27 MAY

「話題を起こすことが大事!」日本テレビ、TikTokを使ったドラマ『トップナイフ』プロモーション(インタビュー後編)

編集部 2020/5/27 08:00

番組のPRを含めた、日本テレビによるTwitter、Facebook、InstagramなどSNSを活用した積極的なテレビコンテンツの情報発信に注目が集まっている。最近では若者を中心にユーザーが増えているショートムービープラットフォームTikTok(ティックトック)の活用も積極的に行われている。

本項前編では日本テレビのドラマ『トップナイフ-天才脳外科医の条件-』(2020年1月、毎週土曜22:00~、以下、『トップナイフ』)でのTikTok活用について触れた。後編では、テレビとTikTokによるプロモーションの進め方と相乗効果、そして“若者のテレビコンテンツ離れ”に対する新たな施策の可能性について伺った。

■若者とのタッチポイントを作り、お互いに楽しんで遊ぶことが大事

日本テレビによるTikTokの活用は、実は『トップナイフ』以前から行われている。TikTokのテレビやメディアに関するマーケティングを担当するTikTok Japan マーケティング本部 マーケティングマネージャーの島田健次氏は、「2019年から日テレさんとは『ラグビーW杯』や『カラダWEEK』で一緒にコンテンツを作り、その流れから今回のドラマの話になりました」と語る。

『ラグビーW杯』では、“日テレ系ラグビー応援アナ”がTikTokで応援企画を展開し、『カラダWEEK』では同じくアナウンサーたちが“みんなでTT体操”を繰り広げて注目を集めていた。

『トップナイフ』では、主演の天海祐希を始めとする出演者のダンスシーンや、撮影の裏側の素の部分がドラマ公式TikTokアカウントに上げられ、ユーザーの好評を得た。このコンテンツ展開の狙いは何なのだろうか。日本テレビ放送網株式会社 演出・プロデューサーの栗原甚氏は、次のように語る。

日本テレビ放送網株式会社 演出・プロデューサーの栗原甚氏

「ここ一年で一番面白いのがTikTokです。TikTokユーザーの中心である、テレビ離れと言われる若年層とのタッチポイントを作るということはもちろんあります。加えて、テレビとTikTokは敵対する関係ではないと考え、一緒に協力して取り組みを進めることで、今最も話題になっている“お互いに遊べるツール”なのです」

 

テレビ番組の宣伝は、「新聞や雑誌を使った広告から別の媒体に変わったということではない」と栗原氏は言う。そしてTwitter、Instagram、Facebook、そしてTikTokでの展開について、「媒体が増えて、それぞれの特性を活かしたことをコラボレーションすることが大切」と続ける。

■TikTok独特の楽しみ方に合わせたドラマのプロモーション

栗原氏はまた、ドラマのプロモーションは“ドラマを見てもらうための話題を起こすことが目的”であると言う。その話題の火種としてのTikTokの仕掛けは、「すごく面白い」のだと強調する。

日本テレビ放送網株式会社 編成局 宣伝部の桐本篤氏

ドラマ『トップナイフ』の宣伝を担当した日本テレビ放送網株式会社 編成局 宣伝部の桐本篤氏は、「TikTokのチームに現場まで来てもらって、どういうネタがTikTokのユーザーに刺さりやすいのかを伝えてもらいました。初めに1人のキャストに一日時間をもらって、いくつかTikTok向けの動画を撮影したんですが、その反響が大きかったことで、他のキャストも続けてトライしてくれたり、スタッフがロケの合間のキャストの様子を撮影してきてくれたり、とにかく現場全体が積極的に協力してくれました」と現場の意識の高さを語る。

TikTokで人気の動画になるには、ドラマの場面を切り取った動画や、出演者の裏側だけではない。島田氏は、「TikTokにしかない、動画を使った大喜利みたいな遊びがあります。○○チャレンジなどのmeme(ミーム。ネット上でユーザーがマネとアレンジを重ねて楽しみながら広がっていく現象)と呼ばれる文化があって、それをやってみよう、と自分で動画を撮影して自分のアカウントで上げる。一つのお題に対して、ユーザーはダンスでやってみよう、音楽をアレンジしてみよう、などとお互いに新しい刺激を与え合いながら、遊んでいくのが面白いところです」とその魅力を語る。

■テレビとTikTokのコラボレーションによる新たな展開を期待

現在、新型コロナウイルスの影響でドラマの制作や放送が中断している。しかしTikTokと日本テレビは、今でこそできることがあると口をそろえる。

TikTokでは自治体が若者に向けてメッセージ動画を流し始め、チャリティ活動も積極的に進めている。YouTuberや著名人などのインフルエンサー、スポーツ選手たちは年代を問わずTikTokでの動画投稿にチャレンジし始めている。

栗原氏は、「何かの話題を作るためには、参加性が大事になります、つまりそのSNSの投稿を見てユーザーの行動を引き起こし、話題にできる種を提供し続けることが大事だと思います」と語る。

 

 

 

桐本氏は、「ドラマのタイトルごとに求められることは変わってくるんですが、視聴者がこういう形だったら乗っかって行けるよね、ということを探して、提供していきたいですね」とドラマコンテンツのプロモーションの今後を見据える。

一方でTikTokの島田氏は、「若者のテレビコンテンツ離れが囁かれていますが、『トップナイフ』の放送を終えて確信したのは、若年層もいろんな形でテレビコンテンツには触れていることです」と指摘する。実際にTikTokのコメント欄には、テレビに出ている役者や内容をよく知っていることが伺われる。

さらに島田氏は、「テレビのプロモーションにTikTokはすごく有用だと考えます。こういう時だからこそ、まだまだできることがあるのではないかと考えています」と語り、テレビとスマートフォンの視聴時間が増えている今こそ、こういった施策はより有効になるのではないかと語った。

日本テレビとTikTokが実現する、若者とテレビコンテンツの新たなタッチポイント創出(前編)