『逃げるは恥だが役に立つ』配信数と各種視聴率の推移
編集部
2016年を代表するテレビドラマと言っても過言ではないほどのヒットとなった『逃げるは恥だが役に立つ(以下、逃げ恥)』(TBS系列)。今回はその配信数と各種視聴率の推移について、TBSマーケティング部・吉田裕二氏に伺った。
――『逃げ恥』は前クールのドラマの中でもダントツの視聴率、大ヒットとなりましたね。
「ドラマ全体を通して、リアルタイム視聴率(以下RT)、タイムシフト視聴率(以下TS)、総合視聴率、さらに動画の配信数(TBS FREE、TVer、GYAOの合計)という指標全てで『右肩上がり』の傾向でした」
――視聴率と配信数の関係性は?
「連続ドラマの視聴率は、2話目が初回に比べて低下する傾向にあるのですが、『逃げ恥』の場合RTは一回も下がることなく推移しました。このようなケースは、TBSでは『半沢直樹』以来です。また、通常はRTとTSを折れ線グラフにした場合、ふたつが複雑にアップダウンする場合が多いのですが、本作のようにRTと共にTSや配信もどんどん上がっていくというのは極めて珍しいことです」
――まさに国民的ブームですね。
「そうですね。RT・TSで多くの皆様に御覧になって頂いたのはご承知の通りですが、配信の面でも、最終話で266万7648再生、11話トータルで約2000万再生…と、弊社のドラマでは圧倒的なスコアを叩き出しました」
――リアルタイムと配信の関係はどうだったのでしょうか?
「グラフにも表れているのですが、10話、11話のTSがやや低下していたり、10話の配信数が前回に比べて減ったり、終盤においては、全体的な右肩上がり傾向に変化が見られます。これは、クチコミやSNSでの拡散でブームとなった結果、最終回に近づくにつれてTSや配信で確認する視聴者が増え、視聴がRTに回帰したということです。つまり、『最終回は生で見たい』と思った視聴者が多かった……と分析しています」
――キャッチアップ視聴が、リアルタイムに好影響を与えたと?
「実は、『逃げ恥』の配信ユーザーに、直接ネットでアンケートを実施しまして、10話を配信でご覧になった方の実に63%が『最終回はリアルタイムで見る』と回答されています。もちろん、番組によって結果は様々だと思いますが、少なくとも『逃げ恥』では、キャッチアップ配信の視聴がRTを阻害するのではなく、『最終回の11話をいち早く見たい』というリアルタイム視聴意向につなげた……と考えられます」
――10話では配信数が一度減っていますが、最終回ではまたアップしています。
「『逃げ恥ロス』という言葉も生まれたくらいですから、最終回の余韻に浸りたい視聴者が配信を利用した結果かもしれないですね。6話の配信数が前話に比べて特に伸びているのは、ラストのキスシーンが『ムズキュン』と話題になったタイミングだからでしょう」
――エンディングの『恋ダンス』ブームも印象的です。
「視聴者投稿バージョンやJNN各社バージョンなどがYouTube上で積極的に投稿されたり、SNSで拡散されたりとネット上での広がりが顕著でした。近年は接触媒体種や接触時間が多様化し、メディア環境が激変してきています。自社放送以外のルートでの認知拡大、興味喚起に向けて、SNS他ネット施策の重要性を制作スタッフが認識し、放送開始当初より積極的に取り組んだ成果だと考えています」
ネットとテレビが相乗効果を生み出したケースとなった『逃げ恥』。これからはネットを敵ではなく、味方につけた施策を行っていくことが重要視される。2017年の各テレビドラマも『逃げ恥』に続くヒット作となるか、今後の動きから目が離せない。