株式会社仙台放送 太田茂氏、日本交通株式会社 仲進氏、仙台放送 寺田早輪子アナウンサー

12 JUN

テレビ報道から生まれた“運転技能向上アプリ” 仙台放送「BTOC」セミナーレポート

編集部 2023/6/12 08:00

2023年5月24日、東京ビッグサイトで開催された「運輸安全・物流DX EXPO 2023」にて、株式会社仙台放送と東北大学加齢医学研究所の共同開発による運転技能向上トレーニング・アプリ「BTOC(ビートック)」のセミナーが行われた。

今回は、「BTOC」事業を担当する株式会社仙台放送 ニュービジネス事業部 部長の太田 茂氏がプレゼンターを務め、ゲストとして日本交通株式会社 執行役員(統括安全担当)の仲 進氏が登壇。仙台放送の寺田早輪子アナウンサーが進行する中、企業における実際の導入事例などについて、熱いトークが繰り広げられた。

■「事故を伝えるだけでなく、実際に減らす取り組みを」報道から生まれた取り組み

株式会社仙台放送 ニュービジネス事業部 部長 太田 茂氏

仙台放送は、宮城県を放送地域とするフジテレビ系列の放送局だ。太田氏いわく、テレビ局として運転技能向上アプリの開発に乗り出した背景には、「ほぼ毎日と言ってよいほどニュースで取り上げる」という交通事故の多さがあったという。

「放送局として交通事故を伝えても、どうすれば事故を減らせるのか、具体的なソリューションを提供できていなかった」と太田氏。仙台放送は、2003年に脳科学を研究する東北大学加齢医学研究所・川島隆太教授を報道番組で取材。以来、共同での番組制作や様々なコンテンツ制作を含め、約20年にわたって産学連携の活動を続けてきた。

「BTOC」は、この研究を通じ、川島教授の監修によって開発された「運転技能向上トレーニング・アプリ」がベースとなっている。

■1回1分のミニゲームで判断力や注意力を判定。運転技能や認知機能の向上を実証済み

「BTOC」は、AI技術を搭載した「運転技能向上トレーニング・アプリ AI版」を軸とする、脳のトレーニングサービスだ。

「BTOC」アプリスタート画面(提供:仙台放送)

1回あたり1分ほどのミニゲームを通じて、安全運転に欠かせない「素早く判断する力」「素早く危険に対応する力」「事前に危険に気づく力」といった脳の働きを鍛える仕組み。運転技能の向上や、認知機能低下の抑制をサポートする。

「素早く判断する力」を鍛える「クルクルヒョーシキ」(提供:仙台放送)
「素早く危険に気づく力」を鍛える「アブナイドーロ」(提供:仙台放送)
「事前に危険に気づく力」を鍛える「ストップコーサテン」
脳の動きを偏差値で評価する「シソクエンザン」

2018年には特許を取得。さらに2019年には東北大学の研究で「自動車運転技能」、「認知機能」、「感情状態」の向上が実証された。2021年にはAI技術を搭載し、ユーザーに適した難易度の自動調整が可能に。大手企業を中心に既に100万IDが利用されている。

最新のサービスである「BTOC」は、主に仕事で運転するドライバーに焦点を当てており、事業所ごとの複数ユーザーによる使用に対応。ユーザーごとに発行されるIDを通じて個別にアプリのスコア管理ができるほか、管理者は各ユーザーにおけるトレーニングの進捗状況を一括して確認することができる。

さらに、個人のスマートフォン使用が制限される職場環境での活用も考慮されている点も特長。1人1人の従業員に発行されたQRコードを、BTOCがインストールされた法人のタブレットやスマートフォンに読み取らせることで、瞬時にアカウントを切り替えて起動することができる。APIを通じて外部の勤怠管理システムなどと連携することも可能だ。

■大手タクシー会社にも導入。“スコアの異変”を把握してトラブルを未然に防ぐ効果も

後半では導入企業を代表し、東京を中心としてタクシー事業を展開する日本交通の仲氏が登壇。日々の業務における「BTOC」の具体的な活用事例を紹介した。

日本交通株式会社 執行役員(統括安全担当) 仲 進氏

2023年で創立95年を迎える老舗であり、ハイヤー・タクシー等の運行台数9000台、従業員数1万1000人と、全国でも最大手のタクシー・ハイヤー会社である同社。ドライバーの平均年齢は45歳と比較的若く、うち10%は新卒社員が占めているという。「新しい技術の導入を通じて、タクシー業界全体の活性化を図りたいという考えがあった」と仲氏。狭い道や一方通行の道が多い東京の複雑な道路事情に対する感覚を養う意味合いも大きいと語る。

「これまでも実技教習や映像を用いた安全教育に取り組んできたが、実際に『脳を鍛える』トレーニング方法はこれまで思いつかなかった。そういった意味でも、脳を活性化させて安全運転技術の向上を図るという『BTOC』のアプローチは素晴らしく、大きな衝撃だった」(仲氏)

日本交通では、毎日の点呼や業務の合間に「BTOC」でのトレーニングを実施。乗務員からは「普段の生活時においても、反応速度が上がった気がする」と好評の声が上がっているほか、「スコアの変動を通じて、運転に影響する心身のコンディションを把握できるようになった」という。

「いつも満点の従業員が失敗を出すなど、スコアに異変が見られた場合は個人面談を設定し、何らかのストレスやトラブルを抱えていないか確認するようにしている。『BTOC』の管理画面は乗務員たちの心身のコンディションを見るバロメーターとしても機能しており、事実、導入後は大きな事故が起きていない」(仲氏)

仲氏の話を受け、「“うまくいかない”ところもすべて記録しているのが『BTOC』の優れたところ」と太田氏。「アルコール検知器の隣に端末を設置し、乗務前の確認作業に『BTOC』を組み込んでいる企業や、若手スタッフをまとめ役に任命し、チーム単位での実施やスコア管理、意見交換に取り組んでいる企業もある」と、会社全体での安全技術向上に貢献しているとした。

■来年からドライバーの時間外労働が制限。“2024年問題”を前に「BTOC」が果たす役割

働き方改革関連法にともない、2024年4月1日から自動車運転の業務における時間外労働の上限が年960時間に制限される、いわゆる「物流の2024年問題」の到来が目前だ。既に日本交通のタクシーでは厳しい基準に対応しているとした上で、仲氏は「『BTOC』をしっかり活用して安全管理に務めていきたい」と語る。

これを受け、太田氏は「ドライバーの運転管理における目線が厳しくなる中、『BTOC』が役に立てる面は大きい」とコメント。東北大と「BTOC」を通じた事故軽減の効果を検証する取り組みにも挑戦したいとした。

「分析には多くのデータが必要であり、そのためにも導入いただいている企業の皆様との連携が不可欠」と太田氏。「『BTOC』によって、どのくらい事故を減らすことができるかを社会全体に示していくことが目標」と意気込みを述べた。

BTOC新CM(日本交通編)15秒
BTOC導入社インタビュー

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