上段左から)北陸朝日放送株式会社 伊藤祐介氏、ネスレ日本株式会社 野澤英隆氏 下段左から)株式会社インテージ 山田マモル氏、株式会社リサーチ・アンド・イノベーション 中岡邦伸氏
「テレビで購買CVを最大化しよう! Stage 2 ~テレビの“売る力”を最大化するための勝ち筋~」インテージフォーラム2020レポート
編集部 2020/12/11 10:00
市場調査・マーケティングリサーチなどを行う株式会社インテージ は、11月17日~20日にわたり、マーケティングの未来を議論する「インテージフォーラム2020」をオンラインで開催した。その中から、昨年に引き続いて行われたセッション「テレビで購買CVを最大化しよう!」の模様を紹介する。
本セッションでは、テレビでの販促CMやインフォマーシャルの放送と、“CODE”というアプリを活用して行われたエリアプロモーションが事例として取り上げられ、テレビ媒体の販売促進の価値について議論するものとなった。
リモートでつながったのは、ネスレ日本株式会社 媒体統括部 統括部長の野澤英隆氏、北陸朝日放送株式会社 エリアイノベーション推進室 副部長の伊藤祐介氏、株式会社リサーチ・アンド・イノベーション代表取締役社長の中岡邦伸氏。モデレーターを務めたのは、株式会社インテージ メディアと生活 研究センター センター長の山田マモル氏。
■ネスレ日本と北陸朝日放送が組んだエリアプロモーション
今回のセッションは、昨年に続き2回目。エリア独自のクリエイティブとインフォマーシャルで購買意欲が向上するのか、テレビCMから売り場への導線を作れるのかという2つのチャレンジを、ネスレ日本と北陸朝日放送の取り組み事例を元に紹介。
モデレーターの山田氏は冒頭に「パワーアップして帰ってきました!」と述べ、「確かめたい仮説が出てきたので、同じメンバーでさらに高度化させ確認したい」と意気込みを表した。本セッションは、Stage 1でも紹介されたという石川県でのエリアプロモーションの検証と、見える化された結果から今後の可能性や展望を探るものだ。
本題に入ると、ネスレ日本の野澤氏が取り組みの背景を説明。「従来のone-fit-allの考え方から脱却し、地域特性を考慮したコミュニケーションとエクスペリエンスの強化を行うことで、強い地域をさらに伸ばし、弱い地域を強化するために、昨年来さまざまな取り組みを進めている。しかし一定の成果は得られたものの、どのアクティベーションが効果的・効率的だったのかは評価できなかった」という課題があったと野澤氏は語る。
■テレビ局がワンストップとなったプロモーションで好結果が出る
そこで野澤氏は北陸朝日放送に出会った。「“CODE”を活用した面白い取り組みをしていると聞き、我々のエリア施策の効果評価に使えるのではないか」と考えたのだという。“CODE”とは、「ポイントも貯まる家計簿型のコミュニケーションアプリで、情報銀行のようなユニークなポジションを確立して利用ユーザーは伸び続けています」と、同アプリを開発したリサーチ・アンド・イノベーションの中岡氏。属性登録ユーザーは累計約180万人だ。
この“CODE”を活用して北陸朝日放送は、前回のブランドCMに販促CMをつなげたものから、今回は販促CMから販促放送へと進化した提案をする。北陸朝日放送の伊藤氏は、「認知から興味・関心、比較・検討、購入までをテレビ局が中心となって、ワンストップでつなげるプロモーションになります」と、取り組みの詳細を説明した。
具体的には、認知だけではなくその後の興味や行為につながる、ローカル色の強い60秒インフォマーシャルを制作して放送。加えて、ローカル番組の「ゆうどきLive」内で番組出演者による商品パブリシティを流した。そして北陸朝日放送は、これらを単なる情報で終わらせないため、“CODE”のお得情報をつなげる。
伊藤氏はこの効果について、「テレビでは獲得しづらい、20~40歳代の女性へのリーチが実現したと感じています」と語った。また店頭販売では、「いつものお店で商品を手に取れる環境を作ることが購買CV(コンバージョン)の最大化につながるので、地元の流通業者様とメーカー様をつなげ、棚の確保や売り場の拡大を実現させました」と続けた。
インテージの山田氏は、同社のマーケティングミックスモデルを用いた、この取り組みの検証結果を発表した。同モデルは、どのコミュニケーションが売り上げにどれだけ貢献したかを統計的に分解する分析手法だ。「インフォマーシャルを流すことで、売り上げに対してプラス12%の貢献がありました。そしてGRPあたりの売り上げ貢献量は、テレビCMの1.3倍高いという結果になっています」
■ローカル局の強みを活かした販促放送に期待が集まる
セッションの後半は、「これからの販促放送」というテーマでのディスカッション。まず野澤氏が、「今後ますます、地域特性を理解しているローカル局の有用性が増すと考えています」と語り、地域に訴求できるメッセージ発信の強化を求めた。
伊藤氏は、「ローカル局は地域の消費者とコミュニケーションができる、本当に強いメディアだと感じています。ただ、今までのリーチや認知から一歩抜け出すことが必要で、販促領域に踏み込んでいきたい」と、テレビ局のマーケティング力成長への意欲を示した。
モデレーターの山田氏は、「生活者とテレビ、販促、店頭をつなげる仕組みとしての“CODE”は非常にユニークですが、これからどんな進化を遂げていくのか?」と中岡氏に問いかけた。
中岡氏は、「消費者参加型の新しいリテールテックを作り出したいです。小売、メーカー、テレビ局、消費者の全員が参加する、オフラインの買い物をより楽しくしたいと思います」と今後の展望を語った。
すると伊藤氏は、「弊社でもテレビと店頭をつなぐ企画で、“美人レシピ”という企画を行っていて、非常に効果が高くて売り上げに結び付く結果が出ています。しかしデジタルサイネージを多くの店舗に設置して維持・保守をすることは簡単ではありません。動くデジタルサイネージのようなものはできませんか?」と問いかけた。
この提案に中岡氏は、「店頭で商品に対して広告を出すような仕組みが、まもなく出ると思います。販促を付けることもできると思いますので、ぜひ一緒に取り組みたいです」と返答。ローカル局の地域での発信力と“売る力”の可能性を示し、このチームの次の施策に期待が持たせ、本セッションは終了した。