テレビCMが持つ“購買寄与”への強み〜ABCテレビ「知ってるようで知らないテレビCMの今」セミナーレポート(前編)
編集部
ABCテレビ マーケティング局 マーケティング戦略部 西﨑毅氏
ABCテレビ主催によるオンラインセミナー「知ってるようで知らないテレビCMの今」が6月17日に開催。
今回はインテージのアナリストを迎え、コロナ禍におけるテレビCMの役割や活用のヒントをプレゼンしたほか、ABCテレビの担当者が同局におけるテレビCMのトレンドを紹介。さらにパネルディスカッションとして、同局の実際の営業事例から見たテレビ広告の活用事例が紹介された。
本稿では前編として、株式会社インテージCBD本部 事業デザイン部 生活者研究センター センター長・田中宏昌氏によるプレゼン、ABCテレビ マーケティング局 マーケティング戦略部・西﨑毅氏によるテレビCMの現況報告をレポートする。
■「家計への不安」「節約志向」は“高止まり傾向”
最初に田中氏が、「生活者のメディア接触状況、今とこれから」と題し、コロナ禍における生活者のメディア接触の現状をプレゼン。インテージがコロナ感染拡大後より継続して実施しているアンケート調査から、生活者の不安度を示す3軸「新型コロナ感染拡大(不安がある)」「節約意識(家計の節約を心がけている)」「家庭の暮らし向き(今より悪くなる)」の推移を紹介した。
「コロナ感染拡大の第4波が少し落ち着いてきた(※2021年6月17日現在の見解)こともあり、『新型コロナ感染拡大(不安がある)』の割合が70%ほどにやや落ち込んできた。一方、『節約意識(家計の節約を心がけている)』の割合は、企業のボーナスが厳しかった昨年夏から60%ほどの水準で高止まりしており、依然として生活者には節約ムードが継続している」(田中氏)
さらに、「『家庭の暮らし向き(今より悪くなる)』については、20%ほどから15%ほどに低下している」と田中氏。「感染者の拡大、ないしはコロナの収束の兆しと、生活者の不安度合いが連動している」と指摘する。
続いて田中氏は、「飲食店での食事」「テーマパーク・人が集まる場所(への外出)」における不安度の推移を紹介。前者への不安は「およそ60〜70%と高い水準」といい、後者においても、「およそ70〜80%の人が不安を抱いている」という。
「今後、ワクチンの接種の拡大や感染者の減少にともない、少しずつ不安は解消されていくと思われるが、生活者の節約意識や家計に対する見通しは、まだまだ厳しい状況といえるだろう」(田中氏)
■リモートワークが進み、在宅中心の生活スタイルに。食事も“内食”がトレンド
続いて田中氏は、生活者の「在宅時間」を左右する要素となるリモートワーク・在宅勤務の導入状況を紹介。全国割合25%に対し、緊急事態宣言が先行して発出(※2021年6月17日当時)されたエリア(東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡)における割合は34%、その後宣言が発出されたエリア(北海道、京都、岡山、沖縄)は18%という結果となった。
「首都圏ほど在宅時間が長くなっている」と田中氏。在宅時間の増加にともなう暮らしの変化を示す切り口として、「家の中での食事(内食)」にスポットを当て、2019年から2021年にかけての内食率の推移を紹介した。
「2021年の内食率は67%と図抜けて高く、いま現在、昼食を家で食べる方が非常に多く、平日においてもその割合が増えている」という。
「休日においても外食せずに家のなかで食事をとるスコアが高く、全体的に家のなかで時間を過ごす傾向が非常に高い。フードデリバリーアプリの利用状況も増加傾向にある」(田中氏)
■「印象付け」「購買促進」で他媒体を大きく圧倒。“新しい生活”で再評価されたテレビ
これらのデータを踏まえ、田中氏は、在宅傾向が高まるなかでの生活者のメディア接触の現状を説明。テレビをはじめ、PC、スマホなどの接触時間が、コロナ前よりもはるかに増えているといい、「コロナ禍によって、生活者のメディアへの接触時間が増えている」と語る。
「テレビについては1回目の緊急事態宣言(2020年4月〜5月)に急上昇し、いったん下がったものの、コロナ前に比べて非常に高い水準を保っている」と田中氏。「その後、2回目以降の緊急事態宣言や年末のタイミングでも跳ね上がり、その状況は今でも続いている」といい、コロナ禍を機にテレビのポテンシャルが高まっているとした。
さらに田中氏は、「ニールセンが発表した分析結果では、18歳から49歳のターゲットとしたテレビ広告の平均インプレッションはデジタル広告の約8倍にのぼっている。テレビとデジタルというクロスメディアキャンペーンでは、依然としてテレビがリーチをけん引している」と続けた。
さらに田中氏は「ユニークオーディエンスの獲得やリーチを増やすうえで、テレビが大きなパワーを持っているということをあらためて知っていただきたい」と強調する。
「テレビCMの強みは信用、信頼と言われるが、視覚に加えて聴覚の訴求力も強く、印象に残りやすいメディアとしてのパワーが強い」と田中氏。データマーケティング企業・サイカの調査によると、「印象に残りやすいメディア」として生活者が「テレビCM」を挙げる割合は、86%と他媒体に比べて突出。「購買意欲を促進するメディア」としても77%と、圧倒的なスコアになっているという。
「テレビCMは印象に残り、生活者の心に強く刺さる。購買の意欲そのものを促進するという面でも、非常にテレビが強いというアンケート結果が出ている。リーチのパワーもあり、印象付け、購入促進の面で、テレビならではの強みが発揮されている」(田中氏)
「在宅時間の増加によって生活時間が見直され、それによってテレビないし『リビングのテレビの前』に人が戻り、テレビの価値が見直されてきた。コロナ後は、昔の生活様式に戻るというより、新しい暮らしぶりにシフトしていく」とし、「テレビ広告の使い方も、『新しい使い方』として残っていくのではないか」と述べた。
■テレビCM出稿数は「この20年で2020年が最多」初出稿社数も増加傾向
続いて西﨑氏が、テレビCMにおける現況をプレゼン。
2019年、ネット広告費がテレビ広告費を逆転したことが話題となったが、関東エリアにおけるテレビCMの出稿社数は「この20年間で2020年がもっとも多く、初出稿の広告主数も増加傾向にある」という。
「新しい業態、新しいサービスをされる企業が、続々とテレビ広告に参入している」と西﨑氏。「コロナのまっただなかではあるが、テレビ広告市場のすそ野が広がっている」とアピールした。
■「日本総人口の3割到達」の事例も。 “共視聴メディア”のテレビが持つリーチ力
「テレビは高い信頼性、安心・安全性をもち、圧倒的なリーチ力を誇る共視聴メディア」と西﨑氏。「態度変容の寄与も含め、テレビCMには強みがある」と語る。
インテージ協力のもと、ABCテレビが昨年5月に行ったアンケート調査では、50代以上・40代以下ともに5割以上が、テレビを「最も信頼している情報源」と回答。「視聴者の方にも信頼感を持って商品やサービスを訴求できるメディアであるということが実証されている」(西﨑氏)
さらに西﨑氏は、ABCテレビ制作の番組から、全国ネットで昨年末に放送された『M-1グランプリ2020』、今年頭に放送された『芸能人格付けチェック2021お正月スペシャル』の推計到達人数(1分以上番組を視聴した、ユニークな視聴人数・ビデオリサーチ調べ)を紹介。両番組とも、日本の総人口の約3割にあたる約4000万人がリアルタイムで視聴したという。
「たった1回の放送で日本の総人口の約3割、4000万人に向けてリアルタイムでリーチできる。同時にこれだけの人数に当てられるメディアというのは、テレビ以外にはなかなかないのではないか」(西﨑氏)
「テレビは、誰かと一緒に見て、感動、共有したくなる、“共視聴”のメディアである。デジタル広告と比較しても、ターゲット以外にも同時にリーチができ、さらには『あのCMこうだったね、この番組こうだったね』と、感動を共有できるメリットがある」と、その強みを述べた。
■テレビCMが持つ“購買寄与”への強み「顧客獲得への入り口から購買まで大きく貢献」
続いて西﨑氏は、テレビが持つ「態度変容への寄与」についてプレゼン。
昨年、民放連が行った調査では、商品やサービスにおいて「知るきっかけになる」「興味関心を持つ」「情報を調べたり、検索したいと思うきっかけになる」場面として、「テレビ番組」「テレビCM」が大きな割合を占めていることがわかったという。
「『欲しいと思うきっかけになる』という場面においても、テレビは高い影響力を持っている」と西﨑氏。
EC購買が増え、商品に対するタッチポイントが増えるなか、「顧客獲得への入り口から購買まで、幅広いポイントでテレビが大きく貢献していることがわかる」(西﨑氏)
過去、ABCテレビでは、人気の朝の情報番組『おはよう朝日です』でのインフォマーシャル接触者と非接触者を対象にアンケート調査を実施したところ、接触者では、商品における認知、興味関心、購入すべてにおいて、高いスコアを記録したという。
「広告主様にテレビCMを安心してご活用いただくためにも、こうした調査を行った」と西﨑氏。「弊社の中でもこうした分析事例を蓄積していき、広告効果を可視化していきたい。デジタル広告とは違うテレビの強みや、デジタル広告との組み合わせで効果を最大化する方法など、活用のヒントに結びつけていきたい」と語った。
■タイムCMは「ブランディング効果」、スポットCMは「リーチ効果」を発揮
最後に西﨑氏は、広告商品としてのテレビCMの概要と、それぞれの効果について説明。
タイムCMについては、「特定の視聴者に継続してCMを届けられ、番組によってはタイアップ企画などで商品やサービスの認知を深められる」と西﨑氏。「視聴者に深く届け
る『ブランディング効果』を発揮する」と語る。
スポットCMについては、「いろいろな番組で放送できるので幅広いターゲットにCMを届けることができ、タイムと比べて比較的安価にテレビCMを始めやすい」と西﨑氏。さらに「タイミングや放送時間帯、出稿量を自由に設定できる。視聴者に広く素早く届ける『リーチ効果』を発揮する」と述べた。
「CMの種類によってそれぞれ効果が違ってくるため、いろいろな場面で、様々な用途に応じて使い分けていただきたい」と語り、プレゼンを締めくくった。
続く後編では、ABCテレビが取り組む、テレビCMのプランニング(枠購入)や効果測定、CM製作パッケージなどの新サービスに関するプレゼン、さらにテレビ広告の活用事例をテーマとしたパネルディスカッションの模様をレポートする。
【後編】デジタル広告にできることをテレビ広告でも可能に〜ABCテレビ「知ってるようで知らないテレビCMの今」セミナーレポート