サービス開始と同時期の今年7月に竣工したテレビ新広島新本社ビルから

11 SEP

テレビ新広島、情報銀行プラットフォーム「TV-FAN BASE」を放送局として初採用した意図〜インタビュー(前編)

編集部 2020/9/11 09:00

広島県を放送地域とする株式会社テレビ新広島(本社:広島県広島市南区、以下 テレビ新広島 略称:TSS)は、視聴者向けのキャンペーン参加応募受付や同局事業における個人情報管理のための情報銀行プラットフォームサービス「TV-FAN BASE(テレビファンベース)」を2020年7月9日より開始した。

TV-FAN BASEロゴマーク(提供:電通)

情報銀行とは、個人から同意のもと提供された個人情報を集約管理する仕組みのこと。「TV-FAN BASE」では、テレビ新広島が視聴者より明示的な許諾を得たうえで個人情報を活用。その便宜として、サービスやプレゼントなどを提供する。

TV-FAN BASE概要図(提供:マイデータ・インテリジェンス)

同サービス運用にあたっては、株式会社マイデータ・インテリジェンスが提供するシステムを利用。テレビ新広島は放送局としての参加第一号となる。

概念的にも新しい「情報銀行」という仕組みをローカルテレビ局が始めた背景とは。そして視聴者は具体的にどのようなメリットを享受することができるのか──。

株式会社テレビ新広島 メディア本部副本部長 兼 編成局長の香川正二郎氏、同編成局 メディア戦略部 部長の木村洋子氏、同部副部長の小田健氏に話を聞いた。

写真左から香川氏、木村氏、小田氏

前編となる今回は、テレビ新広島が「TV-FAN BASE」を用いて提供するサービスの概要について尋ねる。

■自局キャンペーンへの参加応募を「TV-FAN BASE」経由に統一

テレビ新広島「Thank you for zero」公式ページより

木村氏:広島で新生児の生まれたご家庭を対象に祝福の気持ちを込めてプレゼント商品を詰め合わせたギフトボックス「はじめてばこ」をお届けするサービス、また小学生のお子さまを対象に自然体験ツアーやカヌーキャンプなど、年間を通じて様々なチャレンジの場を提供する「わんぱく大作戦」というサービスを提供しています。

テレビ新広島「わんぱく大作戦」公式ページより

──これらのサービスは「TV-FAN BASE」の開始をきっかけに始まったものですか?

木村氏:もともとテレビ新広島が地元のみなさまに向けて提供していたサービスです。「わんぱく大作戦」は2005年に開局30周年をきっかけとして、「はじめてばこ」は2015年に開局40周年キャンペーン「Thank you for zero」の一環としてスタートしました。サービス開始にともない、これまで受け付けていた申込の窓口を「TV-FAN BASE」に移行しました。

テレビ新広島「TV-FAN BASE」案内ページより

──今後視聴者のみなさんは、テレビ新広島が提供するサービスを「TV-FAN BASE」経由で利用するかたちになるのでしょうか。

木村氏:イベントなど、テレビ新広島が実施する参加型キャンペーンへのお申込みは今後すべて「TV-FAN BASE」を用いて受け付けるかたちに切り替えていきます。これまでもテレビ新広島では「CLUB TSS」という会員サービスを運営してきましたが、こちらも今後は「TV-FAN BASE」への登録を通じてご利用いただくかたちとなる予定です。視聴者のみなさまには(サービスの存在そのものを特段意識することなく)自然なかたちで「TV-FAN BASE」を利用していただけるようにし、これらを通じて浸透を図っていきたいと考えています。

■「明示的な許諾」を受けた個人情報のみを取得、合意した目的にのみ使用

──「自分の個人情報が意図しない形で広告や営業活動に利用されるのではないか」という不安もよく耳にします。こうした声に対し、どのような形で安心を担保しますか。

香川氏:「TV-FAN BASE」では、あくまで視聴者様ご本人から明確に許諾、同意いただいた情報しか取り扱いません。たとえば「はじめてばこ」の場合ならば「赤ちゃんや家庭を喜ばせたい、お子さまにとって将来の宝箱になるようなギフトボックスが欲しい」というご応募目的を果たすためにのみ使用します。

このキャンペーンのためにいただいた個人情報が許諾なくそれ以外の目的に使用されることは一切ありませんし、許諾をいただいた情報も二重三重のチェック体制をもって厳重に管理します。

──個々のキャンペーンにあたって個人情報の利用目的が明示され、それに同意した場合のみその目的に限定してサービスが提供される「パーミッション型」の運用ということでしょうか。

香川氏:視聴者様から明確な意思表示をいただいたうえで、許諾をいただいた目的に限って個人情報を使用させていただくことを大前提として運用します。

たとえばひとつのキャンペーンにご参加いただいたあと、さらにテレビ新広島からの情報を希望される視聴者様にはそのつど許諾をいただき、それぞれの利用目的に限定してサービスをご提供します。

──視聴者のみなさんとの信頼関係を第一に意識されているのですね。

香川氏:個人情報を預けていただくということは、まさに信用した相手に対してしか行えないものです。不必要なデータをいただいたり、それをビジネス活用することを主として行なったりしてしまうと、これまでテレビ新広島が視聴者様とのあいだに積み重ねてきた信頼関係を壊すことになりかねません。

まずは視聴者様に安心して利用していただくこと、そして視聴者様にとって有益な情報やサービスを提供していくことが重要だと考えています。

小田氏:地域のテレビ局としてテレビ新広島のファンとなっていただける環境づくりを第一に考えています。安心してご利用いただくためにも、信頼関係をひとつひとつしっかりと積み重ねていかなければなりません。「TV-FAN BASE」をご利用いただくみなさまはもちろん、視聴者様のニーズに寄り添うことで「テレビ新広島は自分にとって親しみやすいテレビ局だ」と思っていただけるサービスに反映していきたいと思います。

■視聴者とテレビ局の「長い付き合い」を目指す

──広島に根ざしたテレビ局であるテレビ新広島が情報銀行を運営することで、どのような変化や効果が期待できますか?

木村氏:ローカルテレビという媒体が持つ身近さや地域へのリーチ力、さらに情報銀行の持つ利便性が組み合わさることによって、視聴者様に対してより密接なサービスを提供できるようになると期待しています。

放送局が運営する情報銀行サービスという全国でも初めての試みである「TV-FAN BASE」を通じ、地域に根ざしたテレビ局として視聴者様へより還元を図っていきたいとおもいます。

香川氏:「TV-FAN BASE」によって、テレビ新広島が視聴者様とより長いお付き合いができるようになることを期待しています。

現在この仕組みを通じて展開中の「はじめてばこ」や「わんぱく大作戦」はお子さまの生誕、成長といった人生の軌跡と密接に関わるものです。現在これらのキャンペーンには地元企業のみなさまから多くの協賛をいただいていますが、今後取り組みが進むにつれ、さまざまな年代の方々やそのライフイベントに対するアプローチの場が増えていくものと思われます。

地元企業のみなさまにも、テレビ新広島とタッグを組むことで長期的かつ大きなファン層づくりができるというメリットを感じていただけるような仕組みに成長させていきたいと思います。

後編では「TV-FAN BASE」開始に至った経緯をたどりながら、情報銀行という新たな仕組みを通じてテレビ新広島が描く「ファンベース(共感・愛着を元にしたコミュニティ)」構築の展望について尋ねる。

テレビ新広島

TV-FAN BASE