“すべてがテレビにつながる”ニュースメディア「ホウドウキョク」が考える分散化の本質
編集部
ウェブやオンデマンドだけに限らず、SNSなどさまざまなプラットフォームに提供を続けるフジテレビのニュースメディア「ホウドウキョク」。テレビとネットのニュースメディアの共存繁栄はあり得るのか? 運営責任者に分散化の本質と狙いを聞いた。
■配信を分散させても、すべてがテレビにつながるという考え方
フジテレビの24時間ニュースメディア「ホウドウキョク」は、ウェブ配信に限定されることなく、フジテレビオンデマンド、Twitter、Facebookはもちろん、dTV、Yahoo!からも視聴することができ、今後もメディアを問わず配信先を増やしていく模様。
この分散化は、本体であるフジテレビの地上波ニュースの価値を下げてしまうのではないだろうか? という問いに、「ホウドウキョク」運営責任者、コンテンツ事業局のニュースコンテンツプロジェクトリーダー清水俊宏氏は、フジテレビの社風を交えて次のように答えてくれた。
「フジテレビはテレビを作っている会社ですが、テレビはどう頑張っても24時間しか売りモノがないのです。僕が報道に配属される前、入社時の研修で言われた“24時間のテレビ以外で売れるモノを考えろ”という言葉がすごく印象に残っています」
確かにフジテレビは、テレビの枠組みにとらわれず、映画にテレビのコンテンツを出し、テレビ発のリアルイベント「お台場冒険王」「お台場みんなの夢大陸」も繰り広げ、テレビ関連のグッズ販売も先駆的に行ってきた。
「映画で『踊る大捜査線』を見たら再放送を見たいと思い出し、イベントの『痛快!スカッとランド』で遊んだら、見たことがなかった『痛快TVスカッとジャパン』を見てみたいと思ってもらえるし、『サザエさん焼き』をお土産に持って帰ったら、みんなで『サザエさん』を見ようとなる、すべてがテレビにつながる話なのです」
映画館にいる間はテレビを見られない、イベントに来たらその間はテレビを見られない、だから映画やイベントをやるな、という人はフジテレビには誰もいない! と言い切る。
■分散型メディアとウインドウ戦略はまったく違う
フジテレビは若者に刺さるコンテンツが多いという印象があるが、「ホウドウキョク」は若者に対するコンテンツ発信について、どう考えているのか。清水氏は、若者はニュースを見ない、と簡単に決めつけることは間違いだと指摘して、SNSでの展開をさらに拡大しようと考えている。
「今までニュースは見なかったけれど、たまたま友達がTwitterでRTした、知り合いがFacebookでシェアしたから、というきっかけで、ニュースに触れる若者がものすごく増えていると考えています」
しかし、若者が利用しているからInstagramに、新しいものだから受けるのではないかとSnapchatに配信する、という単純な考え方はダメだ、と続ける。
「分散型メディアと、ウインドウ戦略はまったく別物です。一つひとつのメディアにどう届けるか、それぞれに合ったコンテンツを丹念に作っていく必要があります」
例えば若者にニュースを届けるならば、若者に支持されるインフルエンサーに入ってもらうこと、あるいは長いニュースは見ないという傾向があるならば20~30秒で分かるニュース動画を、音を出さずに見られるように字幕のみで配信、といった受け取り側を意識した取り組みも進めている。
■きっとテレビが見たくなる上質なコンテンツを!
ニュースに関して、清水氏が大前提にしているのは、一人でも多くの人に見て欲しいということ。
例えばTwitterやFacebookに配信をして、そのスマホの画面を電車の中で見ている人は物理的にテレビが見られない状態にある。
「そこで僕らが作ったコンテンツを見てもらい、質の高い情報で感じることがあれば、きっと家に帰ったらテレビが見たくなるはずです」
そこで重要になってくるのが、コンテンツの質だ。
「フジテレビのニュースはきちんとしていて、でもSNSの動画だけでは物足りないからウェブでテキストを全部読んでみたいとか、キャスターの解説が聞きたいからテレビを見よう、などと思ってもらえることを狙っていきます」
情報の発信が循環を起こし、メディアミックスがいろんな形で巻き起こっていくようなフジテレビの「ホウドウキョク」。今後も目が離せない。
――プロフィール
ホウドウキョク運営責任者 清水俊宏さん
コンテンツ事業局 ニュースコンテンツプロジェクトリーダー。2002年の入社以来、政治部などで活躍。自民党、民主党、公明党と与野党問わず取材を続けてきた実績を持つほか、『新報道2001』のディレクター、『スーパーニュース』のプログラムディレクター、『ニュースJAPAN』のプロデューサーなどに関わる。