今どきの大学生のリアルなテレビ視聴の実態【産学連携PJ】(前編)
編集部
日本の未来を担う学生とScreensによる産学連携プロジェクトがこのほど立ち上がった。“テレビ”(※1)の「新しい価値」を発見・発信していく企画の第一弾「大学生のリアルな“テレビ”視聴」をテーマに追究していく。若者のテレビコンテンツ視聴の実態を明らかにすることで、放送業界が抱えている「若者の“テレビ”離れ」の課題解決に繋げていくことが目的にある。10月10日に調査発表会が行われ、その模様を全3回にわたってお伝えする。前編は大学生160人を対象に実施したアンケートの内容から、今どきの大学生のリアルな視聴の実態を報告したい。
(※1)“テレビ”…放送、インターネット配信で届けるテレビコンテンツを総称して“テレビ”と表現。
■大学生は最近、テレビコンテンツを見ているのか?
産学連携プロジェクト第一弾となる「大学生のリアルな“テレビ”視聴」の調査は、法政大学社会学部 藤田真文教授のゼミ生を中心にワークショップ形式で取り組まれた。
主な活動は、大学生のテレビコンテンツの視聴実態を把握するためにアンケート調査を実施し、その結果から背後に潜む「インサイト」を分析。さらに、大学生のスマートフォン(以下、スマホ)の利用状況を踏まえ、若者のテレビコンテンツ視聴促進の鍵となりうる民放公式テレビポータル『TVer』を、学生ならではの視点でより有効的に活用するためのアイデア を、本編集部(広告会社や放送局も含む)と意見交換をしながらまとめ、その内容を10月10日に報告した。
会に出席した藤田教授は冒頭、「ゼミは主に、大学2年生から3年生を中心に構成されており、テレビドラマの物語論的分析をしています。また自主ドラマの制作や各企業とのワークショップを行なっておりますが、今回こういった機会を頂き、大学生のテレビ視聴のリアルな姿を捉える良い機会にもなった」と挨拶した。
続いて、ゼミ生による発表が行われ、調査内容が報告された。なお、調査は2019年6月28日から7月3日の6日間にわたって実施され、対象人数は大学1年生から4年生までの160人(下図「アンケート回答者層」参照)。Googleフォームを利用したアンケートをSNS上で配布する手法で調査が行われた。
アンケート1つ目の質問は「最近テレビコンテンツを見ているか?」(テレビ受像機、TVerほか※AbemaTV、YouTubeを除く)。これに対して「見ている」は55%(88人)、「見ていない」は45%(72人)という結果となり、発表した大学生から「大人たちは若者がテレビ離れしていると言っているが、見ている大学生は半数以上。今回のアンケートでは意外と“見ている”ということがわかった」と、感想が述べられた。
この1 つ目の質問結果を踏まえ、次はアンケート結果で得られた「テレビコンテンツを見ている・見ていない」の違いを分析していった。
「テレビコンテンツを見ていない=視聴習慣なし」という回答者の「見なくなった時期」を調べると、「大学1年生」が25人と最も多く、次に「高校一年生」が20人と続いた。これについても大学生から次のような意見があった。
「大学や高校に入った頃のような環境の変化が大きい時に、テレビコンテンツを見る/見ないの分岐点があることがわかった。大学に入った頃は生活環境が変わり、中には地方から上京し、一人暮らしをするというケースもあり、そういった変化がテレビコンテンツを見なくなった大きな要因だと思う。一人暮らしをする若者も多い中で、『テレビ(受像機)がそもそもないからテレビコンテンツを見ないのではないか』と推測できる」。
そこで、テレビ(受像機)の所有状況についての調査結果も紹介する。
「テレビコンテンツを見ている=視聴習慣あり」の場合は87人(99%)、「(テレビコンテンツを見ていない=視聴習慣なし」の場合でも69人(97%)はテレビ(受像機)を所有しており、実際には「ほとんどの大学生がテレビ(受像機)を持っている」ことがわかった。
「ほぼほぼ家庭にはテレビ(受像機)があるということがひとまずわかった。これに加え、そのテレビ(受像機)を持っている人に、録画機器は視聴に関係しているのかも気になり、聞いてみた」と、次の質問の理由を述べた。
調査の結果、「視聴習慣あり」の録画機器の有無は「有り」が87人(99%)、「視聴習慣なし」の録画機器の有無は「有り」が52人(72%)だった。
これについて、学生は「視聴習慣なしの人は、たとえ録画ができる環境が整っていたとしても、そもそもテレビを見ない」と結論づけた。
続いて、前述している「テレビコンテンツを見なくなった時期」のグラフを参照しながら、「中高生の頃までは(現在の視聴習慣あり・なしに関係なく)同じようにテレビコンテンツを見ていた時期があった。そこで、過去に家族でテレビコンテンツを見ていたのかどうかも調べた」という。
この結果について視聴習慣の有無に関わらず、「見ていた」が100%近くに上った。
さらに「昔は家族と見ていたということで、今も家族や他人と一緒に見ているのかも聞いてみた」と続け、この結果は「視聴習慣あり」(88人中)で「家族や他人と一緒にテレビを見る」と答えたのは、34人(39%)。
これについては「みんなで見るというよりは、今は一人で見るというスタイルに変わってきている。現在は、スマホでもテレビコンテンツを見ることができるようになり、自分の好きなものを好きな場所で(自分の部屋など)見られる環境に変わってきているためではないか」と、視聴スタイルの変化を指摘した。
ここまでの結果として、
・“テレビ”離れと言われているが、テレビコンテンツを見ている人が半数以上
・テレビ(受像機)も録画機器も所有している学生は多い→視聴習慣がない人は揃っていてもテレビコンテンツを見ない
・「視聴習慣に関わらず家族でテレビコンテンツを見ていた→現在は一人で視聴するスタイルに変化
とまとめられた。これらを踏まえて、テレビコンテンツを「見る大学生」「見ない大学生」へと分かれていった要因に注目し、さらに大学生のリアルな視聴傾向を探っていった。
■生活が変わる進学は大きな分岐点になる
現在、「視聴習慣がある」という人がどのように“テレビ”に接触しているのかを調べると、「地上波」(受像機)での視聴は77人(87%)、「TVer」は9人(10%)という結果になった。
さらに、どの時間帯にテレビを見ているのかも調べたところ、「夜」の時間帯が83人(94%)に上った。
これらの結果については「テレビを視聴する時間帯は圧倒的に夜だった。
次に「視聴習慣がない」という大学生の実態を深掘りしていった。「いつ頃から“テレビ”を見なくなったのか」という質問に対して、「高校一年生」と「大学一年生」と回答するケースが多い。
そこで「生活が変わる“進学”というところで大きな分岐点を迎えるということ。テレビコンテンツを見なくなる理由は何なのか」と新たな疑問が沸いたという。
調査結果(※複数回答可)によると、理由は「忙しい、時間がない」が27票、「動画サイトを見ている」が11票。
「では、大学生はなぜ忙しいのか。1日でほとんど肌身離さず持ち歩いているスマホをどのくらい使っているのか聞いてみた」とさらに調査を続け、その結果については、テレビコンテンツの視聴習慣に関わらず、『4〜7時間』が大半を占めた。8時間以上使用している人が一定数いることもわかった。
さらにこの結果から、「長時間を割いて利用するスマホが大学生を忙しくさせている」と仮定し、「視聴習慣なしの人はスマホで何をしているのか」も探ると、「SNS」と答えた人が最も多いことがわかった。
「SNS」に続き「アルバイト」や「サークル活動」と答える人も続いたが、テレビ視聴の実態を調べていくことで、テレビ視聴習慣がない大学生はインスタグラムやツイッター、YouTubeといったSNSに時間を割いている結果に辿りついた。では、大学生はどのように普段、SNSを使っているのだろうか。
これもまた「なぜ若者は“テレビ”から離れてしまったのか?」というテーマを追究していく上で注目したい点である。中編では、大学生が日常で最も時間を割いているSNSの使い方について調査結果をお伝えする。
記事:編集部
協力:長谷川朋子