【第1回】映像媒体における広告の“モノサシ” 今だから求められる視聴質とは?
電通 データ・テクノロジーセンター データ・プラットフォーム開発部 前川 駿
■はじめに
テレビとウェブがつながった時代の新たな指標とは? このシリーズでは映像媒体における広告の”モノサシ”ともいえる評価指標について語って参ります。特に視聴率という視聴のボリュームだけでなく、テレビCMの見られ方・視聴態度を表す「視聴質」について考えてまいります。初回では、そもそも視聴がどのようなもので、どのような種類があるのかについてご説明させて頂きたいと思います。
■広告の視聴質に影響を与えるプラットフォームの特性
現在はさまざまなプラットフォームで動画広告を展開できるようになりました(※)。
※動画広告の型
●Pre-Roll型:YouTubeやニコニコ動画のような動画媒体
●In-feed型:Facebook、Twitter、クックパッドのようなSNS
●In-Read型:SmartNews、GIZMODOなど
●In-Banner型:メディアネットワーク系の動画広告やバナー枠での動画
最近では、オリジナル番組をインターネットで配信するAbemaTVや地上波で見逃した番組を視聴できるTVerなどもユーザ数が増加しており、広告媒体としての注目が集まってきています。しかしながら動画広告は、まだまだ数字データだけで評価できないことも多いため、まずはデータだけに頼らず、広告プラットフォームの特性に目を向けることが重要だと思います。
広告プラットフォームの特性とは、以下の4つのポイントがあると思います。
1:媒体、2:コンテンツ、3:デバイス、4:フォーマットの4つです。この4つの要素によって、広告効果に影響を与えるターゲットと視聴モードの傾向がおのずと決まってくるではないかと思います。
象徴的な例として、以下A・Bの2つを比較してみましょう。
Aの方では、
まとまった空き時間にリビングなどの空間にて、家族全員でリラックスモードにて広告に接触しているという視聴シーンが想像されます。時間帯にもよりますが仮にターゲットは20-30代の女性で、いわば専念視聴と言える環境です。広告の映像をしっかりと印象に残して、新ブランドに対する認知や興味を醸成するためにはこの環境が適切だと言えるケースも多いと思います。
また一方でBの方では、
どちらかというと電車での朝の移動中や昼の隙間時間に、情報収集をする一貫として、ビジネスパーソンが視聴しているシーンが想像されます。仮に30-40代でより行動喚起視聴と言える環境です。認知が一定まで達した既存ブランドの詳細を検索行動や間接的なサイト来訪を期待する認知型媒体としては、この環境が適切だと言えるケースもあるかも知れません。こういったアウトストリーム型の広告の場合は、月末でパケットの利用に工夫をしていることの多い若年層にとっては4G/LTE環境で動画広告がオートプレイで流れることはブランドによっては避けた方がよいという考え方もあります。
このように、データだけに頼らず、まずは広告プラットフォームの特性をしっかりと理解することがまずは重要です。
■動画広告の効果をどのように測定するか?
次に多様化する動画広告の効果を測定するには、視聴数・視聴完了数といった、いわゆる動画広告の面積を測定するメジャメントのみならず、動画広告の接触モードを表す「視聴質」という指標を考えていく必要があると思います。しかしながら、統一的にその視聴質を評価する適切な方法については、いまだに議論が十分なされていないと感じております。
さまざまなプラットフォームで展開される動画広告の「視聴質」を、統一の基準で測定するのは簡単な話ではありませんが、ひとつの解釈がないわけではありません。動画広告の視聴質を考えるためのヒントは、地上波のテレビで今まで議論されてきた「視聴質」というものがヒントになると考えています。
テレビCMの視聴率だけでは測れない価値を示したい、あるいはその価値を正しく評価した上で広告出稿を行いたい、このようなニーズは今に始まったことではありません。地上波のテレビではそういったニーズに応えるために、さまざまな取り組みがなされてきた、あるいはまさに今、そうした取り組みがなされています。アンケートでテレビへの専念視聴を調べたり、パネルデータのザッピング状況から判断したり、テレビCMをきっかけとしたダイレクトなレスポンスを分析したりと、広告主サイドの事業形態、キャンペーンのKPIに応じて、さまざまな方法が生み出されてきたと思います。
このような取り組みの中で、地上波テレビCMとデジタルプラットフォーム上、いずれの動画広告も同じ基準で考えうる指標としては、どのような点を重視するのがよいのでしょうか?
特にデジタル広告の計測との連続性の高いテレビのビューアビリティとViewThroughCVという指標について考察を深めていきたいと思います。
■次回に向けて~KPIというゴールへのアシストパスを評価する「View Through CV」
デジタルプラットフォーム上の動画広告は、テレビCMと切り離して考えられないのと同じく、他の刈取り型のデジタル広告とも切り離して考えることはできません。
そう考えると、ひとつのアイデアですが、既存の刈取り型のリスティング・GoogleやYahooのネットワーク型のディスプレイ広告・アフィリエイトといった広告施策に対して、動画広告がどのようなアシストパスを出せるか?というのが重要であると考えられます。
このように、いかにKPIというゴールに対していいパスを出したのかどうか、を評価するということが動画に求められる役割とした場合を考えてみましょう。ここでは、動画広告をきっかけにどの程度検索が行われたのか、どの程度サイト来訪が起こったのか、どの程度会員登録に結び付いたのかを可視化することが非常に重要であると考えます。このような課題は、テレビCMでも同じく、テレビCMを見たことをきっかけにWeb上で行われる検索や共有行動を可視化することは求められてきました。
こうした共通の課題を解決するひとつのアイデアとして、「View Through CV」という指標を研究しております。次回は、「View Through CV」の計測研究例をご紹介します。