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ローカルテレビ局×TVerで新たな価値を創出!RCC・TSKとの取り組み~インタビュー『かまいたちの掟』編

編集部 2021/11/25 08:31

島根県と鳥取県を放送対象地域とするTSKさんいん中央テレビ(以下、TSK)と広島県を放送対象地域とする株式会社中国放送(以下、RCC)、株式会社TVer(以下、TVer)は、TVer社が持つ視聴データや知見を活かした「コンテンツの認知度を上げる」「新たなファンを獲得する」ための企画を実施。両局が制作・放送し、民放公式テレビポータル「TVer(ティーバー)」でも配信されている番組『レンタルクロちゃん』、『かまいたちの掟』で行われたそれぞれの施策を前後編で紹介する。

後編では、TSK制作の『かまいたちの掟』での取り組みについて紹介。TSK コンテンツプロデュース部 グループマネージャーの川中優氏とTVer社サービス戦略部の内藤和大氏に話を伺った。

『レンタルクロちゃん』編(前編)はこちら

■TVer再生数ランキング入りを意識したロケバラエティ『かまいたちの掟』

『かまいたちの掟』(TSK、毎週水曜24:25~)

――『かまいたちの掟』とはどういう番組なのか教えてください。

川中氏TSK開局50周年を迎えた昨年10月にスタートした、TSK初の自局制作深夜バラエティです。お笑いコンビ・かまいたち(山内健司、濱家隆一)の山内さんが島根県松江市出身でしたので、オファーをさせていただきました。お二人の強みをロケという形で最大限に活かし、山陰地方を中心とした各地を訪れ、その地の「掟」を発表していくものです。

当初から全国の方に見ていただきたいという思いがあり、TVerでの配信はもちろん、他エリアへの番販も積極的に進めました。その結果、少しずつ番組の認知が上がってきたと実感しているところです。

TVerにて『かまいたちの掟』配信中

――順調に来ていながらも課題を感じていたそうですが…。

川中氏もともとTVerの再生回数30位以内のランキング入りを目指していました。ところが、初回放送で濱家さんがロケに遅刻するというハプニングがあり、ネットニュースにも取り上げられたことから28位にランクインし、なんと初回にして目標を達成してしまいました(笑)

しかしその後は「初回以降ランキングに入らない」という話が番組内でもお二人から出るほどで、どうすればコンスタントにランクインする番組にできるのかが課題でした。

川中優氏

――TVer社との施策が実現、ローカル局発の『かまいたちの掟』に注目した理由は?

内藤氏以前から「ローカル局のコンテンツには面白いものがたくさんある」「宝の山が眠っている」とずっと思っていました。そしてTVer社で視聴データ分析の業務に携わるようになってから、「これらのデータを実際の番組づくりに活かしたらどうなるのだろう」と考え始め、放送局に施策の提案を始めました。

『かまいたちの掟』は初回放送から見ていて、とても面白い番組だなと思っていました。番組の中でも「TVer再生ランキング入りを目指す」といった発言がたびたびあり、番組公式SNSでの番組情報発信にも積極的でしたので、声をかけさせていただきました。

内藤和大氏

――提案を受けていかがでしたか?

川中氏かまいたちのお二人もランキングはかなり意識されていましたので、「これはもうノリノリでやってくれるはず」と思い、「ぜひお願いします!」と返事しました。

TVerで番組の配信を行っていますので、かまいたちさんやバラエティ番組が好きな方は積極的に検索して視聴していただいていると思います。一方で、こうしたローカル番組にとって、認知度を上げて新規のファンを獲得していくということはすごく難しい課題であったので、この提案はすごく魅力的でした。

■視聴データを元に、見られていない層へ向けて番組企画を実施!

――視聴データを分析し番組制作にも行かされたようですが、その内容とは?

内藤氏施策を始める前、まずはTVer視聴データなどをTSKさんと共有しました。例えば、今年2月時点でのTVerマイリスト登録者数は50,123人、1エピソードあたり再生数は約30,000再生といった基本的なデータ。バラエティ番組ということで、比較的男性層が多いこと。一方で『レンタルクロちゃん(前編登場)』とは違ってバラエティ番組にしては比較的女性層が多いのが特徴的でした。

また、鳥取県や島根県の地元エリアの視聴者が比較的多かった(人口比0.95%に対してTVer視聴は4.0%)ことなど、多くのデータを共有しました。

その一方で、都道府県別の人口が17位の岐阜県では極端に見られていないというデータもありました。これは面白いという話になり「岐阜県の視聴者の少なさをひとつの切り口として、番組づくりに活用できないか」という提案を行いました。

企画会議の様子

川中氏内藤さんの提案を受け、それらのデータを活用し、お笑い番組ならではの取り上げ方、どうすれば番組が盛り上がるかなどを検討した結果、番組内でデータを元にした企画会議を行うことにしました。

そして、伸びしろのありそうな女性層ファンをしっかりと獲得するために「山陰イケメンオーディション」の開催を番組内で決定。さらに、岐阜県と言えば「織田信長」ということで、お二人には、織田信長や森蘭丸を彷彿させる衣装で審査員として出演していただき、岐阜のユーザーにアピールしました。

「織田信長」に扮した山内さん

――「山陰イケメンオーディション」はどういう形で行われたのですか?

川中氏3回にわたり放送し、1回目は、TVerの視聴データを確認しながら企画を考えるところまで。2回目の放送ではオーディション応募者の写真選考会を行い、その中から8名に絞り、3回目の放送で、最終オーディションを開催し、グランプリを決めるという内容でした。

当初、10名くらいの応募を想定していましたが、いざTwitterでオーディション参加者を募集すると100名集まりました。山陰地方で、なおかつ顔出しすることになるにもかかわらずこれだけ応募があったので、番組に対する反響の高さを実感しました。

――その他、SNS活用などについては?

内藤氏初回以降2度目のランキング入りという目標がありましたので、TVerで見てもらうための効果的・効率的なSNS発信のタイミングや内容を提案しました。

川中氏4月には番組グッズとしてTシャツを作り、500枚くらいの売り上げを予想していたところ2,900枚も売れました。もちろんタレントパワーがあったからこそ予想以上の販売が実現できたのだと思いますが、SNS発信を受けてTVerで番組をご覧になった全国の方からの注文も大きかったと考えています。

地域別で売り上げを見てみると、トップは島根県ですが、2番目が東京。その他の地域からも人口比率に合わせて全国から注文が来た感じです。番組からのアピールの甲斐があったのか、岐阜県からも中位くらいの数を購入いただきました。

■タレントパワーに負けないように、データ活用でしっかりとした番組づくりを

――今回の施策の結果を教えてください。

内藤氏イケメンオーディションの実施によって、女性視聴者の比率が一気に増えました。女性層は比較的TVerに定着してもらいやすい傾向があるのも相まって、マイリスト登録数・再生数ともに大きくリフトアップした形になります。

残念ながら施策を実施した回のランキング入りは達成できませんでしたが、施策初回において歴代最高(当時)再生数50,553回を記録しました。施策期間(4月22日~8月11日)のTVer露出回の再生数は+176.6%、1放送回あたりのマイリスト登録者増加数は+137.4%、マイリスト登録者の総数は224.4%と番組は大きく成長しました。

川中氏施策とは別ですが、かまいたちさんがコロナの影響で自宅待機中の代打としてアインシュタインさんが登場した回がランクイン。そして、かまいたちさんが復帰した回では最高の16位を達成した、という出来事もありました。番組の地力が上がったのかなと感じています。

――この結果について、そして今後の展望をお聞かせください。

内藤氏(放送局さんやタレントさんのご協力があってこそですが、)データをもとに番組に手を入れていくことで、視聴者が増えたり、視聴者層の構成比が変化したりすることを、成果として残せたのは大きな収穫でした。

これからも、番組づくりのきっかけになるようなデータの分析や活用を研究して、一緒にお手伝いしていければと思っています。

川中氏全国的な認知が増えて、多くの人に視聴していただけているのは嬉しいことです。しかし、地上波放送がされていないエリアでの認知度はまだまだ低いものだと感じています。

お二人のロケは、素材として面白いのは間違いないので、作り手の私たちが最高の形に仕上げていき、ファンを増やしていく努力を続けていきたいと思っています。

『かまいたちの掟』公式HP

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