株式会社TVer 取締役・須賀久彌氏

16 JUL

成長加速のTVer、取締役が語る広告価値アップの背景 〜Interop Tokyo 2024 レポート

編集部 2024/7/16 08:00

2024年6月12日から14日にかけて、千葉・幕張メッセでインターネットテクノロジーのイベント『Interop Tokyo 2024』が開催。14日には株式会社TVer 取締役・須賀久彌氏によるセッション「TVerの現在とこれから」が行われた。

今年1月に月間ユーザー数が歴代最高の3500万MUBを突破し、3月には月間再生数も歴代最高となる4.5億回を突破するなど、右肩上がりの成長と進化を続けるTVer。このセッションでは2024年度の注力ポイントを中心に、リリース予定の新機能など今後の見通しが語られた。

■成長スピードは4年間で5倍に急伸。ラインアップ拡充で若年層の利用が増加傾向

現在TVerでは常時800番組、1日あたり100本以上が新たに配信されており、ローカル局のレギュラー番組の配信も78局145番組とラインアップが充実。ユーザー数、再生数の成長率はこの4年間で約5倍と、成長スピードを加速させ続けている。

利用者の構成比は日本の人口とほぼ同じバランスを保ちつつ、「スポーツやバラエティの充実によって最近は10代の若年層や男性の比率が増え、男女比は半々からやや男性が多いくらい」(須賀氏)という。

機能面では、コネクテッドTVにおけるTVer ID連携サービス「TVerリンク」において、これまで各局個別であった設定を民放キー5局一括で行えるようアップデート。ユーザーはテレビを通じたプレゼント企画への応募やポイント獲得がよりスムーズとなり、放送局側はTVerと放送をまたいで活用可能なユーザーデータを取得できるメリットが高まった。

「『TVerリンク』では、テレビ(放送)の視聴データとTVer(配信)のデータを、個々のユーザーが持つTVer IDで紐づけることができる」と須賀氏。「TVerでどのような動画を視聴して、放送ではどのような番組を視聴しているのか、ユーザー単位で捕捉することによって、おすすめの最適化や放送ビジネスの価値向上に活かしていきたい」とし、「TVer IDが放送業界とユーザーの間を繋ぐものになっていけたら」と展望を語る。

■TVer広告の成長がさらに加速、「セルフサーブ機能」開始で出稿数、金額ともに急増

続いて須賀氏はTVer広告の現状について紹介。YoY(昨対比)では売上が149%、キャンペーン数が132%と高い水準で成長を続けており、取引広告主数、広告会社数についてはそれぞれ174%、168%とさらに増加ペースが上がっていると語る。

TVer広告について「1stパーティーデータとブランドセーフティについて特に評価をいただいている」と須賀氏。「TVerの初回起動時に入力いただく性別、年齢、郵便番号などの情報は非常に精度が高く、ターゲティング時のデモグラとして活用いただいている」とし、「広告が流れる先は放送コンテンツのみであるという点はもちろん、広告素材も全て放送と同じ基準の業態審査、広告素材の審査を行っている」と話す。

「インターネット広告の安全問題が取り沙汰される中、広告主の方からは『怪しい広告の隣に自社の広告が流れるのは避けたい』という声が聞かれるが、TVerとしては出稿いただく両隣枠の広告についてもきちんと安全を担保してサービスさせていただいている。こうした点が評価され、現在は官公庁や大学などからも非常に多くの出稿をいただいている」(須賀氏)

須賀氏は媒体としてのTVerが持つリーチ力についても触れ、「テレビよりも若年層の視聴が多いという傾向にも一つの価値を見出していただけている」とコメント。「テレビCMとの並行出稿による重複接触で高いブランドリフト効果が出ており、ローカルスポンサーからの出稿も増えている」とアピールする。

昨年よりスタートした『セルフサーブ機能』では、広告主様がセルフで枠の選定から発注、出稿までを行うことが可能。「急激な勢いでご利用件数、出稿金額ともに増えている」と須賀氏は語る。

現在はIDグラフの活用により、コネクテッドTVでの広告配信後にスマートデバイスでのサーベイを行うクロスデバイスフリークエンシーにも対応しているほか、TVerの保有するデータとユーザーアンケート機能『TVer Survey』によるブランドリフト測定を組み合わせたレポーティングも近日中に予定していると語る。

「TVer IDを活用することによって、ざっくりとした肌感の調査ではなく、出稿いただいた広告に対してさまざまな効果をしっかりご確認いただける仕組みが揃ってきた」(須賀氏)

■全体再生の3割超がコネクテッドTV経由。「“共視聴”習慣は大きな広告価値」

TVerが2023年に取り組んできた注力分野として、須賀氏はコネクテッドTVへの対応とコンテンツの強化を挙げる。2019年の対応開始から約5年を経て対応テレビデバイスは大幅に増加。「世の中で(新たに)売られるテレビのほとんどがTVerに対応している」という状況まで浸透し、リモコンへの「TVerボタン」搭載も進んでいると語る。

「リモコンへのボタン搭載によって、『このテレビはTVerをすぐ楽しめる』ということをユーザーの方々に認識していただける。アプリの一覧から探すことなくワンタッチでTVerへアクセスできるようになったことで、既存ユーザーの再生回数も増加した」(須賀氏)

「配信を視聴する時間が増えているなか、配信で放送コンテンツを見る時間の総量をどうやって増やしていくかが使命」と須賀氏は話し、放送受信機能を持たないチューナーレステレビの普及率が10%に及んでいるという総務省のデータを紹介。「放送を見ない、と決めてしまった人たちのもとへどうやって放送コンテンツを届けるかを考える必要がある」と危機感を見せる。

その一方で、TVerにおけるコネクテッドTVの再生比率が全体の33.4%に伸長。須賀氏は「広告価値の面では非常に大きな意味がある」と強調する。

「スマートデバイスと異なり、テレビデバイスの場合は複数人が集まっての“共視聴”習慣がある。コネクテッドTVにおけるTVerの平均視聴人数は 1台あたり平均1.7人というデータが出ており、『テレビの前にはいまも多くの人がいる』とアピールできる材料になっている」(須賀氏)

今年1月には、アメリカのテクノロジー企業・Xperi社がBMWの車載エンターテイメント端末に動画配信のシステムを提供すると発表。対応予定のサービスとしてTVerも名を連ねており、「コネクテッドTVに加え、これからは自動車にも放送コンテンツを届けていくことになるだろう」と語る。

コンテンツ面ではドラマが高い人気を得ており、1〜4話の配信が視聴者への導線作りに大きく寄与。アニメもバラエティと並んで「第3の柱」へと成長しているという。リアルタイム配信では、報道特番も含めたニュース番組の配信、「すぽると! on TVer」などコネクテッドTVに対応したオリジナル番組の配信がスタート。サウナやキャンプなど、趣味カテゴリごとに各局の番組を揃えた特集企画も人気であるとした。

■パリ五輪の“ほぼ全競技”をTVerで配信。コネクテッドTVでもリアルタイム視聴可能

最後に須賀氏は2024年の注力トピックを紹介。目玉となったのは、TVer単独でのパリオリンピック競技配信だ。

日本では2008年から2022年の大会までNHKと民放の共同サイト「gorin.jp」によるインターネット配信が行われてきたが、今大会からTVer単独での配信に移行。開催されるほぼすべての競技がライブ中継され、コネクテッドTVでもリアルタイム視聴が可能となる。

「テレビでは放送されない種目も含め、非常に多くの競技を同時中継する」と須賀氏。フランスと日本には7時間の時差があることを踏まえ、オンデマンドでのハイライト配信にも力を入れていくという。

「真夜中のリアルタイム中継を見逃してしまい、日本が金メダルを取っていたことを朝起きてから知る、というケースもあるかもしれない。そのような場合も、何度でも後からその瞬間を見られるハイライト動画を朝までに公開するので、どなたもしっかりと競技の模様をご覧いただくことができる」(須賀氏)

さらに須賀氏は今年の注力領域として、カテゴリごとの番組インデックスへ到達できる新機能「カテゴリ機能」や、新たなユーザー獲得に向けたマーケティングキャンペーン施策について紹介。

「TVerが無料で利用できる、ということを知らない方も実はまだ結構多い」といい、大規模イベントや商業施設での広報キャンペーンにも積極的に取り組んでいくとした。

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