26 JAN

スマートフォンで撮影、地上波放送後にTVerで配信…テレQが初めて挑むドラマ制作の“突破口”とは

編集部 2024/1/26 08:00

福岡県のテレビ局「TVQ九州放送」が、新たな試みとして、初めてドラマ制作に着手。わちみなみ主演のオリジナルドラマ『花の筋曜日~マッスルハンターみなみ~』を、1月27日(土)深夜1時より同局にて放送する(放送後、TVer、YouTubeで配信も決定)。

そんな本作の準備と撮影方法には、ユニークなアイデアが詰まっているという。限られた予算と時間のなかで、どのようにしてドラマ制作を行ったのか。放送後の展開は? テレQのチャレンジに迫るべく、プロデューサーの徳田正諭氏に話を聞いた。

主演を務める福岡県出身のわちみなみさん

――オリジナルドラマ制作に至った経緯を教えてください。

配信プラットフォームを含めて、コンテンツを楽しむ手段は放送に限らず、様々な選択が可能な時代に突入しています。その中で「多くの方に視聴してもらえるコンテンツは何か?」と考えた時に、ドラマが選択肢の一つだと考えました。

今回のプロジェクトは、初のドラマ制作ということもあり、我々にとっては何もかもが初めて尽くし。「まずは自分たちで作ってみないことには、何が今後必要で、何が大変なのかも分からない」ということから、まずは単発からになりますが、ドラマを作ることになりました。

――徳田さんはプロデューサーというお立場ですが、どんな業務をされたのでしょうか?

予算管理のほか、プロデュース業務はやりつつ、チームで脚本づくりにも挑戦しました。プロの脚本家さんにご依頼するのが通例ですが、熱量を持った人たちとディスカッションをしながら作り上げていこう、と思いました。やり始めると結構楽しくて、プロの脚本家さんがいかに凄いのかを痛感しました。

――ドラマのテーマは「筋トレ」です。このジャンルに目をつけたのは、なぜでしょうか?

まず、撮影の運用的に、天候に左右されないシチュエーションが必要でした。今回、撮影は福岡での2日間。東京で活動するわちさんたちをお連れするので、限られた時間の中で屋内の施設で撮れるもの、限りなくワンシチュエーションで撮れるものなどを考えたときに「トレーニングジムがあるよね」という話になりました。

劇中、わちさんも本格的なトレーニングに挑みます

もうひとつは「社会的な広がり」です。「健康」は老若男女問わず、関心があるジャンルです。筋トレとなると狭まるかもしれませんが、ジムには、パーソナルジムもあれば、ガチ勢が通うジムもある。最近では、手軽に通えるジムも増えました。非常に多様化が進んでいますよね。自分なりに調べると、日本人のフィットネス人口って欧米に比べるとまだまだ割合が低いジャンルだそうです。まだまだ伸びるジャンルでもある、と思ったのも大きいです。

――昨年の11月には、厚生労働省が、健康づくりのためのガイドラインを発表し、筋トレの有用性についても触れていましたよね。

ちょうど企画が動き出している最中に発表されたので、驚きました。それで興味を持っていただける方もいるのかなと思います。ご覧になる方の意識づけにもなれたらいいですし、現に、周りの同僚やスタッフの中に、筋トレを始めた人間が急増しました(笑)。

――脚本づくりでこだわった点を教えてください。

今回、撮影にご協力いただいた福岡のトレーニングジムのトレーナーさんに、いろいろとアドバイスをいただきました。ドラマの中でも、時折ブレイクのかたちでトレーニングの解説を挟んでいます。

わちさん演じるみなみは「筋肉フェチ」というキャラクター

あと、ジムに通われている方の中には、自分と向き合いつつも、他の利用者の筋肉が気になっている方もいると思うんです。ドラマでは、わちさん演じるみなみが、脳内で「あの人の筋肉すごい!」と、感情豊かに表現するシーンがありますが、普段はおとなしい奥手な女子が、じつは妄想が激しくて……という筋肉フェチ全開のキャラクターに仕上げました。

――脚本づくりにおいて、参考にした作品はあるんですか?

「こういう作品を目指したい」と思ったのは、テレビ東京のドラマ『モテキ』ですね。あの作品も、森山未來さん演じる藤本幸世のモノローグ(心の声)が多いですが、自分の中で、わちさんを森山さんに置き換えて作りました。

――予算内、時間内におさめるために、撮影で工夫をしたところを教えてください。

狭い空間でもフットワーク軽く動ける利点があるということで、全ての映像をスマートフォンで撮影することにトライしました。編集も見ましたが、全く遜色がないなと思いました。

制作スタッフも日ごろから一緒にやっているチームなので、何でも意見をぶつけて即断できる体制で制作できたことが良かったと思います。

――地元の方のご協力も大きいですね!

そうですね。本当にありがたいことに、撮影場所でも出てくるマッスルバーのスタッフさんにもご協力いただいて、みんなで作った作品だと実感しています。皆さん「面白そうですね」と気軽に参加してくださいました。

――福岡のローカル局では、各局ドラマ制作をされていますが、違いを出そうと思ったところはありますか?

いずれの局さんも福岡色のあるドラマを制作されていますが、同じことをしても仕方がないので、今回は、あえて福岡色を前面に出さずに制作しました。地元の名産や名所などではなく「ちょっとずれたところで攻めよう」という話になりましたね。

櫻井音乃さん演じるみなみの天敵・ももこ

――放送後には、YouTube、TVerでも見逃し配信が決定しています。配信することに対しての目的を教えてください。

とにかく出面を多く作りたい思いがありました。配信も細分化されている時代なので「1人でも多くの方にこの作品に出会っていただきたい」という思いで、リーチを広げました。

一体どこで、どういう方に見てもらって、その結果、どうだったのか? そしてそれを次にどうつなげるのか……というアクションをするためには、間口を大きく広げて、一つひとつ回収していかないことにはわからない。そういったものを、イチから学びたかったですし、少しでも傾向が掴めたら、という思いはありました。

――宣伝にはSNSの活用も?

広報部分も私が担当しますが、毎日X(旧Twitter)に投稿するだけでなく、局のTikTokアカウントも活用していこうと思っています。今回、多くの媒体の方に拾っていただけるように、初めてリリースの配信も行いました。地上波では、福岡のみの放送ではあるのですが、配信では時間と場所を問わずご視聴いただけるので、エリアを問わない媒体での告知には力を入れていく予定です。

――今回のプロジェクトは、局としても、徳田さんとしても大きな一歩です。「何か新しいものを生み出さなければ」という思いは常々あったんですか?

今まで通り、テレビCMのセールスだけでは、これから厳しくなってくるであろうとは思っていましたし、いずれは誰かがやらなければならない領域なのかな、とは思っておりました。また、これまでもコンテンツ制作に取り組んだことはありましたが、視聴率だけではなく、TVerやYouTubeなど、ネット上での再生数が上がることに喜びを感じる経験が幾度かあり、もっと深く追求したいと思う部分はありました。

――ドラマづくりをする中で得られたもの、気づきはありましたか?

今回、タイアップとして、エイベックスさんに楽曲提供していただきました。ドラマはこれから放送される新しい作品で、シーズン2でもないですし、私のつたない説明だけだったのですが、それに対して具体的な提案をしてくださったのは、非常に嬉しかったです。

コンテンツビジネスという観点でいけば、「一度作ったものは賞味期限がなく、自分たちの資産だ」と思うようにすれば、まだまだローカル局でも戦っていけるコンテンツは作れるのかなと思いました。予算や人材のマンパワーでは勝てない部分もありますが、1日でも早く、そこを補うコンテンツを作り、確実にマネタイズできる仕組み作りもできたらなと思っています。

――そんなドラマ制作を通して、今後の展望をお聞かせください。

制作したコンテンツを皆様がいかに見てくださるか、まず出会ってもらうために何をするべきか、を考えなければならない。「コンテンツを見たくて見に来る人」がいないと、マネタイズも図れないので、まずはその“もの”を作るところから始めたいです。

また、近年「推し活」というワードを耳にしますが、いかにファンを作るのかも重要だと感じています。個人的には、今回のようなトライアルのコンテンツに関しては、深く狭い分野にチャレンジし、熱量を持ったファンの方に刺さるコンテンツを主軸に置くべきではないか、と思っています。今回は筋トレでしたが、こうした分野は世の中にたくさんあるので、今後も、新しい種を見つけていきたいです。

<作品概要>

『花の筋曜日~マッスルハンターみなみ~』(TVQ九州放送)
放送:2024年1 月27日(土)深夜1時00分~1時30分放送(予定)

<配信>
1月28日(日)20時より「テレ東公式ドラマチャンネル」(YouTube)で前半・後半に分けて本編を配信
■テレ東公式ドラマチャンネル:https://www.youtube.com/@tvtokyodrama

同じく1月28日(日)20時より「テレQ公式YouTubeチャンネル」で未公開映像含む完全版を配信
■テレQ公式YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@TVQ7ch

広告付き無料配信サービス「ネットもテレ東」「TVer」にて見逃し配信
■ネットもテレ東:https://video.tv-tokyo.co.jp/
■TVer:https://tver.jp/