03 OCT

仙台放送と東北大学が取り組むeスポーツを活用した目の健康促進事業計画とは?【後編】

編集部 2022/10/3 10:01

仙台放送は、東北大学大学院医学系研究科と身近な病気「緑内障」の早期発見を目的に、ゲーム感覚で目の健康状態を簡易チェックできるスマホ向けアプリ「METEOR BLASTER(メテオブラスター)」を共同開発した。「eスポーツの観点から目の健康を促進する」という観点で、さらなる社会実装も目指す。なぜ「医療×エンターテインメント」プロジェクトに力を入れているのか。前編に続き、新アプリを監修した東北大学医学部眼科学教室・中澤徹教授と共に、仙台放送ニュービジネス開発局ニュービジネス事業部太田茂氏に話を聞いた。

左から)東北大学 中澤徹教授、仙台放送 太田茂氏

■メディアと大学の強みをマッチングする

仙台放送は、国立大学法人東北大学大学院医学系研究科神経・感覚器病態学講座眼科学分野と緑内障の早期発見に役立つスマホ向けゲームアプリ「METEOR BLASTER」を共同開発するなど、医療×エンターテインメントのプロジェクトをなぜ進めているのだろうか。

太田氏弊社のニュービジネス開発局は社会課題の解決を主題に置いています。東北大学加齢医学研究所(所長・川島隆太教授)の脳科学研究の成果を活かした「認知症の予防改善」「運転技能の維持向上」や、今回の中澤教授との緑内障の早期発見を目的としたアプリ開発なども、自前主義の発想から脱却し、大学等とエビデンス(特許等)を生み出し、社会課題を解決するソリューションを社会実装していく取り組みとして進めています。

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例えば、番組を作り、放送することに留まらず、大学と共に新たなエビデンス(特許等)を生み出し、多様なプレイヤーを巻き込む役割ができれば、と考えています。その結果、人々の行動を少しでも変えることが出来れば、本当に素晴らしいと思います。今回の「緑内障の早期発見」というテーマにおいても、中澤先生から色々なアイデアをいただきながら、チャレンジしようとしているところです。

中澤氏仙台放送さんとは腹を割って、お話をすることができ、ミーティングを重ねるごとにお互いが持つ強みを理解することができました。こうした活動は責任ある立場の医師が監修することも重要だと思います。大学の強みは信頼性です。そこに医療のことを周知したいと思うメディアがマッチングすると、今回のような活動に繋がると思っています。

■eスポーツで目を鍛えるトレーニングの発想

緑内障の早期発見を促すことを起因にスマホ向けゲームアプリ「METEOR BLASTER」は体験版としてリリースしたが、機能を拡張していく計画は考えられているのだろうか。

太田氏仙台放送はこのほど仙台eスポーツ協会に入会し、「eスポーツの観点から目の健康を促進する」という観点で、さらなる社会実装を目指しています。また今後はアプリの精度を高めていくことはもちろん、大学や企業等と連携しながら、目の健康を長期でサポートできるような機能拡張も計画しています。現状はスマートフォンを主要デバイスとしていますが、大画面やVRなどの活用も視野に入れています。視点を変えてすそ野を広げ、大きなムーブメントを作っていきたいと考えています。

eスポーツを活用しながら、目の健康を高めるとは、具体的にどのような効果が期待されるのだろうか。

中澤氏スポーツを行うと、筋肉量が増えて、日常生活での怪我の予防になるように、目も鍛えると病気になりにくいという一面を持っています。こうした発想から目をトレーニングすることができれば、病気になりにくい目を作ることができるのではないかと考え検証実験を自治体、サプリメントメーカーなどとすでに進めております。目の寿命は実は短く、白内障や老眼はほとんどの方がかかります。週3回程度の頻度で、気軽に目のeスポーツトレーニングを行い「みえる」を守ることで、一生涯にわたり自己実現が続けられる社会を作るために貢献していきたいと思います。

■10年後の繋がる時代に向けて社会に役立つ活動を

エンターテインメントと目の健康促進を組み合わせたプロジェクトとして、どのぐらいの期間を見据えて取り組んでいくのだろうか。

太田氏最低10年は取り組んでいくつもりです。中澤先生、よろしいでしょうか?

中澤氏10年はやりたいと思っていますよ!

太田氏アプリ「METEOR BLASTER」は、今年7月に特許を取得したのですが、これまでで最速の取得となり、社会実装に向けて大きな後押しとなりました。ヒトが得る情報のほとんどが「目」から入ると言われています。ましてやテレビ局は番組をご覧いただいてなんぼの商売です。「目の健康」は、私たちにとっても重要テーマですので、中澤氏先生に今後も10年、ついていかせてもらいます。

最後に将来に向けての抱負を改めて語ってもらった。

太田氏技術が進む今後は、様々なコンテンツが1人1人と繋がる時代になるかもしれません。コネクティッドTVを通じた取り組みも始めていますが、私たちも1人1人と繋がった状態で何ができるのか、を日々模索しているところです。今回の中澤先生との取り組みも、究極的には、お一人おひとりに必要なトレーニングなどをアレンジしてお届けできること、が目標です。

中澤氏今回、アプリのリリース後に100件を超えるメディアで取り上げられ、テレビ局が社会に与える影響力のすごさを改めて感じました。異なる強みを持つ人たちがそれぞれ役割を把握した上で、1つの目標に向かって取り組むことによって、社会が変わります。大学の中に閉じこもってばかりではなく、メディアの方に接し、自分たちの思いを伝え、それをプロであるメディアの方からわかりやすく市民の方に伝えてもらうという形で連携すると、本当に社会に役立つ活動ができることを実感しました。未来の子どもたちに誇れる社会を作るために、我々世代が頑張っていかないといけませんね。

仙台放送、東北大学と「緑内障」早期発見を促すゲームアプリを共同開発した理由【前編】