日本テレビ放送網 ICT戦略本部 配信事業ディビジョンの宮川竜之介氏と玉井大路氏
民放43社が協力!高校サッカー選手権、TVerでの無料ライブ配信実現の背景~担当者インタビュー
編集部 2020/12/28 10:00
日本テレビ放送網ほか民放42社(以下、民放43社)は、2020年12月31日に開幕する第99回全国高校サッカー選手権大会(以下、高校サッカー選手権)の無料ライブ配信を、民放公式テレビポータルTVerで行う。
高校サッカー選手権のTVerでの無料ライブ配信は、10月下旬から始まった地区大会決勝のライブ配信に続くものとなる。配信実施に奔走した日本テレビ放送網 ICT戦略本部 配信事業ディビジョンの玉井大路氏と宮川竜之介氏に、今回の取り組みの経緯と意気込みを伺った。
■注目度が右肩上がりとなった地区大会決勝
玉井氏と宮川氏はスポーツ局に在籍していたのではなく、ともに配信関連の部署において、TVerなどの広告付き無料配信の事業に携わってきた。高校サッカー選手権は、来年度の第100回大会に向けてWeb展開にも注力していくことになり、2人は今年度のメイン担当を任されたという。
玉井氏:実は高校サッカー選手権のライブ配信は一昨年から始めていて、昨年は全国大会から23試合をライブ配信し、メインのプラットフォームは民放43社公式ホームページでした。それを今年は、地区大会決勝から数えて、合計で約70試合ものライブ配信を行う事になりました。メインのプラットフォームも民放43社公式ホームページにTVerを加えて、大々的な配信展開をスタートさせました。
今大会は、民放43社が協力し、10月~11月にかけて高校サッカー選手権の地区大会決勝43試合をライブ配信。年末から始まる全国大会では、1回戦全試合(16試合)、2回戦と3回戦(勝ち上がりにより変動)、準々決勝以降全試合(計7試合)の無料ライブ配信を行う事が発表されている。
玉井氏:今大会から、全国大会の準決勝と決勝もライブ配信できるようになりました。全国大会決勝が一番の盛り上がりポイントとなるように設計していきますが、そもそもの本大会への出場権をかけた地区大会決勝を、民放43社のご協力で配信できたことが、高校サッカーコンテンツのWebを活用したリーチ拡大という、配信展開の最大の目的において大きな意義があったと感じています。
地区大会決勝は10月24日の秋田県大会から始まり、11月28日の神奈川県大会まで、ライブ配信に加えて、全試合のフルマッチの見逃し配信やダイジェスト配信が行われている。
玉井氏:地区大会決勝の配信は、すごくいい展開ができたと思っています。各地区の代表校が決まっていくにつれて注目度も高まり、視聴ユーザー数もどんどん増えて、Twitterでも好意的なコメントが多く寄せられています。
■民放43社の協力により実現されたライブ配信
地区大会決勝は、民放43社が協力して配信が行われたが、スポーツ以外のコンテンツを含めて、これだけ大掛かりに各社と連携するライブ配信の取り組みは初めてだったという。
宮川氏:今回、各社にご協力をいただいて配信を行うのは初めてで、どうすれば実現できるのか、どう運用するのかがまったく見えていない所からスタートしました。ライブ配信の経験が豊富な局から、「配信は初めてで、どういったものか教えてください!」という局まで、非常にまばらな状態だったのです。
そこで日本テレビの高校サッカー配信チームは、運用ガイドラインや技術マニュアルを作成し、できる限り理解が進むように努力を続け、9月末から実際に動き出し、事前テストを重ねて10月下旬からの地区大会決勝ライブ配信を実現させた。
宮川氏:各局のライブ配信に対する注目度の高さが伺えました。そして何よりも高校サッカーコンテンツのリーチ拡大にご理解とご協力をいただけたことが、この配信展開を実現できた大きな要因だったと感じています。結果、トラブルもなく、最高の盛り上がりで地区大会を終えることができました。ご協力いただいた民放43社の皆様には、この場を借りて感謝申し上げたいと思います。
■高校サッカーの魅力を、すべての人に伝えたいという思い
地区大会決勝と全国大会がTVerでライブ配信されることには、コロナ禍の現在において大きな意味合いがあるという。
玉井氏:地域での高校サッカー人気はすごく大きなものです。本来なら地区大会は地元に帰って観戦に出かけたり、全国大会は年末年始に帰省してテレビ放送で地元の代表校の試合を観たりすることもできました。しかし今年は、帰省についても様々な考えがありますし、観客制限でスタジアム観戦もできなかったりと、リアルタイムで存分に応援することができない状態です。そんな状況下で、いつものように試合を見る事ができなくなった方々にも、応援している代表校の活躍をリアルタイムで届けたいと強く思っています。
また高校サッカー配信チームでは、Twitterを活用した高校サッカーの情報発信を積極的に進めている。
玉井氏:Twitterでは、高校サッカーファンやサッカー部の少年たち、出場校や選手の関係者など、まずは今年の高校サッカーに興味を持つ方々にきっちりと情報を届けることを意識しています。その情報に触れて、その先にTVerで実際の試合やダイジェストの映像を観てもらうことまでをセットでSNSの展開を考えています。
加えて、今まで高校サッカーに触れていなかった人たちにも、高校サッカーの魅力を伝えたいと考えている。
宮川氏:「高校サッカーが面白そう」と感じてもらえたら、シームレスにTVerの配信に行けるような仕組み、Webだからこそできることを意識して取り組んでいます。また、「同世代がこんなに頑張っている」というのを少しでも多くの高校生に届けたく、今年からTikTokやInstagramも始めました。どうすればより多くの高校生に興味を持ってもらえるかを試行錯誤しています。
宮川氏:特に、高校サッカー選手権に出場する選手たちは、厳しい環境の中で必死に練習を続けて、大切な高校時代のすべての時間をサッカーに注ぎ込んでいます。そういう熱量や気持ちをできる限り多くの人に届けたい、そして、高校サッカーの魅力を最大限伝えたいと思っています。
玉井氏:今回各地区大会の決勝戦をライブ配信する中で、全国大会に出場できずに涙を飲んだ高校生が数多く存在する事をより強く意識できました。全国大会では、各地区の高校生の想いも全て背負った代表校の選手が見せる激闘を、映像という形で余すことなく伝えたいです。また、今年はコロナ禍でいろいろな大会が開催されませんでしたが、幸いにも高校サッカーは開催できる予定です。自分たちが所属する部活の大会が開催されずに悔し涙を流した、サッカー部以外の高校生たちの無念や想いも感じながら、大会を開催できる喜びを噛みしめて配信していきたいです。
今回の高校サッカー選手権は第99回となる。来年度の第100回大会では、Web展開を更に拡大し、高校サッカーコンテンツをより多くの人に見てもらう体制を整える事で、全国に高校サッカーの熱量や輝きが益々伝わる大会になることを期待したい。