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日テレが始動した「シナリオライターコンテスト」の背景には「コンテンツ中心主義」がある【日本テレビインタビュー前編】

編集部 2023/9/25 08:00

日本テレビは次世代の脚本家を発掘する「日テレ シナリオライターコンテスト2023」を始動した。新組織「スタジオセンター」が主導し、新たな“ストーリーコンテンツ”を生み出す源泉のひとつだという。コンテンツ中心主義を具現化するこの取り組みの狙いは何か?日本テレビ放送網コンテンツ戦略本部グローバルビジネス局担当局次長、スタジオセンター長兼部長の佐藤貴博氏に伺わせてもらった話を前後編にわたってお伝えする。

■ゼロイチプロデューサー育成とシナリオライター発掘

――今年6月に日本テレビで組織化された「スタジオセンター」が「日テレ シナリオライターコンテスト2023」を立ち上げた背景から教えてください。

スタジオセンターは、映画、アニメ、ドラマといったストーリーコンテンツを中心に地上波に留まらず、グローバル展開も視野に入れたコンテンツの企画開発製作を担う組織です。日本テレビグループの「中期経営計画2022‐2024」にもあるように、「コンテンツの価値最大化」を掲げ、コンテンツ中心主義を目指すなか、さらに改革を進めていこうと、コンテンツの企画の幅を拡げ、成立スピードを上げるために組織化された背景もあります。

概念的には、今後このコンテンツ中心主義を貫いていくためにゼロから一を生み出す“ゼロイチ”プロデューサーを増やさなければという狙いもあり、前身の「コンテンツスタジオセンター」に「映画事業部門」と「アニメ事業部門」を組み込み、グローバルビジネス局傘下に入って企画製作事業部門としての「スタジオセンター」が組織化されました。

現在同センターに所属するプロデューサーは映画、アニメ、ドラマ合わせて23名ほど。制作局のドラマ班とも人材交流しながら、予算も公開枠も無いところから企画ありきで、その企画を実現するために資金を集め、座組を決め、スタッフも集めて、そこから当然回収も考えるというビジネスとクリエイティブの両方を構築できる映画プロデューサーのようなプロデューサーを、更には、現在は配信のグローバルプラットフォームも数多く誕生しているので、それらプラットフォームの特性も理解して製作を牽引していけるプロデューサーを日本テレビの中で育てていく必要があると思っています。

それと同時に、今回始動したコンテストも実は人の発掘が目的にあります。名称を「シナリオコンテスト」ではなく、「シナリオ“ライター”コンテスト」としたのは、シナリオそのものだけでなく、若い才能、人材そのものを見つけることを意識しているからです。

――では、「人」にフォーカスしているなか、このコンテストはどのような役割を持たせたいと思っているのでしょうか。

もちろん素晴らしいシナリオが集まることも期待していますが、日本テレビとしてオリジナルコンテンツを作り出す力を持つ人材を発掘するためのコンテストとして考えています。

今回、募集にあたって作品テーマを「自由」としたことにも意味があります。お題を決めた方が作家としての実力が図りやすいのですが、このコンテストは人の発掘が目的にありますから、敢えて自由テーマにし、書きたいものを書いてもらうことでその人自身を読み解ければと思っています。

今年10月31日までの募集期間を経て、受賞者の発表後は、発掘した脚本家が活躍しやすい分野で才能が花開くことを目指したいです。今回の日本テレビのコンテストの特徴として、我々スタジオセンターが主催ですので、ドラマだけでなく、映画やアニメのプロデューサーも審査員を担当します。映画やアニメのプロデューサーと新しい才能のマッチングも考えていますので、クリエイティブの可能性の幅を出来る限り拡げていきたいと思っています。新しい才能を持った脚本家と日本テレビの若いプロデューサーが切磋琢磨しながら共に企画開発を積極的に行い、実現させていける。そういう「場」を創ることが、このコンテストの真の目的でもあります。

■コンテンツファーストを前提とした取り組み

――コンテストを経た後の先の話になりますが、脚本家とプロデューサーが企画開発を進めていくにあたり、地上波放送を前提としたコンテンツを目指していくのでしょうか。もしくは、スタジオセンターとしてのコンテンツビジネスを展開していくのでしょうか。

スタジオセンターとしては、地上波、AVODのTVer、SVODのHuluやグローバルプラットフォーム、映画、イベントなどあらゆるプラットフォーム、そして実写、アニメ、演劇などあらゆる表現方法を見据えて、自分たちが開発するコンテンツのベストの出し口、表現方法のかたちを考えていきます。なので、地上波の放送枠ありきではありません。これも全てコンテンツファーストを前提としています。

日本テレビは民放の中でコア視聴率トップであり、地上波広告売上トップを維持している放送局ですから、地上波ビジネスが主たる事業になるのは当然のことですが、地上波広告収入だけに頼るビジネスモデルでは通用しなくなってきているのも事実です。特にストーリーコンテンツにおいては、地上波広告収入以外の事業売上の方が大きくなってきています。組織としても、地上波に加えて、配信などあらゆるプラットフォームに対する戦略を持って臨むために「総合編成センター」も新設されています。総合編成センターのプラットフォーム戦略と連携を取りながら、スタジオセンターはあらゆるプラットフォームに向けたコンテンツを企画開発製作していきます。

――あらゆる出口を想定したコンテンツビジネスを展開していくなかで、「ストーリー」を基軸にしたコンテンツビジネスというのは、ドラマや映画、アニメ、さらにバラエティやドキュメンタリーといった幅広いジャンルのストーリーに広がっていくオリジナルIPストーリービジネスとして捉えた取り組みにもなっていくのでしょうか。

海外進出には、世界に通用する「ストーリー」が一番重要だと思っています。今のところはドラマと映画、アニメが中心となると思いますが、そこから得た知見からドキュメントバラエティなど、純粋なストーリーコンテンツではないものの展開も見込めるかもしれません。あらゆる可能性を否定せず、オリジナルストーリーを模索していく中で、IPビジネスも当然生まれていくでしょうから、その辺りも考えていきます。

オリジナル作品として展開していくことを考えた時、日本テレビはこれまでもオリジナルドラマが多く、地上波にTVer、さらにHuluというオウンドプラットフォームがある強みを持ちながら、自社でコンテンツの力を大きくしていった先にグローバルという道があると思っています。

また、現時点では、実写作品をそのままストレートにアジア以外の海外で展開し、成功させるハードルは高いとも思っています。まずはグローバルに認められているアニメコンテンツで知見を溜めていきたいと思います。これまで漫画原作の『デスノート』『君に届け』『寄生獣』を手掛けてきましたが、いずれもアニメ化も成功しており、アニメチームとも連携を取ってきた経験が私自身ありますので、日本テレビが幹事となって企画からプロデュースできる作品を作っていくことにも改めて力を入れたいと思っています。

――日本テレビが始動した「日テレ シナリオライターコンテスト2023」は人材育成とストーリーコンテンツビジネスの2つの戦略が持っていることがわかる。コンテンツ中心主義を目指す改革実行計画として、その中身について佐藤氏がさらに語ってくれた。後編へと続く。

日テレ「シナリオライターコンテスト」が目指す進化系ストーリー開発【日本テレビインタビュー後編】

「日テレ シナリオライターコンテスト2023」公式HP

7月21日公開リリース参照