左から)中島和哉氏、龍宝正峰氏、古田和俊氏
過去最高1350万MAU達成 TVer経由の“新たな視聴者層”も『TVer Conference 2020』レポート(前編)
編集部 2020/11/11 08:00
株式会社TVerのオンラインカンファレンスイベント『TVer Conference 2020』が、2020年10月26日に開催され、同社代表取締役社長の龍宝正峰氏、サービス運営本部TVer事業室長兼マーケティング部長の中島和哉氏、広告営業部部長の古田和俊氏が登壇。この日サービス開始から5周年を迎えた民放公式テレビポータル「TVer」について、最新の利用状況が発表された。
前半となる本稿では、中島氏による「拡大するTVerのサービス概況」の発表の模様をダイジェストでレポートする。
■アプリダウンロード数3000万突破、今年9月には過去最高1350万MAUを達成
今年9月の時点で、TVerアプリダウンロード数は3000万を突破し、MAU(Monthly Active User:月次アクティブユーザー数)も歴代最高の1350万を達成。サービスの認知度も高い伸び率を記録しており、今年6月の時点で統計大手・マクロミルとの定点調査において62.3%と高いスコアを記録した。
2015年10月のサービス開始以来、再生数・ダウンロード数はともに右肩上がりで成長。番組の総再生数はTVer単体で1億567万回を記録し、月間のUB(Unique Browser:一意な視聴環境)数も1350万を突破した。
TVerのサービス認知率は全体で62.3%と、前回調査を行った2019年9月時点から5.4ポイント上昇。ターゲット別に見ると、特にF(女性)層を中心に大幅に上昇していることがわかった。
■利用者の約40%がF1・F2層。地上波と異なる“新たな視聴者層”の獲得も
続いて中島氏はTVer利用者の構成比について、2019年と今年9月時点のデータを比較して紹介。
属性別の傾向では女性層の増加がめざましく、なかでもF2(35〜49歳)・F3(50歳以上)層が特に増加の傾向にあるという。人口構成比においてはF1(20〜34歳女性)・F2層の占める割合が最も多く、全体の37.6%を占めることがわかった。
そして、番組ジャンル別・デバイス別の再生割合を紹介。
番組ジャンル別ではドラマが62.1%、バラエティが28.9%と続き、ドラマとバラエティで全体の約90%を占めた。
デバイス別では、スマートデバイスが最多の73%。テレビデバイスについても、2019年10月時点の6%から13%へと大幅に伸びた。「コロナ禍の影響もあり、おうちで楽しめるエンターテインメントとしてテレビデバイスでTVerを楽しむ方が増えている」(中島氏)
さらに中島氏はTVerのユーザー像について、興味深い分析結果を紹介。ビデオリサーチの調査によると、TVerユーザーの10人に3人は、1日あたりのリアルタイムな地上波テレビ視聴時間が60分未満であるという。
「(TVerには)地上波テレビとは別の利用者層が一定割合存在する」と中島氏。これまで地上波テレビをあまり見てこなかった層もTVerを通じ、新たにテレビへアクセスするようになったとアピールした。
■関西ローカル番組が再生数トップ3入り。存在感を増すご当地コンテンツ
続いて中島氏は、全国のテレビ局におけるTVer経由での番組配信状況を紹介。現在レギュラーの配信番組は41局で300番組以上。単発の番組配信についても13局で約30番組以上に達しているという。
2020年7月〜9月にかけての番組総合再生数ランキングでは、上位をドラマが独占。TBSテレビ『私の家政夫ナギサさん』は、TVer配信番組中歴代2位の再生数を記録した。
また、バラエティ番組再生数ランキングでは、テレビ朝日の『ロンドンハーツ』『テレビ千鳥』に続き、ABCテレビの関西向けローカル番組『相席食堂』が3位にランクインした。
中島氏は、TVerを通じたローカルコンテンツの配信についても紹介。在京・在阪キー局に限らず、全国各地のローカル局制作番組配信にも注力していることをアピール。サービストップページに「ご当地特集」の導線を設置し、エリアごとに集約した視聴動線を提供していると説明した。
■9月からは「倍速再生機能」に対応。TVerプリインストール済テレビも続々出荷
TVerアプリの番組視聴機能についてもアップデートが進んでいる。9月には、ユーザーから要望の多かった「倍速再生機能」を実装。本編に限り、再生速度を等倍〜1.75倍に変更してコンテンツを視聴できるようになった。同様に多くの要望がある、インラインでの縦型再生機能についても、近日中に実装予定という。
TVerがプリインストールされたテレビも、続々と登場。既存の製品についても、セットトップボックスやテレビデバイスを通じ、TVerをテレビで視聴することが可能となっている。
■伊藤沙莉・戸塚純貴のCMで若者に訴求。在京5局の番組を並べた地上波スポットも
10月からは、TVerのテレビCMもスタート。若年層をターゲットに、女優・伊藤沙莉と俳優・戸塚純貴がテレビについてコミカルな会話を繰り広げる「テレビトーク篇」、主婦層をターゲットに、TVerで視聴できる在京5局の新ドラマ・人気バラエティの映像を一堂に並べアピールする「あれ見た?篇」の2つを放映している。
■スポーツ中継・地上波同時配信など、ライブコンテンツも活発化
2018年の冬季平昌オリンピックを皮切りに、サッカーワールドカップなど、大型スポーツコンテンツのライブ配信を実施してきたTVer。「スポーツ中継を中心に、ここ数年ではライブ配信プラットフォームとしての認知も広がっている」と中島氏が語る。
今年1月には、在京5局が同時間帯で地上波同時配信の実証実験を実施。10月からは、日本テレビ・讀賣テレビ・中京テレビの日テレ系3局がプライムタイムの番組を地上波同時配信する「日テレ系ライブ」を期間限定でトライアル実施している。
続いて中島氏は、現時点におけるTVerのライブコンテンツの視聴者層統計(デモグラフィック)を紹介。あくまで一例と前置きしながらも、「TVerで配信しているVODコンテンツと比較して、大幅にM層ユーザーの利用が多い」と述べた。
このほかTVerでは、毎週金曜深夜に放送中のテレビ東京「ドラマ25 歴史迷宮からの脱出」(毎週金曜 24:52〜)にて地上波同時配信を実施しているほか、テレビ朝日「ロンドンハーツ」(毎週火曜 23:15〜)ではライブイベントの配信を実施。今後も、日本テレビの全国高校サッカー選手権大会の中継など、ライブコンテンツを拡充させていくという。
続く後編では、株式会社TVer 広告営業部 部長の古田和俊氏による発表を中心にレポートする。