が一層進んでいる」と田代氏。「テレビを見る時間」として想起するサービスをたずねた設問では、見逃し配信・有料動画・無料動画ともに3割を超え、このうち、見逃し配信の割合が無料動画をわずかに追い抜いた。
■スマホの各サービス利用率は過去最高 テレビ・ラジオコンテンツ利用も3割超え
続いて田代氏は、携帯/スマホにおけるメディア行動を紹介。
携帯/スマホにおける多くのサービスの利用率が過去最高に達し、接触するサービスも多様化。テレビ・ラジオコンテンツのコンテンツ利用率も3割を超えた。
メディア意識を調査した64項目の中から、スマホを介する行動の変化についてたずねた質問では、「チケットの購入はスマートフォンのアプリで行うことが増えた」「店舗の予約はスマートフォンのアプリで行うことが増えた」という回答が上位2つを占めた。
情報行動における志向では、「好きな情報やコンテンツは好きな時に見たい」「好きな情報やコンテンツはいろいろな場所で見たい」という回答が上位に。「『好きな情報を、好きな時に好きな場所で見たい』という欲求の表出が、過去最高を更新した」と田代氏は語る。
「情報に対する意識の高まりも過去最高になった」と田代氏。「インターネットの情報はうのみにできない」「情報は伝える速さよりも内容の確かさだと思う」「気になるニュースは複数の情報源で確かめる」といった回答が上位を占め、いずれも7割超えの高水準となった。
■一日のスクリーン利用時間は13時間27分
最後に田代氏は、「スクリーン利用実態調査2024」の結果を紹介した。同調査では、メディア環境を4つのスクリーン、13のサービスのマトリクスで分析。8400人を対象とするオンライン調査で、それぞれの接触時間をたずねた。
すべてのスクリーンを合計した接触時間は13時間27分。1日の半分を超える水準に達した。スクリーン別の結果では、スマホが274.3分、テレビが249.2分。すべてのスクリーンを合計した各サービスの接触時間は「テレビのリアルタイム視聴」がもっとも長く、続いて「横型の無料動画」「インターネット」が並ぶ結果となった。
一方、スクリーンごとの各サービスの接触時間では「テレビデバイスで音声配信サービスを楽しむ」など、デバイスの枠を超えたメディア体験の多様化が浮き彫りに。「サービス軸で切っても、生活者はいろいろなスクリーンを介して接触している」と田代氏は述べ、「コンテンツのタッチポイントの多接点化が進んでいる」とした。
「メディアのデジタル化とコネクテッド化(ネット接続)が進み、スクリーンや時間、場所を超えてさまざまコンテンツに接触する行動が多様化している」と田代氏。生活者のメディア接触の実態を把握するにあたり、「定量調査とインタビューからメディア接触の動機となる(気分やニーズなどの)『モード』を解明し、新しいコミュニケーションの可能性を探っていきたい」とした。
後編では、フォーラム後半に行われたキーノート「コネクテッド時代のメディア選択『平要快熱』」の模様をレポート。博報堂DYディアパートナーズ メディア環境研究所 グループマネージャー 兼 上席研究員の山本泰士氏、同上席研究員の森永真弓氏、野田絵美氏が登壇し、「平要快熱」の欲求と行動原理、これらからなる最新のメディア生態系を解説する。