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コネクテッドTV広告は日本のマーケティングを変えるのか? TVer×GroupM担当者インタビュー

編集部 2023/6/15 08:00

動画広告市場において年々急速に規模を拡大し続けるコネクテッドTV広告市場。米国ではケーブルテレビを解約してOTT(ネット配信サービス)経由の視聴に切り替える「コードカット」の割合が増え、日本国内においても、ある調査ではテレビのネット結線率が全体の約半数に当たる45.5%というデータもあるなど、日常生活において予想を超えるスピードで浸透を深めている。

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引き続き注目領域である事に間違いないこの分野、国内外の市場動向は。現状の課題や今後の見通しは──。今回は、国内外でコネクテッドTVを多く取り扱い、「TVer Sales Awards 2023」でもSilver Parnerに輝いたEssenseMediacom Head of Investment & Partnershipsの鈴木 裕氏、TVer広告事業本部の中川卓也氏にインタビューする。

左からTVer 中川卓也氏、EssenceMediacom 鈴木裕氏

■拡大続くコネクテッドTV広告市場、米ではテレビ広告売上の半数を超える見込み

――海外と日本、それぞれのコネクテッドTV市場はどのような状況にあるのでしょうか。

鈴木氏:海外、とくにアメリカではスマートテレビの普及率が高く、必然的にコネクテッドTVの広告売り上げも大きくなっています。テレビ広告と比較して、現在約30%ほどですが、2025年には50%を超えると予想している会社もあるようです。プランニングの軸にコネクテッドTVを据えるクライアントが増えており、中には広告予算の半分をコネクテッドTVにあてるケースも出てきました。

中川氏:2023年3月にTVerの月間再生回数は3億回を突破しましたが、その背景には、コネクテッドTV経由での視聴の増加が大きくからんでいると言っても過言ではありません。

TVerにおけるデバイス別再生比率のうち、コネクテッドTVの占める割合は2022年から2023年にかけて24%→31%と成長し、ついに3割の大台に乗りました。

インターネット結線されたテレビの割合が全体の約半数いう調査データもあり、視聴デバイス、視聴体験としてのコネクテッドTVはもはや日本でも当たり前の存在となってきています。その一方、TVer広告に対する広告主様の温度感としては「注目の新しいデバイスとして、ひとまずトライアル的に出稿してみよう」といったところで、本格的な参入はこれからといった印象です。

――TVerではコネクテッドTV専門部署が立ち上がるなど、今後の戦略において非常に重要な位置づけがなされています。TVerの目線から見て、コネクテッドTVには広告媒体としてどのような強みがあると思いますか?

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中川氏:コネクテッドTVの良さは、なんといっても画面の大きさです。視認性が高く、広告においても高い認知効果を発揮します。特にTVerの場合は広告がスキップされず、コンテンツそのものも広告の挿入を前提としたフォーマットであるため、ユーザーのみなさんに受容されやすいという特長を持っています。

もうひとつ特筆すべきは「1人以上で見られている割合が高い」という点です。コネクテッドTV経由でTVer視聴している方のうち、弊社のアンケートでは画面を同時に見ている人数の平均は1.5人となっています。1回あたりの再生で1人以上のリーチを獲得できるという点は、他のデバイスに比べても非常に強みであると考えています。

■テレビとデジタルの利点を併せ持つコネクテッドTV広告。海外トレンドは“行動促進型”

――日本においてコネクテッドTV広告への参入が盛んになるためには、どのようなアプローチが有効でしょうか。

鈴木氏:コネクテッドTVは、視認性が高いテレビの利点とセグメントが切れるデジタルの利点を両方併せ持っていますが、その汎用性の高さゆえ、国内のクライアントからは「KPIの置きどころに迷っている」という声も聞かれます。どんな使い方がよいか、どのようなセグメントに有効なのか、メジャメントも含めて検討のフェーズにあるというのが日本における現状ではないでしょうか。

一方、海外ではクーポンコード付きの広告など、直接的な購買行動を促進する「ショッパブル広告」の導入が進んでいます。何かしらのアクションを促進する具体的な仕掛けがあれば、プランニングにコネクテッドTVが組み込まれるケースが増えるかもしれません。

中川氏: TVerに関して言えば、まずは利用してくれるユーザーが増え、リーチ媒体としての存在感を増していく事が必要だと考えております。そちらに加え、TVer社も自社のBLS調査の仕組みをコネクテッドTVにおいて構築しておりますが、効果測定がより精緻・簡易にできると更に拡がっていく印象があります。また、これは個人的な将来の期待感ですが、地上波放送の視聴データ等とも連携ができると、より面白いプロダクトになると思っています。

■話題を呼ぶ“世界観連動CM”「コネクテッドTVは長尺CMと相性が良い」

――コネクテッドTVにおけるコンテンツと広告の相性の良さ、という点が挙げられていましたが、最近ではドラマ『silent』でのオリジナルCMや、TVerでの『ラブジェネレーション』リバイバル配信時の木村拓哉さん・松たか子さん出演CMの配信など、コンテンツの世界観と強く連動した広告も話題になっています。

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鈴木氏:番組に出演しているタレントさんがその後のCMにも引き続き登場する、というケースを最近はよく見かけますし、番組の内容や世界観に合わせたCMも増えてきている印象があります。

コネクテッドTVならば、こうしたコンテンツとCM同士の“世界観のひも付け”を簡単に行うことができます。ユーザー目線でも何かしらの連動感を感じられれば、たとえCMが60秒で違和感がないどころか、これまで以上のブランドリフト効果が見込めるでしょう。広告と相性のよいセグメントをうまく見つけ、長尺のCMを打つことで効果が上がるということが実証されていけば、いろんな新しい取り組みがもっとできてくると思います。

中川氏:商材と番組のジャンルとの相性というものは確かにあります。たとえば、あるアプリサービスで実施したキャンペーンでは、ドラマよりもバラエティのほうが高い認知効果が得られました。これが違う商材であればまた違った結果が見えてくると思います。

そういったところまで踏み込んで出稿をご提案することができれば、プラットフォーム、広告商品としての質も上がってくるのではないでしょうか。

■コネクテッドTV 広告は30秒・60秒が一般的に?「テレビとは視聴体験の中身が違う」

――今後のコネクテッドTV広告に向けた期待、展望をお聞かせください。

鈴木氏:海外のコネクテッドTVでは30秒、60秒の長尺CMが一般的です。日本もこうした流れになれば、必然的に売り上げも拡大できるのではないでしょうか。TVという画面が大きい中だからこそ、30秒、60秒で伝えることが一般的になってくれば、ブランドの視認性を担保する効果的なクリエイティブの形も見えてくるはずと思います。

中川氏:長尺のCMならば、サービス名などの認知だけでなく、サービスの特長なども伝えることができると思います。また、テレビ受像機という事でデバイスは同じですが、「放送」と「配信」では“見られ方”や視聴体験が異なる為、最適なフリークエンシーやクリエイティブに関しても今後検証を進めていく予定です。

こちらはぜひコネクテッドTV配信における最適解をGroupMさんとも協力して探っていきたいと思います。

鈴木氏:コネクテッドTVで視聴されるコンテンツは過去にテレビで放映されたもので、そこに対してCMが挿入されるという形態が一般的かと思いますが、既存のレギュラー回からスピンアウトした番組を広告主とテレビ局が一緒に作っていっても面白いのではないでしょうか。

コンテンツの前後に広告を設ける、コンテンツと連動性のある広告を制作する、という発想を逆転させて、「内容がまるごと広告として機能する番組」のようなものがあっても面白いかもしれません。

番組の中で商品の説明や使い方をうまく伝えて、ユーザーの反応や行動の違いを理解していければ、コネクテッドTV広告の分野において、新しい一歩になるのではないでしょうか。

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