テレビ朝日 矢﨑浩司氏、横井勝氏

27 OCT

テレビ朝日がVRで“もう一つの六本木”を建設中!新しい体験で広がるさまざまな可能性~担当者インタビュー

編集部 2021/10/27 13:00

株式会社テレビ朝日(以下、テレビ朝日)は、今年3月28日にスタートしたバラエティ番組『声優パーク建設計画VR部』(毎週日曜23:55~)において、「光と星のバーチャル六本木」(以下、バーチャル六本木)の建設を始めた。放送開始後から現在にかけて、このバーチャル空間ではさまざまな仕掛けやコンテンツなどが展開され、まるでリアルのような街づくりが進められている。

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同局の他番組とのコラボレーションやスポンサーとのコラボレーション、また他のバーチャル空間との融合などの多様な取り組み、そして今後の展望などについて、番組プロデューサーでコンテンツ編成局動画制作部の矢﨑浩司氏、バーチャル六本木のアートディレクターでテレビ朝日技術局コーポレートデザインセンターの横井勝氏に話を伺った。

■番組内で建設されていくVR空間「バーチャル六本木」

――『声優パーク建設計画VR部』の概要を教えてください。

矢﨑浩司氏

矢﨑氏:ドラえもんのスネ夫役でもお馴染み声優関智一さんと芸人ぺこぱさんにMCを務めていただいており、毎週ゲストにお迎えする声優さんの魅力を存分に引き出すバラエティ番組です。特にぺこぱさんは声優さんや人気アニメ作品を番組と一緒に勉強していくというスタイルなので、声優さんやアニメが好きな視聴者以外の方にも幅広く楽しんでいただける番組となっております。

――この番組内で「声優パーク」を建設しようという流れはどこから生まれたのですか?

矢﨑氏:人気声優さんと一緒にこのバーチャル空間を作れたらどんな楽しいエンタメ空間が出来るのだろう?というのが最初のきっかけでした。声優さんの一番の魅力は何と言っても声だと思います。その魅力ある声とバーチャル空間が一体となって、さらに番組とも連動し視聴者の方とも一緒に楽しめる空間を作っていきたいという想いから「声優パーク建設計画VR部」は生まれました。

――その空間が「バーチャル六本木」に進化していった理由は?

横井勝氏

横井氏:テレビ朝日には、六本木の街全体をメディアシティとして捉える「メディアシティ戦略」があって、コロナ禍でリアルイベント展開が難しくなった中、六本木をエンタメ空間としてバーチャル化し、そこでイベント展開を活発化させていければと考えました。現実の単なる再現で無くリアル&ファンタジー空間としてワクワクするようなVRシティを目指しています。

――そして番組内で「バーチャル六本木」を作ろうという流れになったのですね?

矢﨑氏:そうですね。世の中にバーチャル空間が増えてきた中で何か新しいエンタメの空間を作りたいと考えて、テレビ朝日とVR空間を融合させ新しいバーチャル空間の街づくりをしていこう、というコンセプトが生まれました。

■アプリを使ってスマートフォンでVR空間へ。他番組のコンテンツや企画も建設

――番組と「バーチャル六本木」はどのようにつながっているのですか?

矢﨑氏:テレビとVRを融合させた街づくり建設バラエティというのが、1つ番組のコンセプトになっております。MCの3人が「声優パーク」ならびに「バーチャル六本木」建設の責任者となっていて、地上波と連動しながら「バーチャル六本木」の街を徐々に作りあげていき、未来の新しいエンタメ空間を作るべく、日頃から様々な企画にトライしながら、バーチャルコンテンツ開発を目指しております。

――VR空間に入るには「cluster」というアプリを使いますが、これを選んだ理由は?

横井氏:テレビ局が展開するコンテンツのため基本的にマスターゲットになるので、HDMでは無くスマホでカジュアルに参加でき、子供でも操作できる良いアプリだと思います。空間を楽しみながら「気持ちよく移動」出来るよう、clusterさんと一緒に何度もVR上でテストを繰り返し街の設計をしています。

――具体的にどのようなコンテンツができていますか?

矢﨑氏:「六本木アリーナ」「バーチャルケヤキ坂」「ゴーちゃん。フォレスト」「テレ朝VRアトリウム」といった4つのエリアがあって、中でも当番組の「時を戻そう記念館」という企画から生まれた、人気声優さんのお宝を展示する「声優タワー」があったり、番組にご出演いただいた声優さんが実際に全員アバターに扮して実施した、VRトークイベント「声優ひろば」など、さまざまなアトラクションを展開しております。

――様々な番組とのコラボレーションも実施されています

矢﨑氏:他にも女性アナがアバターで日替わり参加したトークイベント「女性アナの部屋」や、『グッド!モーニング』の気象予報士・依田司さんのVRトークライブもありました。10月には3rdシーズンの放送が始まったアニメ『ワールドトリガー』の特典映像が「VRワールドトリガーパーク」で公開され、ここでしか買えないオリジナルグッズの販売も行われました。

VR体験を提供することで可能になったスポンサーとの新しい関わり

――「リポDタワー」というスポンサーとの取り組みもありますね?

矢﨑氏:「バーチャル六本木」という空間ができたことで大正製薬様にご提案をしたところ、大変ご興味を持っていただけました。建設計画なのでせっかくのなのでタワーを作ってしまおう!というところも大変ご好評をいただき、テレビとはまた別の軸でスポンサー様と向き合えた、新しい形ができたと思っています。

横井氏:このタワーではリポビタンDのCMでおなじみの「ファイト イッパーツ!」のような体験をしてもらいたいと考えて、アバターでタワー頂上まで苦労してジャンプで上がり、最後に飛び降りるという企画にしました。単にPR動画をスクリーンにながすだけで無く、協賛コンテンツの求める価値をバーチャル上の新しい体験として提供するのが重要かと考えています。

――外部とのコラボレーションもあったそうですが?

横井氏:KDDI、渋谷未来デザイン、渋谷区観光協会らが中心となり運営される「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」と協力して「バーチャル渋谷」との連動企画を行いました。おそらくバーチャル空間として都市と都市を、現実にあるようなVRバスに乗って開通させる展開は日本でも初めての取り組みではないかと思います。

会社説明会をバーチャル六本木で開催

――ここで、バーチャル六本木で会社説明会を行ったインターネット・オブ・テレビジョンセンターの原田裕生氏も参加。コロナ禍において一堂に会するのが難しい中、学生たちと新たな形でコミュニケーションを取られたという。

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原田裕生氏

原田氏:バーチャル六本木での会社説明会の 応募は、開始してから3時間ほどで定員の500名が即時満席になりました。実際に参加者の声も好評で「会社説明会で一番面白かった」というお褒めのコメントをもらいました。会社説明会なので我々を持ち上げてくれただけかもしれませんが(笑)

会社説明会ではバーチャル六本木内を学生の皆さんと一緒に歩きながら説明したのですが、僕自身はiPadを操作するだけで簡単に進行することができています。テレビ朝日で行った他イベントもこの形で実施しているものもあり、バーチャル空間でのイベントは皆さんが思っているよりずっと簡単に実施が可能です。

横井氏:これについてはコストも抑えて実施できました。企業協賛等を獲得して作り上げていくパターンと、テレ朝内でカジュアルに実施する簡易イベントの2軸の展開が可能になってきたと感じています。

■現在の課題や今後の可能性について

――「バーチャル六本木」の取り組みで難しいと感じられた点はありましたか?

横井氏:テレビ番組と生放送で連動した際は、番組を観て瞬間的に莫大な人数が同時接続でバーチャル空間に入ってくるので、サーバー等が落ちないようにしつつも、空間のクオリティを担保する事が難しいですね。生放送と同時に参加できるバーチャル空間を開けばテレビを通した新しいVR体験を提供できるのですが、放送とアプリのディレイ差等も同時に計算に入れなくてはならず、全体のテクニカル設計の苦労は多々あります。

――実際にVR体験をされているのはどのような層の方ですか?

矢﨑氏:デジタル知識が高い方ばかりでは全然なく、全国各地から老若男女問わずアプリをダウンロードいただき、特に若い層の方からは好評の声を多くいただきました。

横井氏:アプリは必要ですが、HDMが必要ないという点でVRに対する障壁は低くなってきていると感じています。SNSを使う感覚でバーチャル空間に一般の人も入ってくるようになるのは時間の問題で、面白いVRワールドがさらに広まっていくことを期待しています。

――今後の展開と豊富についてお聞かせください。

原田氏:会社説明会はカジュアルに実施することができて、ユーザーの皆さんには遠方から“六本木”に来ていただくことができたと思います。また、実際に挙手して語ってもらうという形式ではなく、チャット欄に書き込んでもらえばいいので、多くの参加者の声を受け取れました。今後も様々な形でバーチャル六本木を活用していきたいと思っています。

矢﨑氏:可能性は無限大にあると考えておりまして、より皆さまに楽しんでいただけるバーチャルの新エンタメ制作にトライをしていきたいと考えています。例えばテレ朝人気番組とコラボした特別空間を作ってみたり、人気アーティストのライブや絵画の展示会をやってみたり、映画のプレミア上映なども考えられます。もちろん番組は声優さんがご出演する番組なので、人気アニメ作品や人気声優さんとコラボするオリジナルVRイベントなども今後仕掛けてみたいと思っております。

横井氏:「バーチャル六本木」は閉じた空間ではないと考えていますので、オープンにいろいろな所とつながっていくと面白いですね。それは必ずしもバーチャル空間だけの話ではなくて、リアルの六本木の街に反映されて拡がっていくと考えるとわくわくします。

矢崎氏:あと最後に告知させてください!10月28日(木)よる『声優パーク建設計画VR部』の公開収録といった形で、バーチャル六本木内でオリジナルイベントを実施します。今回は「あんさんぶるスターズ!!」とコラボをして、ご出演されている声優さんも当日ゲストでお越しいただきます。皆さまと一緒に楽しめる企画を実施したいと考えておりますので、当日はぜひ「バーチャル六本木」にお越しください!