UEFAチャンピオンズリーグ決勝戦は大混戦の予感 ニールセン・グレースノートが独自の分析結果を解説
編集部 2022/5/28 10:00
ニールセン・グレースノート(以下グレースノート)は、5月29日(日)に今年の決勝戦を迎えるUEFAチャンピオンズリーグに関する分析結果を発表した。同レポートでは、両クラブの戦績や選手層、UEFAチャンピオンズリーグの注目度、メディアライツの変化などの分析結果を解説している。
2018年にレアル・マドリードがリヴァプールを破ってUEFAチャンピオンズリーグカップを手にした当時、約1億600万人が視聴し、過去5回のチャンピオンズリーグ決勝で最大の視聴者数を記録。本大会でスペインの古豪はUEFAチャンピオンズリーグ3連覇、そしてリーガ・エスパニョーラ勢としてはUEFAチャンピオンズリーグ5連覇を達成した。
しかしそれ以降、イングランド・プレミアリーグのチームが存在感を高め、2018年以降のチャンピオンズリーグ決勝トーナメント8大会のうち5大会を制し、過去3大会のうち2大会で優勝。また、昨今のプレミアリーグクラブの活躍は、同大会のメディア権収入の向上と比例していることがわかっている。リヴァプール、マンチェスター・シティ、チェルシーなどのクラブが、レアル・マドリード、バイエルン・ミュンヘン、FCバルセロナといった伝統的なエリート集団に、ヨーロッパのトップの栄誉を賭けて挑戦するきっかけとなっているのだ。そして今年のチャンピオンズリーグ決勝には、グレースノートのGlobal Player Indexに掲載されている世界のベスト20選手のうち9人が登場する。
ベスト・オブ・ザ・ベスト:世界最高峰の選手たちを抱えるクラブ
イングランドとスペインのクラブは、数々の世界最高峰の選手が所属している。グレースノートのGlobal Player Indexによると、トップ200の選手の3分の2以上がプレミアリーグとリーガ・エスパニョーラでプレー。なかでもプレミアリーグには、世界最高の選手が最も多く所属しており、トップ100のうち55人が所属している。
特にリヴァプールは、アフリカ年間最優秀選手賞を3回受賞したモハメド・サラー(2位)、イングランド代表DFトレント・アレクサンダー=アーノルド(4位)をはじめ、「世界選手インデックス」で世界のトップ10に6人が名を連ねる。一方レアル・マドリードは、フランス人ストライカー、カリム・ベンゼマがGlobal Player Indexで現在1位となっているが、彼以外ではブラジル人FWのヴィニシウス・ジュニオールの13位以外、トップ20圏外となっている。
ファイナルとしてふさわしい注目度の高さ
上記は、2019年、2021年版のUEFAチャンピオンズリーグがイングランド勢のファイナルとなり、他地域の視聴者の関心は低くなったことを示している。UEFAチャンピオンズリーグ決勝は、世界で最も視聴率が高く、最も多くの観客を動員するクラブの祭典として、ブランドや権利保有者に確かな投資対効果をもたらす。UEFAチャンピオンズリーグは、チームとそのスポンサーに、毎週欠かさずに試合を観戦しているような熱心な視聴者とファンへのアクセスを提供し、イギリスの有料放送局であるBT Sportは、UEFAチャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグ、そして新しい3部リーグであるヨーロッパカンファレンスリーグの独占放送権を2021年から2024年まで保持する、15億ドルの契約を結んでいる。
放映権料の上昇とトップレベルの選手の組み合わせがもたらすメディアの価値
2010-13シーズンの放映パッケージが約50億ドルで販売されて以来、プレミアリーグは国内外のメディアライツの価値を170%以上高め、2022-25シーズンのパッケージでは128億ドルに達した。2013-16年のメディアライツは、59.4%増の総額76億ドルに達した後、2016-19年のパッケージではさらに55.1%増の117億ドルまで高騰。2016-19年のパッケージは、国内料金の64.9%増と国際パッケージの44%増に大きく後押しされた。そして2018-19シーズンが到来し、リヴァプールが2012年以来、イングランドのクラブとして初めてUEFAチャンピオンズリーグのタイトルを獲得するまでに、プレミアリーグは10年前よりも70億ドル多いメディア権料を分配している。
世界のサッカー界は、メディアライツ料の増加により、その様相を一変させた。8シーズン連続で欧州最高のリーグとして君臨してきたラ・リーガは、グレースノートのEuro Club Indexリーグランキングで3シーズン連続首位で終えたプレミアリーグにその座を譲ることになったのだ。リヴァプールは、2018年にあったようにユーロクラブ指数トップ10圏外ではなくなり、現在は世界一に君臨。一方、レアル・マドリードは、現在3位に位置している。
2018年5月のユーロクラブ・インデックスのトップ5に入ったプレミアリーグのクラブは、5位のマンチェスター・シティのみ。それから現在は、プレミアリーグのクラブは、マンチェスター・シティ(2位)とチェルシー(5位)に首位のリヴァプールに加わり、トップ5のうち3チームがエリート集団を主張している。リーガ・エスパニョーラは4年前のユーロクラブ指数ランキングで上位2チームを占めていたものの、現在トップ5に残っているのはレアル・マドリードだけ。上位20位までを考えると、2022年はプレミアリーグが6クラブ、リーガ・エスパニョーラが5クラブと、両リーグが圧倒的な存在感を示している。トップ20に3クラブ以上入っているコンペティションは他にない。
上位18クラブのEuro Club Indexによると、グレースノートが2007年にインデクスの作成を開始して以来、イングランドのプレミアリーグとリーガ・エスパニョーラが欧州のトップ2リーグであることは明白になっている。スペインのクラブがイングランドのクラブとの欧州ノックアウト4試合をすべて制した2017-18年だけが例外となったものの、それ以外は同じ結果となっているのだ。
結論:試合の行方
グレースノートは、今年のファイナルでリヴァプールが勝つ確率が55%であると分析している。リヴァプールは今年最大のクラブゲームに向けてフィールド上で優位に立っているが、スポーツは何が起こるかわからない。グレースノートのデータによると、レアル・マドリードは現在、世界中で最も優秀な選手たちを抱えており、準決勝のマンチェスター・シティ戦で見せたように、一瞬の輝きで大きく有利な立場に立つことができる能力を有しているという。現在の世界トップ2クラブによるファイナルは、大混戦となるだろう。