テレビとロボット/AIがつながる 【クリエイティブテクノロジーラボ レポート】
編集部
日本テレビ技術統括局・日テレラボの主催で開催されたクリエイティブテクノロジーラボ。最新テクノロジーによるテレビ革命のアイデア満載のイベントから、特に注目を集めていた、テレビとロボット/AIがつながることで実現される未来についてレポート!
ERICAが日テレのスタジオに現れた!
最近さまざまなメディアで紹介されて大きな反響を得ている“ERICA(エリカ)”をご存じだろうか? 「美しすぎるアンドロイド」とも報道された彼女は、大阪大学の石黒研究室らが開発した、自然な対話が可能な自律対話型アンドロイドを実現するための研究プラットフォームだ。
今回のクリエイティブテクノロジーラボにおいて“ERICA”は、日本テレビ・大阪大学の共同での展示「アンドロイドの可能性を番組で探求する」で、特別コメンテーター(人間)と並んでニュース番組を模したスタジオセットに現れ、多くの参加者の注目を浴びていた。
“ERICA”の容姿は一見、日本テレビのアナウンサーのような雰囲気があったが、聞いてみると、多くの人が「美人顔」と判断する要素を採り入れてつくられたものだという。遠目に見ると、どちらがアンドロイドなのか判断が難しいほど自然な顔立ちだ。声を出す時の唇や頭の動きなどのしぐさもほとんど違和感がない。
アンドロイドが言葉を喋ること自体に驚くような時代ではなくなったが、“ERICA”の最大の特徴は、AI(人工知能)によって、人間が問いかけた言葉に対し、聞きに回って会話ができることだ。そして、まるで感情があるような返答をする。この会話を行う能力には、心理学的なアプローチも採り入れられているそうだ。
アンドロイドがニュースを読む時代は近い?
この“ERICA”がアナウンサーとしてセットに座った場合、テレビ番組はどうなるのか、という可能性を探るのが今回の展示のテーマだ。実際に特別コメンテーターとのやりとりや、ニュース読みの場面を見てみた。
人間の問いかけに対しては、すぐに答えることはなく、まず相手の話を聞き、相槌を打ったりうなずいたりするところが特徴的で、より自然な受け答えができている感じがした。そして簡単に答える場面でも、少し考えて表情を変え発声するという、人間とコミュニケーションが十分に取れているのではないかという印象を持った。
また、ニュースを読むことに関しては、まず原稿を初見で読めるということがアナウンサーとして優れた能力である。そして喋る時間も尺ぴったりに合わせることができる。原稿に合わせて映像を再生することも可能だという。そして、いくら原稿を読んでいても疲れない、という利点もある。
開発者によると、“ERICA”がニュースを読むことが将来の夢だというが、緊急時にスタジオでニュースを読まなければいけないという場面では、原稿さえあればすぐにでも実現できそうな雰囲気だった。
雑談AI、テレビと連携するロボットも
また、「テレビを活かした雑談AIと、テレビと連携するロボット」も目を引いた。これは日本テレビ、NTTレゾナント、NTTデータの共同展示で、リビングのテレビの前にテーブルがあり、置かれていたのはSotaとRoBoHoNの二体のロボット。共にテレビとIoTの連携を行うロボットだ。
このロボットはネットワーク機器を通して、R-env(連舞)・音声認識・対話制御・音声合成を行うNTTデータのクラウドロボティクス基盤(連携プラットフォーム)とつながり、日本テレビのHybridcastコンテンツサーバの情報を交えて対応テレビと連携を行う。またNTTレゾナントの会話AIで応答生成される会話を、音声会話やチャットで行うことも可能だ。
例えば、「今日の天気は?」と問いかけると天気予報を画面で表示させたり、「今日おすすめのカレーは何?」と質問すると「番組でこのお店が紹介されていましたよ」と番組を表示させたりすることもできる。音声やチャットの会話は、蓄積されたここ4~5年分のデータをもとに生成されており、流行りを踏まえた受け答えが可能だという。
このようにアンドロイドやロボット、AIがテレビにつながることによって、近い将来、番組制作者も視聴者も、テレビとの接し方が大きく変わるのではないかと考えさせられる展示だった。