15 JAN

CTVの価値とは? 〜『VR FORUM 2023』レポート

編集部 2024/1/15 08:00

株式会社ビデオリサーチが主催する国内最大級のビジネスフォーラム『VR FORUM 2023』が、2023年11月28日(火)にオンラインで開催。今回は「各社と共にメディア業界の変革を目指す Co-transformation」をテーマに掲げ、多様化するメディアや生活者と向き合いながら最前線でビジネスを展開する各界キーパーソンがディスカッションを繰り広げた。今回はこの中から、セッション「CTVの価値とは?」の模様をレポートする。

関東地区におけるテレビのネット接続率が約7割に及ぶなか、存在感を増し続けているコネクテッドTV(CTV)。広告市場として新たな“主戦場”の様相を呈しつつあるなか、CTV広告にはどのような価値が見出されているのか。動画配信プラットフォーマー、広告会社、データ企業それぞれの立場を代表する登壇者が考えを述べた。

パネリストは株式会社TVer 執行役員広告事業本部長の古田和俊氏、株式会社博報堂DYメディアパートナーズ メディアビジネス統括センター 統合アカウントプロデュース局 局長代理の濱﨑雄介氏。モデレーターを株式会社ビデオリサーチ 統括・ソリューションユニットマネージャーの河辺昌之氏が務めた。

■“主戦場”はスマホからCTVへ。動画台頭も「放送コンテンツ」の盤石さは変わらず

最初に河辺氏が、CTVの利用に関する最新データを紹介する。

ビデオリサーチ 河辺昌之氏

ビデオリサーチの生活者行動パネル「ACR/ex」によると、関東地区のPM(機械式個人視聴率調査)対象世帯におけるテレビのネット接続率は、2023年時点で約70%。約4人に1人が「TVerを3ヶ月以内に利用している」と回答しているという。

「コロナ禍を機にテレビデバイスでの視聴が急激に伸長し、TVerの利用率はこの5年間で約5倍に成長した。動画配信サービスの“主戦場”は、従来のスマートフォンからテレビデバイスへと広がりつつある」(河辺氏)

河辺氏は、テレビデバイスにおける動画の視聴時間が若年層(C、T、F1・M1)で全体の10%を超えたとする結果を紹介。「若年層ほどテレビデバイスにおける配信動画の視聴比率が高い」とする一方、視聴されるコンテンツそのものはテレビのリアルタイム視聴とタイムシフト視聴で全体の80%以上を占めていると語る。

「テレビデバイス離れが起きているわけではないものの、リアルタイム視聴とそれ以外のテレビモニターの利用の割合に変化が起きているのが事実。生活者とのコミュニケーションを最適化していくには、オンオフ統合のプランニングがますます重要になっている」(河辺氏)

■テレビの拡散力 ✕ デジタルの柔軟性 「CTVは“いいとこどり”の広告媒体」

TVer古田和俊氏

セッションでは続いて、テレビメディアが広告媒体として持つ強みにフォーカス。「『VIVANT』や『silent』などのドラマがSNS上で話題の中心となったように、放送局由来のコンテンツは世の中にムーブメントを巻き起こす力を持っている」と古田氏は語る。

これに対して濱﨑氏は「ドラマやスポーツ中継など、家族揃って安心安全に見られるコンテンツを一斉に届けられるという点が重要なポイント」とし、「若年層も動画広告よりテレビCMに対する信頼感が高い」とコメント。さらに河辺氏は、放送局由来コンテンツの強みを次のように表現する。

「テレビの圧倒的なリーチパワーや即時性をテレビCMの価値に置き換えると、『ブロードリーチ』や『スピードリーチ』とも表現できる。生活の一部に溶け込む親近感を持ち、ご家族揃って安心安全に楽しめるという面ではブランドセーフティーの要素も大きい」

「TVerにおける広告出稿では商材やクリエイティブに対してテレビ放送と同等水準の審査、考査を行っている」と古田氏は語り、CTV広告としての安全性を強調。「ブランディングのために広告出稿をいただいているという観点からみても、ブランドセーフという信頼をお返しできるのはテレビコンテンツとしての強みだ」と語る。

「TVer広告の強みは、音ありで最後までしっかり見られるところ。CMは映像とともに、音楽もふくめてひとつのクリエイティブであり、音ありで最後までしっかり見られることが広告認知につながる」(古田氏)

河辺氏はCTVを「テレビと動画の“いいとこどり”」と表現。「レコメンドによって見たいコンテンツに効率よく出会えるUIを持ちつつ、ターゲティングや運用型などの広告配信が行える」ことを動画メディアの特長として挙げ、それらを「テレビデバイス上でも実現できる」と、CTVのメリットを語る。

「動画広告では、生活者の“好き”をもとにしたターゲティング配信や、“好き”のレベルに応じたクリエイティブの出し分けなど、広告効果の違いに基づいた運用が可能だ。さらに『“好き”を拡散させる』という副次的な効果も持ち合わせている。このように、高速なPDCAにもつながる可視化性、柔軟性が動画広告媒体としてCTVの強みではないか」(河辺氏)

「これまでCMの差し替えには4日ほどかかっていたが、CTV広告では前日に素材を差し替える試みも始められている」と濱﨑氏。「『テレビ広告はPDCAを回しにくい』という従来のセオリーは古くなり、CTVを嚆矢にテレビ広告の高速運用化、高度運用化の流れが広がっていくのではないか」と期待をのぞかせる。

■CTV ✕ TVer広告 ✕ ドラマ連動インフォマーシャルが生む強力なブランドリフト

昨今、SNSを中心に話題を呼ぶドラマの多くでその世界観と連動したインフォマーシャル施策が行われているが、ここに大画面で専念視聴を生みやすいCTVとテレビCMのフォーマットをそのまま適用できるTVer広告を組み合わせることで、より高いブランドリフト効果を発揮できるという。

濱﨑氏が、フジテレビで2023年7〜9月クールに放送されたドラマ『この素晴らしき世界』の事例を紹介する。

博報堂DYメディアパートナーズ 濱﨑雄介氏

同ドラマでは、TVer見逃し配信のポストロール(本編後CM枠)にて、“商材A”とドラマの登場人物をかけあわせた4分の長尺インフォマーシャルを配信。

CMとしては異例の長さながら、CTVにおける完視聴率は「驚異的とも言える高さだった」(濱﨑氏)という。

「施策後に実施した調査でも、CTV経由でドラマ連動インフォマーシャルに接触した層は他の層と比べて大きなブランドリフトが得られた。具体的なブランドイメージを問うアンケートでも、『静音性』『機能がよい』と、インフォマーシャルで訴求したポイントが上位を占めた」(濱﨑氏)

「専念視聴の高いCTVにおいて長尺の番組連動インフォマーシャルとTVerのポストロール広告を活用することで、個別の訴求ポイントに当てたブランドリフトが可能となった」と濱﨑氏。河辺氏も「大画面であるCTVは完視聴性が高く、訴求メッセージもきちんと伝わりやすいため、高いブランドリストや態度変容が得られやすい」と語る。

「CTVの視聴者は基本的に目当ての番組を見に来ており、いわば『能動的な視聴者』にターゲティングされた状態。本編が終わっているにも関わらず、インフォマーシャル自体を一つのコンテンツとして違和感なく視聴できる環境が物理的にも心理的にも整っている」(河辺氏)

さらに河辺氏は、CTVの代表的な視聴習慣である「共視聴」にも言及。「家族一緒にコンテンツを楽しめるというスタイルは、CTVの特長を理解する上では非常に重要な要素になる」と語る。

「TVerをCTV環境で共視聴する方々にインタビューしたところ、『土日の昼帯に、その週に見ることができなかったドラマを親と見る』『関東で見ることができない新潟県の情報番組を、新潟出身の夫と一緒に見る』といった回答が得られた。家族と一緒に見ることを目的に、CTVの視聴タイムを能動的に作り出している様子が見て取れる」(河辺氏)

「コンテンツに対する“好き”の有無に限らず、『家族と一緒に会話しながら同じコンテンツを見る時間そのものが好き』という要素がCTV視聴の大きな動機になっている」と河辺氏。「スマートフォンに没頭する時間が増える昨今、CTVには家族同士の時間や好きを繋ぐ役割があるのではないか」とまとめた。

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