FODとAbemaTV、次に目指すのは“ファーストウィンドウ”の確保
編集部
放送業界関係者が集うトークセッション「シェイク!」を、株式会社IPGが中央区築地にある本社にて2月24日に開催。プラスセブンが好調なFODと、インターネットテレビ局として開局されたAbemaTV、両局の現在と今後の展望についてまとめてみた。
■異業種3名が繰り広げる本音トークセッション「シェイク!」
株式会社IPGは、Gガイドなどテレビ番組表サービスを提供する会社のイメージが強いが、同社 望月大作氏が会社のPR戦略の一環として、放送業界で活躍している人×異なる業界で活躍する人の3名で繰り広げられるトークセッション「シェイク!」を企画、開催している。これまでも「長く愛されるコンテンツとは?」「どうしたら作れる、面白い企画」「面白いアニメとは何か考える」など、まさに「シェイク!」というタイトル通り、異業種それぞれの視点から意見を交えるトークセッションが行われてきた。
今回で7回目となる「シェイク!」のテーマは「2017年 これからテレビはどうなっていく?」というもの。登壇は、AbemaTV編成制作局長の藤井琢倫氏、フジテレビでFOD(フジテレビオンデマンド)の事業執行責任者を務める野村和生氏、そして角川アスキー総研取締役主席研究員の遠藤諭氏。“シェイク”のネーミングにふさわしく、3名の視点が交り合い「これから」へのヒントが伺える有意義なトークセッションとなった。
■FODとAbemaTVから見るネット視聴の特性
FODとAbemaTV、ともにネット視聴サービスを行っているわけだが、それぞれの特徴は似ているようで異なる。セッションは、自己紹介を兼ねた両局それぞれの取組みやサービスの特徴の紹介から始まった。
まずはFOD野村氏より、同局独自で計測している視聴者属性・視聴履歴のデータを用いた発表がなされた。それによると、月9ドラマのテレビ視聴率が良くないとメディアでは言われているが、実は「キャッチアップ配信では過去最高の配信数を記録している」と野村氏。しかも全視聴ユーザの25%が17歳~22歳の女性であることがわかった。また、FODでは電子書籍サービスも展開しており、コミックランキングでも女性に人気の作品、特に実写化やアニメ化されているものに集中しているほか、テレビドラマやバラエティーのオリジナル漫画化といった映像と関連がある作品に注目が集まっている。こうした結果を受け野村氏は「FODでは、テレビ以外のデバイスで視聴することが増えている若者層(多くは女性)を着実に取り込めており、ファーストウィンドウの確保が進んでいる」と話した。
続くAbemaTVの藤井氏は、2016年12月29日から2017年1月4日までの年末年始1週間で週間の利用者数(WAU)が過去最高となる514万人を突破したと発表。今夏にはアプリが2,000万DLに届く勢いだそう。この4月で開局1周年を迎える同局だが、想定していた通り、利用者は若年層が多い。しかし想定外だったのが、人気視聴チャンネルがアニメや趣味といったコアな番組に偏りがあったことだ。藤井氏によると「アニメ視聴者が半数近く占めているが、翌週も継続して視聴されるのは麻雀や将棋など趣味チャンネルだとわかり、今後はリピート視聴の誘導にも力を入れていきたい」と発言。同局では今春から、この1年で見えてきた視聴者の動きを元に、アクセス数の増加とリピート率を上げるような番組編成を組んでいく予定だという。
両局とも、若年層ユーザが中心ではあるものの、異なるニーズのターゲット層からの取り囲みに成功しているようだが、2017年はどのようなことをやっていこうと考えているのか?
■テレビとネット、2017年はこうなる!
進行役を務める遠藤氏より、「2017年のテレビはどうなっていくのか」というテーマを問いかけられた両氏は、それぞれこんな回答を示した。
AbemaTV藤井氏は、再来訪運用の課題を取り上げ、2017年はよりトンがったコンテンツ制作に励み、強みである多チャンネルを活かし、マニアックでコアな層を集めていきたいと語った。
そしてFOD野村氏は、今はスマホ画面の取り合いをしているが、今後はテレビ画面の取り合いになっていくと予測。そのためファーストウィンドウの確保、FODのブランディングのためにもオリジナル番組・オリジナル漫画の制作に力を入れたいと語った。また、プラスセブンが好調なことから、さらに認知度は増し、同局の配信が本当の意味でテレビと補完し合えるようになると思うと続けた。
かつてテレビでは、チャンネルの奪い合いが行われていた時代もあったわけだが、野村氏の言う通り、今後はテレビという受像器のスクリーンの奪い合いがますます激化していくだろう。そうした中、ネット配信とテレビの歩みよりは実現するものか、引き続きイベントの模様をリポートしつつ後編で考えていきたい。