株式会社愛媛朝日テレビ 営業局事業創造部・檜垣佳宏氏、株式会社unerry Beacon Bank事業部 ビジネスプロデューサー・一枝悟史氏
リアルタイム視聴による購買行動の高まりを実証!愛媛朝日テレビ「テレビちゃん。」の取組み~担当者インタビュー
編集部 2021/4/22 08:00
「放送がイベントになる!」をコンセプトに愛媛朝日テレビが運営する、テレビ連動型アプリ「テレビちゃん。」。現在同局では、3分半の生放送クイズ番組『テレビちゃん。早押しライブQ』を通じ、リアルタイム視聴をしながらアプリを通じたクイズ大会を開催している。
今回は新たに、県内の人気スポットを舞台とした位置情報連動型のイベントを開催。リアルタイム視聴と視聴者のリアルな購買行動との関連を実証する取り組みを行った。
その具体的な仕組みや、取り組みを通じて見えてきた視聴者の行動とは──。株式会社愛媛朝日テレビ 営業局事業創造部・檜垣佳宏氏、株式会社unerry Beacon Bank事業部 ビジネスプロデューサー・一枝悟史氏に話を伺った。
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■「テレビをイベントに」がコンセプトのアプリ スタート10か月でユーザー数は約5倍
──改めて、「テレビちゃん。」の概要を教えて下さい。
檜垣氏:「テレビちゃん。」は、「テレビをイベントに」というコンセプトのもと開発した放送連動型のアプリです。毎週1回、愛媛朝日テレビで早押しクイズ番組を生放送し、これにテレビの前でアプリを用いて参加いただくと、ドラッグストアやコンビニで利用できるデジタルクーポンが届く仕組みとなっています。
──昨年6月のスタート以降、ユーザー数の伸びなどはいかがでしょうか。
檜垣氏:昨年6月のスタート時は、アプリを介したイベントへの参加者が約350人程度でしたが、(2021年4月)現在は約1,800人と順調に右肩上がりで成長しています。クーポンの対象商品も随時拡充しているほか、これまで夕方帯に放送してきた連動番組の時間を、この4月からゴールデン帯(毎週木曜20:54〜)へと移動しました。
■GPS位置情報と連動した「場所限定アプリイベント」を開催
──今回の施策の具体的な内容を教えて下さい。
檜垣氏:まず、「テレビちゃん。」連動したクイズ生番組『テレビちゃん。早押しライブQ』において、クイズの解答に有利となるヒントがもらえるミニゲームを番組放送一週間前から実施し、ゲーム内でタイアップ商品の訴求を行いました。加えて、番組内での早押し上位に入ると、タイアップ商品がもらえるキャンペーンを実施しました。
もうひとつ実施したのが、県内にある西日本最大級の動物園・とべ動物園とのコラボレーション企画です。「テレビちゃん。」のアプリをインストールしたスマートフォンを持って同動物園に行くと、GPSの位置情報を判定して「とべ動物園でしか発生しない」特別な抽選イベントがアプリに立ち上がり、当選するとタイアップ商品が手に入る仕掛けになっています。
──「テレビちゃん。」が、リアルイベントのツールとしても機能するのですね。
檜垣氏:たんにテレビを見て終わるだけではなく、色々な行動のきっかけを「テレビちゃん。」から提供しようと考えました。ユーザーのみなさんには「テレビちゃん。」を通じたコミュニケーションを楽しんでいただき、商品への興味を持っていただくタッチポイント数を増やすことにもつなげようというのが狙いです。
一枝氏:位置情報データを提供する、ということに抵抗感を感じる方は多いと思いますが、「この場所にいる、と伝えていただくことで楽しい体験ができます」というコミュニケーションを作り出すことで、ユーザーのみなさんにも喜んで参加していただくことができ、ユーザーさん、放送局さん、広告主さんの三者がお互いにWIN-WINの関係を築けるのではないかと考えました。
■テレビ×アプリで日常生活を「まるごとイベント空間」に
──視聴者の購買意向を高める取り組み、どのような背景から始まったのでしょうか。
檜垣氏:これまでテレビは認知を強みとしてきましたが、そこからさらに行動軸を進めて対象の商品や店舗に興味や親近感を持っていただき、心と体の両方を動かしていくような施策を行っていきたいという思いがありました。番組が終わったあとにも引き続きアプリでコミュニケーションを取ったり、番組をきっかけに週末どこかへ出かけることを習慣化したりと、「テレビちゃん。」を起点に視聴者のみなさんが行動を起こすような仕掛けを作りたいと考えたのです。
現在放送している3分半の連動番組には多くの方々にご参加いただいていますが、この3分半で生まれた熱量を1週間、すなわち普段の日常生活全般へと広げていきたいという思いから、今回の施策を立ち上げました。
一枝氏:楽しさを体験したいがために自分の体を動かすという実体験は、みなさん子どものころに一度は経験があるかと思います。こうした原体験をベースに、放送局さんの強みと、広告主さんの課題をつなぎ合わせるアプローチがないかと考えたところが出発点でした。
檜垣氏:私は1年前まで東京支社で営業として直接スポンサーさんとコミュニケーションを取らせていただくなかで、「地元放送局と流通をつなげる取り組みを」というニーズの存在を強く感じていました。そんななか、一枝さんに「世界最強の流通企画を作ろう」と非常に熱くアプローチをいただき、「テレビちゃん。」を用いた流通企画の構想がはじまりました。
ゴールとしては、実際にお客様に店舗に足を運んでいただくということになりますが、まずは「テレビちゃん。」を通じた体験自体を楽しいものだと感じていただこうと思い、地元の人ならば誰でも知っているような場所でそれを体験していただこう、と、県内のスポットを舞台としたロケーションベース型のイベント施策へと具体化していきました。
──実現にあたっては、どのような開発体制で臨まれたのでしょうか。
檜垣氏:テレビ起点で外へ出てリアルなイベント行動を起こす、という取り組みそのものが初めてのことでしたので、今回の施策立ち上げにあたっては、unerryさんが開発したリアル行動データプラットフォーム「Beacon Bank(ビーコンバンク)」の技術をはじめ、行動設計にいたるまで多大なお力添えをいただきました。
一枝氏:unerryとしては、檜垣さんに挙げていただいたように、今後のサービスの核となるであろう「Beacon Bank」の位置情報活用支援のほか、ユーザーの行動体験の設計を担当しました。アプリ本体の開発部分につきましては、愛媛朝日テレビさんのエンジニアさんにご協力をいただき、まずはGPS機能を実装していただくという体制で進めていきました。
檜垣氏:当社は事業創造部のコアメンバー3人を中心に、編成やアナウンス部など、社内の各部署をまたいだ協力メンバーが4名の、あわせて7人体制で動いていました。それぞれのメンバーからは企画についてのアイデアを自由に出し合い、GPS情報の判定機能などの部分は、「テレビちゃん。」のアプリをゼロから作り上げた、コアメンバーのエンジニアが担当しました。
■タイアップ商品への認知、興味・関心、好意、購買意向すべての高まりを実証
──今回の施策によって、どのような結果が得られましたか。
檜垣氏:今回の企画では、株式会社インテージに依頼し、タイアップ商品のリーチや認知をはじめ、興味・関心や好意、購買意向の高まりを可視化する調査を行いました。
その結果、まず番組と番宣によって今回の施策が愛媛県内における20~60代の46.2%にリーチしたことがわかりました。加えて「テレビちゃん。」ユーザーにおいては、タイアップ商品への興味・関心が18.3pt、好意が14.8pt、購買意向が12.8ptと上昇し、タイアップ商品の認知から、購買意向すべてが高まったことが明らかとなりました。
テレビ、アプリ、リアルイベントを組み合わせたアプローチが、実際に地域の消費者の積極的な購買行動へと結びつくことが、はっきりと証明されたかたちです。
──広告主やユーザー側からは、どのような反響がありましたか。
檜垣氏:今回の施策をきっかけとして、地元の大型流通店を展開する企業さんと、次の施策に向けた話が進んでいます。今回、具体的な購買導線の創出を可視化できたことで、「テレビちゃん。」を通じた流通企画の実現に向けて大きく前進できています。
さらにユーザーのみなさんからは、こちらの予想を大きく超える気づきをいただくことになりました。今回、とべ動物園を舞台としたリアルイベント施策は「行けば必ずクーポンがもらえる」という条件にはしておらず、「ハズレ」を引かれた方も中にはいらっしゃったのですが、それにも関わらず、このイベントそのものを楽しむために何度も動物園に足を運ばれていた方が多くいらっしゃったのです。
施策後、ユーザーさんに対して行ったアンケートでは「クーポンがもらえるから動物園に足を運んだというのではなく、純粋にゲームそのものが楽しくて動物園に足を運んだ」というコメントをいただきました。企画立ち上げの際に考えていた、「『テレビちゃん。』を起点に、1週間の生活をまるごとゲーム空間として楽しんでいただく」という構想が見事に具現化できていたことに、強く感激しました。
■リアルイベントが難しいなか、“行動起点”としてのテレビの強みが活きる
──今回の施策を通じて感じたことを、今後の展望もふくめて教えて下さい。
一枝氏:ローカル局というメディアは、その地域に暮らす方々に求められている情報を伝えるプロなのだということを、今回「テレビちゃん。」へのサポートを通じて改めて確信しました。
今回であれば、地元の方々に親しまれている動物園をスポットとして機能させるということや、番組で出題するクイズの問題の選定もふくめ、「日常行動に近しい情報を伝えるプロ」である愛媛朝日テレビさんだからこそ実現できたと言えるでしょう。これも、地域の方々とのコミュニケーションという下地があってこそのことです。
今後の展望としては、ここへさらにデータやテクノロジーをかけあわせ、新しい体験を作りつつ「具体的にこういう人々が動きました」と可視化し、さらに次なる企画へとつなげていくPDCAサイクルを生み出していけたらと考えています。
檜垣氏:「テレビをきっかけとして人が動くのだ」ということを改めて感じることができましたし、私たちが掲げてきた「放送をイベントに」というコンセプトは間違っていなかったのだと改めて感じることができました。ユーザーの方からは、「外にいて他のことをしていても、番組の時間になったら、車に戻って車載テレビを付けて参加している」という声もいただいています。
テレビは“ながら視聴”が多いと言われていますが、「テレビちゃん。」においては積極的にテレビを見るうえに、同時にアプリを操作して参加するという仕組みになっています。いまの時代、テレビを前にして、いちどに1,800人以上もの方々が大きな熱量を持ってひとつのイベントに参加する場を作り出せていることは、ローカル局としては非常に大きな意義があると思います。
いまはコロナ禍で、大勢が集まってのリアルイベントはなかなか難しい状況です。そんななか、テレビの前をひとつの大きな「イベント会場」として機能させ、実際の行動へとつなげるハブとなっている「テレビちゃん。」は、テレビの価値や強みをあらためて証明できる強力な存在と言えるでしょう。地元企業様とのマーケティングパートナー的な存在として、これからも「テレビちゃん。」を発展させていけたらと思います。